第25話 初、退魔師との戦闘
「ここで待ってろ」
一旦川吉を廃材付近に降ろし、すぐ敵と向かい合う。
「へへッ。せっかく見つけた楽そうな手柄だ。ガキの鬼なんてなかなか会えねえからな」
「しかも上級っぽいぜ。こりゃ殺すより捕まえて式にすりゃいいんじゃねえの?」
「けっこう可愛い顔してるじゃん。式にして売れば儲かりそうだぜ」
ニヤニヤと下品な顔をする退魔師。
呆れた、これが人類を妖魔の類から守る組織のする顔か。
ここまで小物臭いと逆に安心するな。俺でも倒せそうで。
「(……いや、そんなものか)」
退魔師といっても正義の味方というわけではない。
特殊な力を持つといったって人間だ。悪いこと考える奴もいれば、生活のために退魔師やってる奴もいる。
むしろ、本当に正義と人類のために戦う退魔師の方が少ないんじゃないのだろうか。
……いや、でもこれは流石にないな。うん。
「ていうわけで、死んで俺の糧になれやぁ!」
男はニヤニヤしながら懐から筒のような者を取り出した。
筒を一振りすると、刃物が飛び出して刀のようになる。かっこいいな。
そんなことを言ってる場合じゃないのは分かるが。
振り下ろされる刀を右に軽く跳んで避ける。
刀が俺の横を通り過ぎ、剣先が地面に付き、引き戻される前に刀の峰を踏んで動きを止めた。
男は動揺して刀を引き戻そうとする。その隙に相手の手首をつかみ、力ずくで投げ飛ばした。
部屋の壁にぶち当たって派手な音を立てる。
「この…ガキ鬼が!!」
男は無傷で立ち上がった。
頑丈だな。相手は退魔師だから大丈夫だとは思ったけど、大丈夫なのを実際に目にすると驚きだ。本当に人間かこいつ。
特殊な力で体を守ったのか、それともあの和服が鎧みたいな役割を果たしているのか。
そんなことを考える余裕はないけど気になる。後で爺やあたりに聞こう。
「ふざけやがって! ガキが大人に逆らうんじゃねえ!!」
別の退魔師が懐から銃を取り出す。
マスケット銃を小型化させたかのようなデザインの拳銃。
ソレを男は俺目掛けて発砲した。
俺は銃弾をボクシングのフットワークの要領で避ける。
「こ、こいつ弾避けてるぞ!」
「本当にガキか!? 化けてるんじゃねえのか!?」
避ける俺を見て動揺する退魔師達。
流石に銃弾より早く動けるわけじゃない。
銃口が向けられる前に、引き金を引かれる前に動いているだけだ。
毎日飛んでくる石礫を避ける訓練をしていたから、これぐらいなら出来る。
更に銃撃の手を強める退魔師達。
今度は前頭に転がることで全て避ける。
子供という的が小さい標的が、かなり低い姿勢で移動。しかも転がるという普段ではしない移動方法。
それはそれは撃ちにくいだろう。
ソレに、こいつら射撃下手くそだから余計に避け易い。
俺は銃弾を避けながら接近し、ある程度の距離で飛び掛かった。
攻撃のためじゃない、攪乱のためだ。
「どけ! 邪魔すんな!」
「邪魔なのはお前だろ! さっさと動けや!」
「おいそんなとこに突っ立ってんな! 撃てねえだろ!」
よし、うまい具合に攪乱出来た。
こんな小さな的がウロチョロしてるんだ、なかなか当てられないだろ。
それに、外した弾丸は流れ弾になる危険性がある。迂闊に俺を撃てない筈……。
「ウロチョロすんじゃねえ!」
「うわッ! テメエ何すんだ!?」
「よくもやりやがったな! 死ねクソボケ!」
撃ってきやがった。
コイツら味方がいるのに容赦なく撃ちやがった。
次々と銃を撃つ馬鹿ども。
肝心の俺には当たらず、次々と味方に流れ弾が命中。
場は一気に混乱した。
よしよしいい感じだ。予想の弐倍ぐらいは有利になったぞ。
今度は俺のターン。
一人ずつ後ろに回って後頭部に蹴りを食らわせる。
「ごッ!?」
蹴りが当たった退魔師は一発で気絶。
コレを他の奴にも食らわせる。
こうやって一人ずつ脱落させていったのだが……。
「動くんじゃねえ!コイツがどうなってもいいのか!?」
この一言で全てを台無しにされた。
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