第2話 何で角あるの?


 目が覚めると、そこは和室だった。

 心地よい畳の匂いと、暖かい毛布。

 俺は助かった……のか?


 周囲を見回して見る。

 俺の周りを木の柵が囲んでおり、上の蓋がないせいで筒抜けだ。

 登ったら逃げられるか?


 柵に手を掛けようと手を動かした瞬間、俺は自分の手を見て見開いた。

 そこには、赤ちゃんみたいな丸々とした手があった。

 嘘だろと思いながら、少し動かしてみる。

 動いている。

 間違いなく俺の手だ


 いや、手だけではない。

 全身が赤ちゃんみたいに……いや、赤ん坊になっている。


「(ど、どういうことだ?)」


 一瞬困惑するが、すぐに俺の脳は答えを出した。


 急に赤ちゃんになったこの体。

 あの老人の坊ちゃんという単語。

 以上から導き出される答えは一つ……。


「坊ちゃま、お食事の時間ですよ」


 声に驚いて振り向く。

 そこにはいつの間にかあの老人がいた

 白い長髪に、同じく白い豊かな髭。

 まるでホワイトライオンの鬣みたいだ。

 いや、そんなことはどうでもいい。


「あぁえぁわえあ~」


 やはり上手く話せない。

 どうしても口やら舌やらの筋肉が上手く動かせないのだ。


「さ、坊ちゃま。たくさん飲んで大きくなってくださいませ」


 爺さんは俺を抱きかかえて柵の外へと俺を連れ出し、スプーンを向けた。

 乳粥だ。


「(やっぱ……そういうことか?」


 そうやって考え事をしていると、爺さんが心配そうな顔でこちらを見てきた。

 仕方なく差し出された乳粥を口に含む。


 美味い……のか?

 味がよく分からない。

 まさか舌まで退化したのか?


 そんなことを思いながらも乳粥を喰う。

 味覚はあんまりだったけど、満腹感だけは十分堪能した。


 食い終わると老人が優しく俺の頭を撫でる。

 心地よい。

 暖かい布団に包まってるかのような快感だ。


「(ああ、眠い……)


 満腹になるとほぼ同時、途端に眠気が襲ってきた。

 俺は睡魔に逆らわず夢の世界へと旅立つ。


 その時俺が考えたことは……。


「(なんで爺さんの頭に角が生えているんだ?)」


 爺さんの頭頂部から生えている牛みたいな角。

 それがずっと気になっていた。

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