聖女セイラはビームで全てを焼き尽くす。～神よ、これが『愛』だ～

第25話

　謎の声に導かれるように、アタシは目を見開いた。

　そこには迫る魔物（モンスター）の大群……魔王軍が映っている。

「消しとべぇぇぇぇぇーーーーーッ!!」

　溢れ出そうとする何かを抑えることなく、魔王軍を視界にとらえる。

　次の瞬間……アタシの両目が白く染まった。

　何が起こっているかは、すぐにわかった。

　アタシの両眼から放たれた閃光（ビーム）が、意気揚々と迫る魔王軍を捉えたのだ。

　ある者は熱線に触れた先から蒸発し、ある者は炎上し、ある者は爆散した。

　触れる全てを焼き払う視線で、魔王軍をくるりと見渡してやる。

　その数は、あっという間に半分以下になった。

「な、なんだとォォォーーー！」

　余裕綽々といった様子だった魔王四天王ビーグローも、閃光に触れて蒸発する。

　四天王のあっけない最期に恐れおののいた魔物（モンスター）たちが後退を始めるが、時すでに遅し。

　神敵を尽く滅する閃光（ビーム）が次々と触れて、敢え無く赤熱し、爆散していく。

「クソどもが、思い知ったか……。一昨日きやがれってんだ」

『神敵の殲滅を確認。神罰執行器官、稼働停止。聖女（リアクター）エラーを確認。緊急停止要請』

　草原を動くものが一切いない荒涼としたガラスまじりの荒れ地に変えて、アタシの視線は止まった。

　それと同時に、ひどい倦怠感が体を襲う。

　五日間食べてなかったときに似た感じだ。

「セイラ！」

　倒れるアタシをエルムスが抱き止めた。

「ああ、エルムス……無事かい？」

「もちろん。誰も、誰も傷ついちゃいないよ。だから、まだ……」

　あン？

　待て。この雰囲気。

　アタシ死ぬのか？

　え、マジかよ……。

　そんなやばい状態なワケ？

「すこし眠るだけさ」

「セイラ、目を開けてくれ」

「寝かせとくれ。ああ、あんたの腕枕がいい。覚えてろ、起きたら……言いたいことが……あん、だから……」

　体力の限界だったアタシは、そのまま眠りの底へと落ちていく。

　脳裏では相変わらず無機質で事務的な声が何か言っているが、知ったことか。

　神だか何だか知ったこっちゃないけど、勝手にやりな。

　あたしは人として、アタシのしたいようにするからね。