第13話 転生者

聖女side


私は、転生者だ。

前世でロクな死に方をしなかった。


大切な人の支えになれず、大切な人は自ら命をたった。

葬儀のときに1人の男から言われた彼の遺言。


『***ごめんな』


悔しかった。悲しかった。そして、彼の支えになれなかった自分自身が憎かった。


そんなときに天罰だったのだろう。


見ず知らずの男たちに拉致され回され殺された。

田舎の娘に生まれ変わっても忌々しい記憶とほんの少しの大切なあの人との思い出しか思い出せない。


でも、この新しい世界には彼はいない。

それでも今世も頑張って生きようとした、あの時までは。


5歳の頃、村に盗賊が押し寄せて来た。

ただただ怖くてみんな殺されていった。


私が見つかったとき、前世の犯された記憶が鮮明に蘇った。

あのときと近い状況。

私の中の何かが弾けた。


「いやぁぁぁぁ〜〜〜〜!」


心の底から拒絶した。私を中心に光の輪が放たれ盗賊たちを切り裂いていく。

私を護るように見えない壁のようなものがドーム状に展開する。そこで意識を手放した。



目が覚めると白い天井で目だけを動かし辺りを見る。教会?のようなところらしい。

椅子に座っていた、シスターのような人と目が合う。


「起きたのね。私は、イザベラ。あなたのお名前は何かしら?」

「わ・・・・・・た・・・し・・・けほけほ」


上手く声が出せない。むせかえる私にゆっくりでいいわと水を一杯差し出してくる。

それをゆっくり飲んで答えた。


「く・・・りす」

「クリスって言うのね?」


聞き返されたから頷く。


「単刀直入に言わせてもらうわ。あなたの住んでいた村に盗賊が押し入り、住人を殺した。だけど盗賊を殺したのはあなたね?」


盗賊、、、あぁ〜確かに私は盗賊を殺した。

自分の意思か?と問われればわからない。

殺したとしても罪悪感も何もない。


「私が・・・たぶん」

「そう」


イザベラは何かを考えて私の目をしっかり見据えて言う。


「クリス、あなたは今日から私の娘になりなさい。私があなたを鍛えます。そして、時期が来たら私の師匠や妹弟子に預けてさらに鍛えてもらいます。あなたが道具にならないように護ります」


私を護る・・・・・・?

私はそんな特別な人間じゃない。


そんなとき、いきなり部屋に男が入って来た。それを見たとき、身体中が震え出した。どんなに気を張っても止まらない。

呼吸も浅くなり息が出来なくなってきた。


「ひぃ・・・ひぃ・・・・・・ひゅっ・・・・・・・・・がはっ」

「大丈夫!?えっ、これ、結界?ちょ、ちょっとあなた部屋から出なさい」

「うわっ、は、はい!」

「大丈夫、もう大丈夫だから落ち着いて」


男が部屋を出て行きイザベラに抱き締められると震えは治まってきた。

呼吸もゆっくり吸って吐いてなんとか持ち直した。


「ごめ・・・なさい」

「いいのよ、男の人が怖いと思っても仕方のないことなのよ。怖い思いをしてるなら特にね」

「ひぐっ・・・・・・ひぐっ、ありがとう、ございます」


私は、落ち着くまでイザベラの胸の中で泣いた。抱き締められている間、お母さんやお父さん、それにあの人に抱き締められているような暖かさを感じた。

そして、意識がどんどん遠くなって行く。


「せん・・・ぱい・・・会い・・・た、い・・・よ・・・」



それから2年。

私は自分が転生者であること、前世の影響で男がダメなことをイザベラ、お義母さんに伝えた。それでも変わらず愛してくれて嬉しかった。

そして、5歳の時に開花させた属性とスキルを鍛えてお義母さんから教わることが少なくなってきたある日。


「クリス!ウォレット公爵家に行くわよ!私の師匠が今、公爵家兄妹を指導してるんだって!そのついでに見てほしい患者もいるそうなんだけど・・・」


嬉しいような困ったような複雑な顔をして言ってきた。


「どうしたの?」

「いやぁ〜、師匠の新しい弟子。私の新しい弟弟子が意識が戻らないからクリスに見てほしいそうなんだけど、クリスの嫌がることはしたくないかなぁ〜って思ってね」

「意識がないならたぶん、大丈夫だよ?あ、でも公爵家の嫡男は、ダメかもしれない」

「ふふっ、それはいいわ。妹弟子と公爵令嬢とその侍女見習いがお世話してくれるそうよ。私は、師匠に挨拶したら帰っちゃうけど大丈夫?」


女の子がいてくれるだけいいけど流石に心細い。お義母さんの妹弟子って人が優しかったらいいなぁ〜。でも私、人見知りだった。


「が、がんばるもん」





それからすぐに出発して公爵家に着いた。

着いてびっくりしたのがお義母さんの師匠様がオネエだったこと。妹弟子のリコさんがお姉ちゃんって呼んで欲しそうなこと、ステラ様とそのお付きのライムちゃんがとても美人だったこと、嫡男は〜うん、距離感を遠めにしてくれるだけありがたい。


お義母さんと別れた後、まず先にと患者さんを見ることにした。

彼が寝ていると言う部屋に案内をしてもらい彼を見た瞬間、



ドクンッ




胸が高らかに鼓動を打った。

微かに感じる。大切なあの人の彼の、、、





先輩?」




魂を。

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