第265話 戦いの結末。
ここはアレンとモーリスが激闘を演じた場所……その場所はモーリスの魔法によってスプーンでアイスを掬ったように大地が綺麗にくり抜かれてしまっていた。
「あ……う……あ……」
アレンの姿はどこにも見当たらないものの……モーリスだけがそこに居た。しかし、モーリスは顔面蒼白で目が虚ろ、両手両足を失っていて……今にも事切れそうであった。
虚ろな意識のモーリスが最後の時を過ごしていると、黒いローブ姿の男がどこからともなく現れて近づいてくる。
黒いローブ姿の男は異形の者であった。
なぜなら、頭部には羊を思わせる大きく黒い角が、黒い髪の間から覗き、背中から蝙蝠のような黒い翼、サソリのような黒いしっぽを生やしていたのだ。
その黒いローブ姿の男は……以前アリソンが激闘を演じた魔族ベルブート・ガル・ジーべムであった。
ベルブートはパチパチと拍手しながらモーリスに近づいていく。
「ケシケシ、予想外にも素晴らしい激闘。そして、あの男を始末した魔法は素晴らしかったです」
「あ……う……」
「遠くで見ていた私も手に汗を握りましたよ」
「あな……たは……ねがい……を」
「うむ。モーリス君は私の命令以上の働きをしてくれました。あの件はちゃんと施行してあげましょう」
「は……ぁ」
モーリスは安堵したように、表情を緩めて……ゆっくりと瞳を閉じるのだった。
死を迎えようとしているモーリスの様子を興味深げに見ていたベルブートが問いかける。
「死にそうですか? 死ぬのですね?」
ベルブートの問いかけにモーリスは何も答えることはなかった。すると、ベルブートが続ける。
「しかし、惜しいですねぇ。人間とはいえ、あれほどの魔法を扱う者を失うというのは……」
邪悪な笑みを浮かべたベルブートがモーリスの体を持ち上げる。
「ケシケシ、感謝してくださいね。貴方には新たな生命として蘇らせてあげましょう」
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