第10話 確信

「それで?あなたたち何やってんの?」


リコの前に正座させられた2人。

そう、ライムとステラである。


「だって〜ソル君が〜」

「ソルバードが気を失ったから膝枕しようとしたらライムが邪魔をして来たのでどっちがするかで争ってました」


リコは、はぁ〜と息を吐きソルに膝枕をしている少女に向き合う。


「ソルが迷惑かけたわね。あなたたちは大丈夫なの?」

「いえ・・・私、たちは、ソ、『太陽』様に、助けて、頂きまして、前を向く、希望を貰いましたので」

「『太陽』様って?」


アレンが質問をすると女たちは、ビクッと身体を震えさせた。まだ男に声をかけられたりするのは怖いと思ったのだろう。


「ソ、『太陽』様は、私たちの首輪を破壊しただけではなく、心の傷まで軽くして頂きました。理由があり完全には消し去ることはしませんでしたが今はただ、ぼんやりとされたって程度の記憶にまで薄めて頂きました。後は、私たちが自力で乗り越えるべき問題だとも」


アレンは、手を口元に置き、何かを考えソルを横目で見る。

手で隠した口元が釣り上がった。


「大体のことはわかった。僕は死体を片付けてくるついでに女性冒険者や女騎士をこっちに来るように伝えるよ。ステラ、迷惑かけないようにね。無事で安心した」


ステラを抱き締めてアレンは部屋を出た。








部屋を出たアレンは、ふぅ〜と息を吐きスキルを行使する。


「死体を指定、に収納」


串刺しになっていた死体を回収して、奥の部屋に歩き出した。

途中、部屋を覗き何もない空間にここが宝を置いてあった部屋だと推測し奥の部屋に辿り着く。


「先生」

「あら、アレン。もういいのかしら?」

「はい、妹の無事を確認出来たので大丈夫です。それにしても廊下もそうですけどすごい殺し方ですね。容赦が一切なく巨漢に関しては茹で上がってますね」


アレンは、部屋の状況を見て考察する。

(先生は、気付いてないけど重力も使われた形跡がある。『太陽』と名乗ったらしいけど確実にソル君だな。辻褄が合う。間違いなくだ。目を覚ましたら色々聞いてみよう)


「先生、この死体も回収しますね」

「ええ、よろしくお願いね」


2人は、死体を回収して部屋を出た。

程なくして囚われた人たちを連れて盗賊のアジトから退散するのであった。




誘拐事件から2日経った。

囚われた人たちは、事情聴取とカウンセリングのために騎士団の詰所へ泊まっていた。

ライムと少女、ソルは公爵家の屋敷に滞在していた。

ソルは、2日経った今も眠ったままで起きて来てはいない。


「ソル君・・・・・・」


ライムは、この屋敷を訪れてからほとんどの時間をソルの近くにいた。


コンッコンッ


扉が開いてアレン、リコ、ステラと少女が入って来た。


「やぁ、ライムちゃん。まだ彼は起きないかい?」


アレンはライムに軽い挨拶をし、ソルの状況を確認した。


「まだソル君は、起きてこないです」


沈んだ表情でライムは答える。


「そうか。ライムちゃんに聞いて欲しいんだけど今日からリコ姉さんとライムちゃんにステラの侍女と侍女見習いをしてもらうことになった。ソル君のお世話係は、こちらの少女にしてもらうことになる。挨拶を」


少女は、一歩前に出て自己紹介をする。


「本日よりソルバード様のお世話を致します。マークリー子爵家の三女、ミレイユ=マークリーです。この前は助けて頂きありがとうございます」

「彼女は、貴族だけれでも事情が事情だからうちで働いてもらうことになったんだ。ある程度、礼儀作法とか知ってるからソル君のお世話をお願いしたんだ。だから、ライムちゃんにはソル君が起きるまでステラの侍女見習いをしてもらって色々と勉強をして欲しいんだ」


ライムは、俯いたままポツリと呟く。


「ステラちゃんの侍女見習いをして強くなれますか?」

「その件については、リコ姉さんも同じ立場だから言わせてもらうけど強くなってもらわないと困る」


ライムは、立ち上がり強い意志を宿した瞳でアレンとステラを見る。そして頭を下げ、意思の籠った声で言う。


「よろしくお願いします」

「ライム、期待してるわ。強くなりましょう」


ステラは右手を差し出し、ライムはその手をしっかりと握りしめた。


「はい!」


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