第45話 友情ごっこ


「すごいすご~い! 二人ともすごく強いよ~!」


 二人で姉さんの部屋に戻ると、いきなり二人そろって抱き着かれた。


「百貴もライトも滅茶苦茶強いじゃん。ライトもあれだけ強いなら何で黙ってたのよ? 最初から強いとこを見せてくれたら結婚も考えてあげるのに!」

「別に隠しとったわけちゃうんやけどな~。というか俺的にはこっちの方が驚きや」


 カラカラと笑いながら俺を指さすレイド少年。


「封魔気術なんてマイナーな術使う鬼とか超レアやん。妖怪が封魔気術使うなんて聞いたことないで?」

「だからこそ意味があるんだ。対策が取られにくいからね。鬼の力で身体能力を向上させて、封魔気術で相手の妖術を封じる。これで俺の土俵の完成だ」

「なるほどなぁ。確かにあれだけの身体能力やったら下手な術なんていらんやろ。やから封魔気術でお前の長所を“相乗”したってとこか」

「え~!? 私は殴り合いより能力で戦う方がカッコいいと思うけどな~! だって殴り合いって暑苦しいじゃん!」


 突然、姉さんはブーブーと口を尖らせる。

 意外だな、鬼は基本的に肉弾戦を好むと思ってたんだけど。


「最近はどつき合いする鬼自体少ないからな。昔は吸血鬼も鬼みたいなどつき合い好きやったらしいけど、今はてんで聞かんわ」

「え、なんで?」

「そりゃあ……戦いって距離の優位性大きいやん。戦闘の歴史は射程距離拡大の歴史やし」

「あ~、確かに。俺も遠距離戦は物投げたり投擲するぐらいしかなかったな~」

「せやろな~。拳だけってかっこええけど、やっぱ距離詰めるんが面倒やからな」


 そんな風にレイドと話していると、思っていた以上に盛り上がった。

 お互い転生者の上に、転生先が大妖怪の息子。しかも原作関係でひどい目に遭うかもしれない。

 ここまで特殊かつ希少な接点のある奴なんて普通はいない。

 そりゃ話が盛り上がる。


「お前おもろいな~。さっきは突っかかってごめんな。今日から仲良くしようや。俺のことは気軽にライって呼んでくれ」

「うん、これからよろしくライ。俺のことはモモって呼んでくれ」

「おう、よろしゅうなモモ!」


 ガチっと妖気を込めて握手をすると、突然姉さんが割ってきた。


「ちょっと何二人で勝手に友情ごっこしてるのよ!?」

「ごっこってなんやごっこって!? 折角気が合う奴と会ったんや! ダチになるのは当然やろ!」

「え、ライト友達以外にいないの?」

「そうよ、この子変に大人ぶるとこあるからなかなか同じ年の子と友達になれないの」

「うっさい! 友達一人ぐらいおるわ!」

「たった一人だけじゃない!」


 ふ~ん、友達いるんだ。ふ~ん!

 俺は山に籠ってずっと厳つい僧兵さんたちしか話せる人いないのに、ソッチはもう友達いるんだ。

 ふ~ん!!


「言(ゆ)うてソイツ俺より三歳も年上やで? ソレで同年代って言えるか?」

「十分よ。あんた十五歳の熊虎たちとも話合わなかったじゃない」

「しゃーない、アイツらバカやもん」

「ほらそーいうこと言う!」


 ツンツンとライを付く我が姉。

 一見すればイチャ付いているように見えるが、何故かライは本気でいやそうな顔をしていた。


「それよりどうやモモ。ソイツ紹介したろか? 多分すぐ仲良うなれれうはずや」

「うん、頼むよ」

「じゃあ次の機会な、どうせ三日すればお前の紹介会やるし」


 え? 何それ?

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