アウロラのスピンオフ完成しました。

 一日の政務は全て終わり、城内のほとんどの者が休息時間に入る頃である。この城の主人である王子側近も同様だったが、自室に戻ろうというときに運悪く大臣に捕まり、翌日の予定変更について言伝を頼まれてしまった。

 自室へ直行するところを、廊下を折れて王族の部屋が集まる階へ向かい、主人の部屋の扉を叩いた。

「はーい、どうぞー」

 返ってきた高い声は当然のことながら王子のものではない。部屋に入るなり、開口一番にロスは声の主へ問うた。

「こんなところで何やってんですか、姫様」

「読書」

 見るからに寛いで兄の部屋の椅子に足を組んで座る娘は、顔を上げるでもなく頁をめくる。

「いえ、それは見ればわかります。そうじゃなくて何で殿下の部屋で」

「だって昼間は政務で私は勉強もあってちっっっっっともお兄様と一緒にいられないんだもの」

「だからって何も本読むのにわざわざ……」

「いいじゃないの寝る前くらい! ロスは朝稽古だの視察だの外遊だの四六時中お兄様といられるのにずるいわ!」

「四六時中じゃありませんし不可抗力でしょう、仕事なんだから!」

「二人とも相変わらず仲がいいな」

 言い合いを聞き流していた兄王子が穏やかに口を挟んだ。すかさずロスが「お二人ほどじゃありません」と言い返し、

「大体姫様、もう十八でしょう。もう殿下いないと眠れないとか言って徘徊しないでくださいよ」

 呆れ顔をされ、王女は真っ赤になって叫んだ。

「いやぁ止めて! そんな小さい頃のこと持ち出さないで!」

「あれはあれで語り草になるだけありますけれどね」

「ちょっとよしてお願い子供の時のことなんだから! それにあの時のことなら熊抱き抱えてるロスの方がよっぽど面白いわよ」

「確かにあれはなかなか見ものだったな」

 王女が恥ずかしさに頬を両手で覆って抗弁すると、こちらも本を読みながら兄が思い出し笑いをする。そして即座にロスに半眼で睨まれた。

「どなたに頼まれたと思ってるんです」


 ***


 さて、まずはロスのスピンオフ、「とある従者と王子の在り方」、お読みいただきありがとうございます。

 驚いたことに数日間、ランキング上位にいました。光栄です。

 https://kakuyomu.jp/works/16816452221444809835


 そして人気投票で第一位をいただきましたアウロラのスピンオフ、随分と遅れてしまいました。やっと完成致しました。

「小さい王女の夜の冒険」

 https://kakuyomu.jp/works/16816700426794228789


 早速お読みいただきました方、ありがとうございます。

 ちっちゃいアウロラは楽しかったです。七歳と書きながら、物語中のアウロラは四〜五歳くらいの言動な気がしましたが……ロスに出てもらうには六歳以上でなければならず。ご容赦ください。カエルム十六歳、ロス十九歳です。


 幼いアウロラ、城をちょこまか。


 そしてロスと熊とは(そんな話じゃない)。


 独立短編でも読めそうな形にとにかく楽しんで書いたので、多くの方にほのぼのしていただけたら幸いです。


 長編、続き書く時間を……。ではではお久しぶりのシレア舞台裏でした。


 あ! 結果的に四コマ漫画風になった「140字シレア国」も一度、完結ボタンにしました。区切り。こちらもまさかのPV500越えでして、ありがとうございます。

 https://kakuyomu.jp/works/16816452221199228986

 サクッと笑っていただけたら幸いです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る