第77話 スービア・ベッカー。
「おい、その指南役は俺が受けてやるぞ?」
後ろから声がかけられた。
声がした方に視線を向けるとアレン達の後ろに並んでいた灰色の髪を短くしている褐色の肌の女性が立っていた。
アレンとリナリーはその女性に見覚えがなかったので、キョトンとして女性を見る。
ベルディアは困惑した表情を浮かべていた。
「スービア?」
「俺がこいつ等の指南役として付いていけば、お望み通りのロックヘッドボアだって連れて行けんだろう?」
灰色の髪を短くしている褐色の肌の女性……スービアは前に進みリナリーとアレンの間に立って、二人の頭の上にポンと手を乗せる。
「あのベルディアさん、この人は?」
リナリーが視線をスービアからベルディアに向けて問いかけた。
「……この人はA級の冒険者のスービア・ベッカーよ。今はソロで活動しているけど、飛翼の元メンバーで実力者よ」
「え? 飛翼の元メンバーですって?」
ベルディアの言葉を聞いたリナリーが驚きの表情を浮かべた。ただ、スービア本人は笑い声を上げて言った。
「ハハ、結構前の話さ。それで俺が指南役をやるってことでいいか? ベルディアさん」
「貴女が指南役をやってくれるなら……万が一はないでしょうど、良いの? 指南役って一日銀貨五枚よ? A級の冒険者の貴女にとっては物足りないんじゃない?」
「いいよ。いいよ。こいつ等、アレだろ? 草刈りだろ? 優秀って噂になっているし、どんなんか見て見たかったんだ」
「そう……じゃあ、頼むわ。くれぐれも無理させないようにね」
「わかっているって。それで、どのクエスト受けるんだ?」
長身のスービアは視線を下に向けて、リナリーとアレンに問いかける。
すると、リナリーは一瞬視線を下げて考える仕草を見せると、口を開く。
「貴女が居れば……ロックヘッドボアの討伐を受けても危険は少ないの?」
「あぁ、ロックヘッドボアくらいなら問題ないぜ。昔よく狩っていたんだ」
「そう、だったら……アレンはどう思う? ロックヘッドボアの討伐クエストを受けようと思うんだけど」
スービアの答えを聞いたリナリーはアレンへ視線を向けて、問いかける。
「いいんじゃない」
アレンから了承を得ると、リナリーはベルディアに視線を向ける。
「じゃ、ベルディアさん……ロックヘッドボアの討伐クエストを受けるわ」
「はぁーわかったわ。じゃ、クエストを受け付けるわ。けど、リナリーにアレン君、くれぐれも無理しないでね」
観念した様子のベルディアはリナリーとアレンを見据えて忠告する。そして、ロックヘッドボアの討伐クエストの依頼書に判子をボンっと押したのだった。
ロックヘッドボアの討伐クエストを受けた後、アレン、リナリー、スービアの三人は冒険者ギルドから出て、話し合いの為に食堂の三葉亭に入る。
そして、昼食を頼んだところでリナリーが口を開いた。
「明日の早朝に門のところに集まって出発ってことでいいわね」
「あぁ、良いぜ」
「それで必要な装備だけど……」
「えっと先に言っておくが、ロックヘッドベアの生息地は片道三時間くらいだがな。しかし、それは魔物の領域に慣れている奴の場合だ」
「つまり、私達は違う?」
「そうだ。道も悪いし、わんさか魔物が出てくるから初心者だと割増しで時間が掛かる。朝に出ても野宿する必要はあるぞ」
「そうなのね」
「まぁ魔物の領域で野宿を経験できるんだ。いい経験になるんじゃないか?」
「なるほど、そうね」
「ロックヘッドボアの討伐クエストの件はこのくらいでいいか? それでよ、俺に何か聞きたいことがあるか?」
「……あのスービアさんは飛翼だったの?」
「おいおい、俺にさん付けはいらねーよ」
スービアは隣に座っているリナリーの肩を抱いて、ニコリと笑った。
ちなみにだが、四人掛けの四角いテーブルに通された。そして、スービアとリナリーが隣同士で、対面する形でアレンが座っていた。
スービアとリナリーは隣同士に座っているのだが、密着して……とにかく距離が近かった。
「そう、じゃ……あのなんか、距離が近くないかしら?」
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