第40話

危険警告デンジャー! 危険警告デンジャー! 超高密度神敵反応出現。聖女リアクター強制再起動。システム再稼働まで三秒』


 声に反応して、立ち上がる。

 何かしらの力で、立ち上がることができてしまった。

 つまりは、それだけの危機が、そこに迫っているということだ。


「どうしました?」

「……来るよ!」


 アタシの声に反応したかのように、青空にビキリ、と亀裂が走る。

 それは見る見るうちに割れ広がって、青空に真っ黒な空間を出現させた。


「……おっさん、みんなを下がらせろ!」

「何が起こっているのだ、これは……」

「早くしな! !」


 頭の中に響く声が、今までにない警戒信号を発している。

 四天王とやらを前にしても静かにしていたこれが、ここまで警告を発するというのだ、真なる神敵──魔王のお出ましに違いない。


 黒い空間の淵を掴むようにして、何かが現れる。

 真っ黒でボロボロのローブを着た、人型の生き物。

 しかし、それが人でないのは……一目瞭然だった。


 病的に白い肌には目がいくつもあり、鼻の位置には縦に裂けた口があった。

 まるで水の中にでもいるように髪がゆらゆらと揺れ、その体の輪郭は強い魔力でぼやけている。


 間違いない、魔王だ。


『魔王確認』


 頭の中で、そう告げられれば確信もする。


「我が名は魔王ザ──……」

「ふっとべぇーッ!」


 薄汚い口が何か言いそうだったが、隙だらけだダボが。

 くっちゃべってる暇があったら、さっさと死ね。


「き、貴様……我を誰と──……」


 追撃の閃光ビームが吹き飛んだ魔王に直撃した。

 閃光と火柱が、魔王ごとモールデン平原を焼く。


「総大将がノコノコ出張ってダラダラと口上たれてんじゃないよ」


 これで仕留められていればいいが。

 どうやら、アタシってやつは燃費が悪いらしい。

 頭の中ではしきりに『聖女リアクター稼働率低下』やら『システムエラー』やらとよくわからない言葉が響いているし、もう足に力が入らない。


「クカカカ……聖女め。このザダークの不意を二度も打った事、褒めてやろうではないか」


 徐々に晴れる煙の向こう側から、声がした。


「しかして、後悔せよ。ここで貴様らの命運はついえる。全て喰らいつくしてくれるわ」


 煙の向こう側から、巨大な魔物が姿を現す。

 それは竜のようにも獣のようにも見える異形の怪物。


「くぅ……ッ!」


 仕留めきれなかったのは痛い。

 聖女の力はまだ戻らない。


聖女リアクター、軽損。このまま稼働を続ければ、崩壊の危険があります』

『救世システム、エラー。対象の脅威判定を修正。現状のリソースでの対応は困難です』


「セイラ。休んでいてください」

「エルムス……! ダメだよ、あんな化物、死んじまうよ!」

「さて、それをどうにかするのが、あなたの隣に立つ僕の役目ですから」


 抜刀の構えで、エルムスがニコリと笑った。

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