第11話 本質


「あれ?俺、こんなところで何してんだろ?」


気がつくとよく分からない場所にいた。

周りは、何もなく上を見上げると満点の星空。下を見ると海のように柔らかく夜空の光を映しているけど普通に立てている。


こんな広くて意味の分からない場所に1人。

気の向くままその場に大の字で倒れる。


ここがどこだか分からないけどこれが夢なら早く目を覚ましてみんなのところに戻らなきゃ。




だけど・・・・・・



だけど、こんなにも心地いい世界があるんだなぁ。

ずっとここにいたいや。


寝転んでいるとゆっくり歩いてくる一つの影。

俺の前で止まり、見下ろしてくる。


「よぉ、俺。とうとうここまで来たんだな」


その顔は見間違えることのない自分自身だった。


「ここは、俺の心の中ってことか?」

「そうだ。そして、俺はお前の負の心だ。もっとわかりやすく言えば【?????】とでも言えばいいか?」

「結局、【?????】ってどんなスキルなわけ?使えたことがないんだけど」


そういうと、負の俺は高らかに笑い出した。

自分のことだけどよくわからん。


「あははははっ、笑ったわ。【魔刀:閻魔】や【魔刀:祈】が何なのかもわかってなさそうだな。せっかく転生して新しい人生、歩み出したのに勿体ないな。あのクソみたいな世界と新しい世界をごちゃ混ぜに考えるからを見失うんだよ、ソル。いや、

「言ってる意味が全然わからんわ。てか、話飛びすぎじゃね?」

「話が飛ぶのはいつものことじゃね?脈絡のない話は、前世からよくしてただろ」

「そりゃそうだけど〜」


確かに前世から話はよく飛んで意味の分からないことになることはしばしばあった。


それにしても本質?

俺の本質って何だっけ?

あれ?なんか抜け落ちてる。

頭が痛くなってくる。大事な忘れちゃいけないことなのに。


何が?何が?なにが?ナニガ?ナ・・・ニ・・・ガ?


「ふふっ、俺が教えてやるよ。お前の根源から抜け落ちた大事なものは3つ。『***』を癒したい、護りたいと思ってた心が【祈】。『***』を護るために立ち向かう正義感が【閻魔】。そんで、『***』を傷付けたやつへの報復や威嚇、復讐が俺、【?????】だ。ちなみに『***』は俺らの大切な人で、この世界にいるって女神が言ってたよ。どうする?探しに行く?」


『***』って誰だっけ?忘れちゃいけない気がするのに・・・・・・思い出そうとするとモヤが掛かる。


『先輩!行きましょ!』

『先輩、どうしたんですか?』

『ひぐっ、先輩〜』

『先輩・・・私・・・先輩のことが・・・』


すごく大事な人なのに、声は覚えてるのに、顔が、名前が、その人に伝えたい言葉が思い出せない。



「さぁ〜て、自分の本質は分かったか?まぁ〜、分からなくてもいいけど。12歳の職業判定の儀までは、開放しない限り俺の力も『***』の記憶も俺が預かっておくから。ちなみに【祈】と【閻魔】はお前に順従だからいいけど、俺はお前が腑抜けてるなら・・・・・・お前を喰らうから」


負の俺がそう宣言して右手を差し出してくる。その手を俺は取り、立ち上がった。


「大事なもんを取られたまんま、泣き寝入りすると思うなよ、クソが。喰らわれる前に掻っ攫って喰らってやんよ!!そんで『***』の記憶を今、ぶん殴ってでも返してもらうからな」

「ははっ、さすが俺!『***』のことになると本質丸出しだわ。でも足りない。せっかくいいもの貰ったんだ。ここで使いこなして行きなよ!記憶は、やなこった、べーッ」


負の俺が舌を出してバカにして来た。我ながらムカつくわ。


「上等!やってやんよ!くたばれ、クソが」

「いいね、楽しくなって来たよ〜!」


お互いが拳を突き出し、殴り合いが始まった。

それだけじゃなく、魔法もスキルもフルで活用する殺し合いに発展して行く。

切って切られて、燃やして燃やされて今まで上手く使えてなかったものが上達していく稽古のようなものに。



永いことやり合ってお互いに無駄と隙をなくし、どちらも決定打がないままその場に大の字で倒れる。


「はぁ、はぁ、はぁ、やっとここまで上達してくれたぁ〜。長かった」

「おえっ、はぁ、はぁ、何言ってんだお前?ここまでしたら何になるんだよ?」

「ん?スキル【?????】が解放しても問題なくなったってこと!まぁ〜、次目が覚めても12歳まで少しの魔法以外とスキルは使えなくなるけどね」

「はぁ!?何でだよ!?」


俺は、起き上がり負の俺を見る。

負の俺は、ケラケラ笑ってた。


「あぁ〜お腹痛い。アプデートだよ。本来なら全部の魔法も完了するまで使えないのにちょっとだけ使えるようにするんだからありがたく思って」


納得いかねぇ〜。レベル上げとか出来なくなるじゃん。どんな能力だろうとあと5年も使えないとかありえねぇ〜つ〜の〜!


「それじゃ〜、そろそろ起きてもらおうかな。起きたらまずステータス見ろよ?」


そう言って拳を突き出してくる。

俺は、その拳に自分の拳をコツンと合わせる。


「ソル、忘れるな。お前は俺であり、ソルバードであり、一岡蒼亮でもある。だけど、お前自身の本質は、バイオレンスと理不尽に立ち向かい護りたいやつを護る正義感だ。この世界は、日本じゃねえ。理不尽には理不尽を。暴力には暴力を、だ。忘れるな」

「無問題!」


俺は、親指を立てて返事をした。

そして、身体が段々と光を放ち始めた。


帰ったら、ステータスを確認して〜たぶん説明させられるだろうけど黙ってよ。



意識がなくなる直前、負の俺の口が動く。


を頼む」

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