鬼人転生~酒呑童子の孫に生まれた俺は最強を目指す~

@banana333

赤子編

第1話 転生しました


 暗い。

 寒い。


 なんだコレは。

 目が覚めると、目の前には暗闇しかなかった。


 ここはどこだ?

 俺は一体どうなっている?

 確か、昨日は仕事が終わって家に帰って……。


「(……待て、家で寝た記憶がない)」


 飲みに行った記憶もない。

 俺は酒が嫌いだから手を出すこと自体ない。

 だったら、この状況はどういうことだ?


 どうして記憶がない?

 事故にでも遭ったのか? 事件にでも巻き込まれた?

 色々と原因を模索するが、何故か頭が回らない。やはり酒か?


 体を動かそうとするが、力が入らない。

 目を開けようとするが、何故かちょっとしか開かない。

 真っ暗なのはこのせいだったのか。

 これはマジでヤバいぞ。助けを求めないと。


「あぅ~」


 !?

 

 俺は自分の声に動揺した。

 なんだこの発情した猫みたいな不気味な声

 俺の声はこんな気持ち悪いものじゃないはずだぞ?


 もう一度喋ろうと試みる。


「あ~うあ~……」


 うまく喋れない。

 というか、喋るという行為そのものが出来ない。

 なんていうか、喋るための器官がうまく働かない状態だ。

 簡潔に言えば、舌が回らない。


 さて、どうすればいいか……。


「う、うぇぇぇ……」


 急に涙が出だした。

 泣きたい衝動に駆られ、勝手に体がぐずる。

 なんとか留めようとするが、全く言うことを聞いてくれない。



「びえええええええええええええええん!」



 感情のコントロールが出来ない。

 身体が言うことを聞いてくれない。

 まるで自分じゃないかのようだ。



「びえええええええええええええええん! びえええええええええええええええん!」



 なんだこれ?

 お前いい歳こいた大人だろ?

 感情のコントロールはともかく、泣きわめこうとするなよ。

 大の男が泣く姿ほど見苦しい姿はないぞ?


 なんだ?

 一体どういうことだ?

 俺は一体どうなったんだ?


 そうして暫く泣いていると足音がした。


「(た、助かった……のか?)」


 いや待て、何故ここに人がいる?

 記憶はないし、ここが俺の家だとも限らない。

 だが家ならどうだ?

 もしかしたらこいつら、俺の家に入ってきた泥棒か何かの可能性が……。


「お目覚めですかお坊ちゃま?」


 坊ちゃん? いったい誰のことだ?

 もしかして俺のことか? なら何故そう呼ぶ?

 更なる混乱に陥ってより一層激しく泣きわめこうとした瞬間、突如温かい布に包まれた。


「あう~……」


 その事に安心した俺は、そのまま意識を無くしてしまった。

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