第5話 俺はオリ主


 物の怪ハイスクール。

 妖怪やら悪魔やら妖精やらが跋扈する現代ファンタジーものハーレムラブコメ。

 一見すると現代とほぼ同じ世界だが、裏では人間社会に紛れて潜んでいる人外の世界に巻き込まれた主人公がなんやかんやでハーレムを作るという話だ。

 そのラノベの世界で俺は悪役にあたる。


 朱天百貴。

 ヒロインキャラの一人を権力で無理矢理手籠めにしようとしてぶっ飛ばされた敵キャラ。

 性格はプライドが高くて女好き。権力で色んな女に手を出して自分のモノにしているクソ野郎だ。

 端的に言えば典型的な踏み台敵キャラといったところか。


 最初は俺も嘘だと思った。 

 転生するだけでも受け入れがたい事実なのに、生まれた先は鬼。

 もうこれだけでおなか一杯なのに、更にラノベの世界ときた。

 頭がパンクしそうになったぜ。

 けど、そうとしか考えられないのだ。


 俺はあの顔を見てしまった。

 その顔は物の怪ハイスクールのアニメ版でDVDパッケージを彩っていたヒロインそのもの。

 そして度々聞く単語も物の怪ハイスクールの用語そのものだった。

 俺はあれから調べたが、肯定する材料がどんどん出てきた。

 ここまで来たらもう認めるしかない。

 後は思考を切り替えるだけだ。


 では問題。そんなキャラに転生した際、当人は何をすればいいか。

 簡単だ、全うに生きればいい。


 俺はハーレムに興味はない。

 俺が求めるのは力のみ。俺の力がどこまでいけるか知りたくて仕方がない。


 今の世界が、前世の俺の常識とはまるで違うものだと理解した瞬間、俺はすさまじく感動した。

 俺が新たな生を受けた酒呑童子の血を引く朱天家。

 この身体に流れている鬼の血は、この世界の眉唾なオカルトを瞬時に受けれさせてくれる程の説得力を与えてくれた。


 この肉体がどこまで強くなるのか。

 この体に流れる妖力がどこまで大きくなるか。

 前世の記憶を持つこの俺がどこまで原作キャラに届くか。

 全てが知りたい。


「ふ…フフ!」


 楽しい。

 まるでゲームの世界に入ったかのような気分だ。

 しかもただのゲームじゃない。

 シナリオがある程度決まっていながら、自由度が滅茶苦茶高いゲームにだ。


「坊ちゃま、次の鍛錬ですぞ!」

「は~い!」


 俺は年相応の子供っぽい感じで返事した。


 ああ、楽しみだ。

 俺はこの世界でどんな風なオリ主になれるかな~?

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