第230話 来訪者。
ここは冒険者ギルド会館。
リナリーがギルド会館に入って行くと、ホップやペンネがすでにロビーに集まっていた。眠たげな様子のリナリーはホップ達のところへ向かって軽く手を上げて声を掛ける。
「ふぁおはよう、ホップにペンネ」
「あぁ、おはよう」
「おはよう」
リナリーに気付いたホップとペンネもそれぞれ挨拶を返していった。
「ふぁー」
「なんか眠たそうだけど」
大きく欠伸をしたリナリーに対して、ペンネが首を傾げながら問いかける。
「ちょっと、昨日も酒場に行っちゃって」
「リナリー、また行ったんだ」
「うん、アレンを含めて貴方達は付き合ってくれないし」
リナリーはジト目でペンネを見据えた。
対してペンネは苦笑して言葉を濁して、話を変えるように問いかける。
「それは……まぁ……いや、それより、今日大丈夫なの?」
「もう少ししたらちゃんと大丈夫になるから」
「ならいいけど」
「……集まっているのは二人だけ? スービアはお母さんが具合悪くなったから田舎に戻っているのは聞いているけど……いつも早いアレンが居ないのは珍しいわね」
「あぁ。そうそう、アレン少し遅れるってさ。朝言っていたよ」
「そう。いつくらいになりそうなの?」
「なんか急に用事ができたとかで……昼くらいになりそうなんだって」
「分かったわ。朝、アレンに会ったっていうのは……弓の練習は続けているのね。調子はどう?」
「ハハ……ぼちぼちかな」
「ぼちぼち?」
「……村の子供達の中で真ん中くらいにはうまくなったかな?」
「村の子供達って……何歳くらいなの?」
「僕の半分くらいの歳かなぁ」
「うまくなっているのよね?」
「う、うまくなっているよ! 今日なんて的の真ん中に三回連続で的中したんだから!」
「ふふ、アレンが言っていたフィットに跨ったまま矢を射れるようになれると良いわね」
「……それも別で少し練習しているんだけどねぇ」
「そっか、頑張ってね」
肩を落としたペンネに対してリナリーが苦笑を浮かべた。そして、ポンとペンネの肩に触れた。
リナリーとペンネの会話が途切れたところでホップがリナリーに問いかける。
「それで、今日はどうするんだ?」
「んーどうしようかしら? 討伐クエストでもいいけど……前衛をホップ一人じゃ辛いわよね?」
「そう……それはキツイな」
「そうよねぇ。けど、最近ひたすら走るのとひたすら素振り以外に剣をアレンから習っているんじゃないの?」
「そうなんだが……」
「ぷふふ」
ホップが言葉を濁したところで、リナリーとホップの会話を聞いていたペンネが口元を押さえて俯き、小さく笑い出した。
突然、笑い出したペンネに視線を向けたリナリーは首を傾げる。
「どうしたの?」
「それがね……」
リナリーの問いかけに対してペンネは話そうとしたのだが、慌ててホップが止めに入る。
「ちょ、ペンネ? 別に話さなくていいからな!」
「えーなんか面白そうなことを、私だけ教えてもらえないの? ペンネ?」
リナリーは不満げな様子でペンネへ視線を向ける。すると、ペンネは笑いながら、ホップを押しのけて話始める。
「ぷふふ、そうだね。リナリーだけ仲間外れは可哀そうだね? 仕方ない僕が教えてあげよう。今日、僕や村の子供達が弓矢を練習している横で、大剣を持ったホップと木刀を持ったアレンが模擬戦していたんだけどね」
「へー模擬戦……アレンは木刀ってさすがに危ないんじゃ? 大剣で木刀なんてへし折れるでしょ?」
「全然、大丈夫じゃない? ホップが大剣を振るう様子が何だか酔っ払いで、もう……僕も村の子供達もおかしくて笑い転げていたんだ。それはアレンに大剣が全然当たるように思えなかったよ。最終的にはホップが大剣を振るった拍子にすっころんで終っちゃったんだよ。それはもはや喜劇だったね」
「ふふ、それは……それは災難だったわね。ホップ」
笑いを堪え……いや、笑いながらリナリーはホップの肩をポンポンと叩いた。すると、恥ずかしそうに顔を赤くする。
「ぐうう、言わないでもいいだろう」
「けど、実際に見てみたいわ。次はいつやるの?」
「……言わないねぇ。絶対に言わねぇから!」
「そう。仕方ないわ。パーティーのリーダーとしてメンバーの実力を知ることは重要なことだから……後でアレンにちゃんと聞くしかないわね……さて、午前中は……とりあえず雑用系のクエストをこなしていきましょうかね」
「そうだね。さすがにアレンが前衛に居ないと不安だし」
「ぐうう……そうだな」
リナリーが今日の午前の予定を話すとペンネは納得したように頷き、ホップはまだ前の話を引きずっているのか悔し気な表情で答えた。
午前中の予定が決まったリナリー達は移動しようした時であった。遠くで元気な声が聞こえてきた。
「にゃはは! お主なかなか強そうだ!」
「え、あ、ありがとう……えっと」
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