第84話 じゃあソレは誰がやったんだ?
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
部屋に入ると同時、俺はその場で仰向けに倒れて跳ね回った。
何言ってんだ俺!? なんであんなクソ寒い台詞をポンポン吐けるの!? 気持ち悪! 気色悪! キモい!
いや、そりゃ元気付けるためにかっこつけるべきだとは思ったよ? けどアレは幾らなんでもやり過ぎだろ! 何であんなこと言ったの俺!? バカじゃないの? バカでした!
やりすぎた、やりすぎた、やりすぎた!誰か……タイムマシーン持ってきて! 過去の自分殴り飛ばしてやり直すために! 俺の黒歴史を修正させてくれ!!
「うわッ!? なんだいきなり!? 何でお前腹筋だけでピチピチ魚みたいに跳んでんの!? 気持ち悪!?」
レイが何か言ってるが聞こえない。俺は気が済むまで身悶えまくった。
「あ”ばばばばばばばばばばばば!!!!」
「うわッ! 今度は腹筋と背筋で交互に飛びながら空中で反転しまくっている!? 気持ち悪すぎだろ! どんな筋肉してんだ!?」
「……あ~スッキリした」
気が済んだ俺は一旦冷静になってゆっくり立ち上がる。
いあ、久々にやったわこのストレス発散方法。黒歴史を構築する度にやっていたが、最近はミスしなくなってお蔵入りとなっていたこのやり方。まさか今日使う羽目になるとは思いもしなかったぞ。
「じゃ、気が済んだところで反省会をするか。なあ、レイ」
「え? この空気でやんの? ヤだよ俺? あんなテンションのお前見てマトモに顔見て話せねえよ?」
「今回の襲撃事件、おかしな点が山ほどあるが俺は原作をアニメしか知らない。だから原作勢のお前の知識が必要なんだ」
「……うわ~、コイツ人の話聞かない気だ。さっきのことなかった事にしようとしてる」
うっせえ! 早く俺の知りたい情報吐けやオラァ!
「まあええわ。……俺の知ってる情報なんやけど、今回のはちと齟齬があるわ」
いきなり標準語からいつもの似非関西弁に戻ったレイが話してくれた。
コイツ話長いしちょこちょこ逸れるので要点だけまとめると、二つの不審な点が見つかった。
不審な点一つ目。柊姉妹はこの事件では誘拐されない。
柊姉妹が原作でトラウマイベントが起こる原因は誘拐そのもではなく、誘拐されかけることによって姉妹が柊の里で嫌悪されている力を覚醒したことによって迫害を受けて追放されるという流れだという。なのに今回は覚醒することなくマジで誘拐された。
コレに関しては俺が派手に暴れたせいだと言えるかもしれないが、次からが問題だ。
不審な点二つ目。この事件で柊の里は壊滅しない。
いくら小規模な里とはいえ自衛の手段はちゃんとある。当然自警団や私兵も存在しており、あんな雑魚妖怪など本来なら俺たちの出る幕ではない筈だ。なのに彼らは別件や手違いで遠くまで派遣され、その隙を突いて里が襲撃された。
うん、思いっきり内通者がいるということだね? ソレで内部工作されてるっていうことだね!?
というか一番気になる事が……。
「……ガキ攫うためにここまでする?」
「せやろ!? ソコ俺が一番気になったんや!」
確かに柊姉妹は可愛い。将来は千金に値する美人になること間違い無しだ。雪女自体強力かつ美しい妖怪だし、彼女たちはただの雪女ではあり得ない力を持っているという設定なので価値はさらに高まる。けど、ソレでも村一つとはいえ襲撃なんてリスクが高すぎる。
「ソレに内部工作も気になる。こういった真似が出来るという事は、前からこの計画を立てていたという事になる」
「せやな。そんで、ソイツは柊姉妹の誘拐計画を成功させたっちゅうことやな」
「「じゃあ、ソレは誰がやったんだ?」」
「あーあ、失敗しちゃったんだあの吸血鬼」
闇の中、水晶を眺めながらその影は呟いた。
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