第121話 いや、自由に生きろと言われても。
「……アレンさんはもう自由に生きていいと思いますよ」
「へ?」
ホランドの言葉を聞いたアレンは目を見開く。そして、間の抜けた声を上げた。
「俺は、あの国を国外追放されたばかりのアレンさんに言いましたね。アレンさんが居なくなったら近い将来…… サンチェスト王国が滅んでしまうと」
「そういえば、そうだったな」
「……だけど、ああ言ってしまったことを俺は後悔していました」
「後悔? なんでだ?」
「アレンさん……火龍魔法兵団は長年、強力な大国の侵攻からずっとサンチェスト王国を守ってきてくれたじゃないですか。俺も含めてサンチェスト王国の人々はその善意に頼り過ぎていました。なのに、サンチェスト王国の人々は……その善意に報いるどころか、無実の罪を被せてアレンさんを犯罪者に仕立てあげて……国外追放するという愚行を行った。その報いを受けるべきだと思います」
「報いって……別にサンチェスト王国の全員が俺を嫌い国外追放した訳ではないが」
「同じことですよ。それがサンチェスト王国の上の方……偉い人の判断だとしても、サンチェスト王国全体が判断したことには変わらないです。だから、アレンさんには自由に生きて欲しいと思っていたんです」
ホランドの言葉を聞き、更にリン、ユリーナ、ノックスに見ると、同意見だったようで彼らも頷いていた。
彼らの考えを知って、アレンは小さく呟く。
「……そうか。しかし…… いや、自由に生きろと言われてもなぁ」
「そうですよね。まぁ、俺もアレンさんに自由に生きて欲しいと言いつつ……教えを乞うている俺が言うのもなんですがね」
「フハ、確かにそうだな。まぁー、お前らのことはちゃんと強くなるまで面倒を見てやるよ。……ってお前達はどうする? 仮に噂話が本当で火龍魔法兵団が無くなった場合、ホーテのところに送ってやることはできんぞ? それから冒険者として戻るにも国がなぁ」
「そうですよね……」
「まぁ、確かな情報がないから……決めかねるな。俺のこともだが、お前達のことも……ゆっくり考えるしかないだろう」
アレンはそう言うとゆっくりとソファから立ち上がった。
「そう……ですね。アレンさん……」
「ん? なんだ?」
ホランドに声を掛けられて、アレンが振り返る。すると、ホランド、リン、ユリーナ、ノックスがまっすぐ真剣なまなざしでアレンを見ていた。
「改めて、ご指導よろしくお願いします」
「いろんなことを教えてください」
「私、頑張る。ふすん」
「よろしくお願いするッス!」
ホランド、リン、ユリーナ、ノックスが順にそう言って、頭を下げてきた。
「どう成長するか楽しみだよ」
ホランド達を見てアレンは目を細めながら小さく笑う。すると、黙って聞いていたノヴァが頷く。
「うむ」
「お、ノヴァもそう思うか?」
「うむ、そうだな。スコーンのおかわりを貰えるかの?」
「って、おかわりかよ。おい、まさか……全部たべたのか?」
「もう冬じゃからな? 食いだめせねばならんのじゃ」
「お前、一人で食い過ぎ! 当分呼んでやらんからな!」
「ぬう! そ、それは困るぞ!」
狼狽えるノヴァの様子をみて、アレン達が笑いだした。そして、アレンはノヴァの頭をポンと軽く叩く。
「ハハ、冗談だよ。そうだ。ホランド、予想よりも話すのが早く終わったな。少し体術の修行をやるか?」
「そうですね。昼までは少しありますからね」
「そうだ。今日は肉体強化する魔法を【パワード】を使いつつ、体術の修行をするか」
「あー【パワード】ですか……」
「なんだ? 苦手か?」
「マナの調整が難しいんですよね」
「そこは慣れていくしかないな。いくぞ」
アレン達は揃って、談話室を後にするのだった。
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