第17話 鼓動

スタンピートが起こった。

それは、領都に伝わり非戦闘員は避難を始めた。冒険者には、緊急依頼が発令された。


「魔の森より一万の魔物の群れがこちらに向かって来ているわ。中には上位種も紛れていることが確認されたわ。腕の立つ者は上位種を、ランクの低い者は城壁内に侵入を許さないようにして、以上!配置について」


冒険者たちは、一斉に駆け出した。

街の危機に頑張りどころと言わんばかりに。


「さて、リコたちは最前線をお願いしてもいいかしら?負担も大きいと思うのだけど、ダメな時はすぐに撤退して頂戴ね?」

「ギルマス、街で1番強いパーティは私たちなので大丈夫です。師匠もそれでいいですよね?」

「ええ、構わないわ。ギルマス、私は城壁近くの上位種を殺るけどいいかしら?」

「あなたがそうしてくれるなら頼もしいわね。頼むわよ」


そして、リコたちも前線に向けて出発した。



ドクンッ




その頃、ウォレット公爵家では、ミレイユがソルの護衛として待機していた。


「ソル様、これから戦いが始まります。あなた様が目を覚まして頂けたらどれほど心強いことかと思います。早く起きて下さいね」


ミレイユは、ソルに語りかけながらそっとソルの手を握った。


ドクンッ



前線に着いたリコたちは、魔物に向かい合った。


「アレン、クリスちゃん、ステラちゃん。大技ぶっ放してくれる?先制攻撃よ」

「わかりました、リコ姉さん」

「ドカンといきますね、リコさん」

「いきます、リコお姉様」


アレンとクリス、ステラは共に聖属性の使い手。広域魔法を3人は選択して放つ。


「「「シャイニングブラスト」」」


3人の放った魔法で魔物が500近く倒した。

そこから冒険者たちが駆け出す。


「行くぞ、ヤローども!!!」

「「「「おぉーー!」」」」


ドクンッ




戦闘開始から3時間が経った。

徐々に魔物の数を減らしてはいるが、残っている魔物は上位種ばかりで前線が押し戻されている状況である。


「はぁ・・・はぁ・・・アレン、クリスちゃん、ステラちゃん、ライム。まだいける?」

「ふっ!僕はまだいけます」

「やぁぁぁ!私もまだまだ!」

「えい!私は魔力が少なくなって来てます」

「はぁっ!私も魔力が」


アレンとクリスは別としていくら、強者といえステラとライムの魔力は徐々に底を尽きて来ている。

そして、3体の巨大な影がこちらへ向かって来ていた。

ゴブリンロード2体とゴブリンキングである。


「ちっ、アレン!キングは相手できる!?」

「スキルをフルで解放すればいけます!」

「なら頼んだわよ!ステラとライムは私と共にロード1体を。クリスは、単独でロードをお願い!」

「「「わかりました」」」


ドクンッ




「失礼します」


ミレイユは、ソルの元から少し席を外し戻って来た。

扉を開けて中に入って唖然し、そして部屋から急いで出た。師匠の元へ報告をするために。


開けっ放しのテラスは出る扉から風が入り、カーテンがなびく。


先程まで少年が寝ていたベッドは、


既に


抜け殻状態であった。

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