第41話
「聖女殿を守れェ! 亀甲の陣!」
「セイラの安全が第一だ! 油樽を惜しむな! ここが踏ん張り時だ!」
エルムスと魔王の戦いが始まって、すぐ。
騎士と傭兵たちが駆けつけてくれた。
「アルフィンドール卿を援護せよ! 魔術師隊は魔王の動きと阻害! 騎士は蛇どもを叩け!」
「オレ達も援護だ! 蛇野郎を近づかせるな!」
モールデン伯爵とバルボ・フットが声を張り上げる。
まるで、いつぞやの時と同じだ。
……ただ違うのは、そばにエルムスがいない。
ただ一人で魔王を押し留めている。
ひょろっちい司祭だと思っていたのに、なんて強さだ。
「無駄、無駄、無駄ぁ」
魔王がその巨体から蛇を分離させる。
巨体を構成しているのは数千数万の蛇の化物で、それをこちらへと向かわせているのだ。
騎士と傭兵が押し留めているが、徐々に押されてきている。
「あ……ッ」
魔王の一撃を受けた、エルムスが大きく吹き飛ばされた。
こちらへと落下して、地面を転がる。
傷だらけで、剣も折れて……それでも、立ち上がろうとしている。
「エルムス!」
「セイラ、無事ですね? よかった」
駆け寄って手を握る。
「アルフィンドール卿をフォロー! 騎士隊! 前へ! 大盾部隊その場を維持せよ!」
騎士隊が、少し前に出る。
アタシ達を守るために。
「アタシはなんで……! 聖女になるって、決めたのに!」
「セイラ、大丈夫ですよ。僕も彼等もまだ戦える」
膝立ちになって、魔王の方を見据えるエルムス。
「もう、ボロボロじゃないか!」
「なに、まだ大丈夫です。僕という男は、存外丈夫なんですよ」
上体を起こしたエルムスが笑って、アタシの頬を撫でる。
「ダメだ、ダメだよエルムス! 勝てっこないよ!」
「おや、珍しく弱気ですね、セイラ」
「これ以上、無理だよ……」
涙がこぼれる。
泣いたってどうにもならないってわかっているのに。
こんなものが何の役にも立たないなんて、スラムで染み付いているはずなのに。
それでも止まらない。
「セイラ。僕はね……あなたのために、在る者なんです」
「なんだよ、それ……!」
「宿命を背負うべきは、あなた一人ではないということですよ」
立ち上がったエルムスが血を拭って、魔王を見据えた。
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