第18話 good morning world

「ライム、ステラ、援護お願い!私が接近戦で叩くわ」

「任せて!」

「お願いします、リコ姉様」


リコがロードへ突っ込む。背後からライムが援護する。


「ウォーターアロー!!」

「グギャャァァァ!」


ライムの魔法は、ロードに対しひるますていど。だが、その隙を見逃さずにリコは切り裂いて行く。


「はぁぁぁ!」

「邪悪な魂を貫け!ライトアロー」

「ステラ、ナイス!」


ロードは徐々にダメージを受けていたが、急に雄叫びを上げリコを振り払う。


「グギィァァァァ!!!」

「きゃぁ、な、なに?」


上手く着地したリコは、ライムとステラの元まで下がり、周りを見ると辺りの魔物たちが動きを止めていた。

アレンの対峙しているキングとクリスの対峙しているロードも。





アレンは、キングの様子がおかしく思い距離を空けた。

何かに警戒をして慎重になっているように思えた。


「何が起こったんだ?」


アレンは斬り込むべきか迷い様子見をする。

迂闊に近づき下手に一撃をもらうべきではないと判断した。




クリスは、ロードに対して魔法を撃ち込んでいた。

威力重視ではなく、連射重視で。

ロードの膝に一点集中で攻撃し、機動力を奪うつもりであった。だが、ロードなため、中々硬く膝を壊すほどのダメージは、負わすことが出来ていなかった。


「くっ、硬い」


クリスは焦りを感じていた。周りを見ても撃破してなく、魔力が心許ない状況に陥りつつあった。


「ギャァァァァ!」

「しまった!」


ロードがクリスに向けて手に持っていた棍棒を投げて来た。

それを横っ飛びで躱したが、ロードに接近を許してしまった。

クリスは、死を感じた。


あの拳で殴り潰されると。



クリスは思う。


せっかく先輩に会えたのに会話も出来ず、毎日ただ眺めているだけだった。


せめてもう一度声を聞きたかった。


抱きしめて欲しかった。


もう離れたくなかった。


“好き”って言いたかった。


きっと叶わないだろうと思うが最愛の人の名を叫ぶ。


「蒼亮先輩〜ッ!」



目を瞑り、衝撃が来ることに身構えた。


ドォーーーン!!!


轟音が響いた。




だが、衝撃は来ず、恐る恐る目を開けると目に入ったのは、肩甲骨あたりまで伸びた黒髪。

病人などが着るような服。

そしてなにより、両手の拳を突き上げ叫ぶ姿を。


「おっはよー世界!!Good morning World!」


クリスは、両目に涙を溜め、朗らかな声で言う。


「遅いよ、先輩」

「お待たせ、祈里いのり。だが、ヒーローは遅れて来るもんだろ?」

「いつも遅刻してする、言い訳じゃないですか。蒼亮先輩」

「やっと会えたんだから感傷に浸りたいところだけど先にパリピーどもにご退場願おうかな」

「お願いします、先輩!」

「任せたまえ!後輩!」


そういうとソルは、魔力を放出する。魔物はもちろん、冒険者たちも震えるほどの高密度、高品質の禍々しい魔力を。

そして、息を吸い込み叫んだ。


「“おすわり”!」


その一言で全魔物が地面に押し潰され、息絶えていた。

冒険者は、目の前で起こった出来事に唖然とし立ち尽くす。



そして、リコ、ステラ、ライム、アレンだけははソルの元へと駆け付けた。



こうして、スタンピートは収束したのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る