第13話 死にたくない
腹に何か熱いものを感じた。
小さな何かが背中の肉を掻い潜り、内部へと侵入する。
焼けた鉄を突っ込まれたかのような、未知の痛み。
何故だろうか全身が熱くて痛い……。
俺は撃たれたんだ。
「…ッ!?…………ッ!!?」
分かった途端、曖昧だった痛みの感覚がはっきりとした。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!!
なんだこの痛み!?
映画や漫画じゃ撃たれて叫ぶシーンがあるけど、そんな余裕すらない。
痛い熱い辛い苦しい!
熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いっ!!!
痛みと熱が全身を貫く。
熱した刃物で貫かれた挙句、内部から焼かれるような激痛。
身体の中を炎で焼かれているかのように苦しい!
助けて、誰か助けて……!
「……ぐぅ!!」
更なる痛みが俺を襲う。
硬い何かで殴られたかのような痛み。
ソレが全身を襲い掛かり、俺を更に苦しめた。
頭を、肩を、背中を、足を。
何度も何度も何度も。
ハンマーか何かで俺を殴った。
「―――ッ! ―――、――――――ッ!! ―――!」
何か言っている。
全然分からない。
聞こえる筈なのに、脳がちゃんと言葉を理解してない。
痛すぎて、熱すぎて。
殴られ過ぎて頭がおかしくなった。
思考が鈍って、意識が朦朧として。
頭がクラクラしておかしくなってきた。
「(……死ぬ?)」
チラリと、俺の……『僕』の脳裏にその単語が過った。
死ぬ?
誰が?
俺が?
……嫌だ。
嫌だ。
もう…死にたくない。
折角生まれ変わったのに、また消えるなんて俺は嫌だ!!
もう二度と死にたくない!!
「ぐ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
大声で叫ぶと同時、僕の意識は途絶えた。
朱天家は約束によって誕生した。
事の発端は彼らの先祖である酒呑童子が討伐された時代。
かつて皆源頼光によって討伐された悪鬼の子孫や血筋の者たちは当時の朝廷と相互不可侵条約を結んだ。
鬼達は自身の親玉を討った人間を警戒して、人間達は子孫たちの報復を警戒して。
この約束は相互の警戒の上に成り立った。
子孫たちは約束通り人間を襲うのを辞めた。
朱天と名を改め、自身の縄張りに籠るようになった。
こうして朱天は無害な妖怪となったのだ。
では、朱天は悪鬼の頃を忘れたのか。……それは違う。
彼らには確かに悪鬼―――酒呑童子の血が流れている。
都を荒らし、財を奪い、人々を恐怖に貶めた悪の遺伝子は確かに残っている。
今はただ眠っているだけ。蓋をしてないかのように振舞っているだけだ。
切っ掛けさえあれば簡単に剥がれてしまう脆いもの。
そのことを、彼は理解していなかった……。
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