第9話 乗り越える手助けを

牢屋に戻った俺たちにライムとステラが駆け寄った。


「ソル君、怪我はない?大丈夫!?」

「お帰りなさい。本当に助けて来たのね」

「ただいま。当たり前だろ?でも少し手遅れだったのが悔やまれる・・・」


俺が苦い顔をして下を向くと少女と目が合い、少女は顔小さく左右に振り俺の胸に埋めた。気を遣わせたことに罪悪感を抱いてしまう。


俺は、少女を下ろすと改めて周りを見る。

まだ首に隷属の首輪がしてあることに気が付いた。そして、俺の首にも。


「【魔刀閻魔】首輪だけ切り裂け」


刀を小さく振ると全員の首から首輪が落ちた。いきなりのことでみんな驚き、首輪が取れたことに安堵し、涙を流した。

そして、俺は問いかけることにした。


「隷属の首輪は破壊した。それで盗賊に犯された人は恐怖がまだあると思う。記憶を消すことはしないけど薄めることは出来る。どうする?」


その問いかけに犯された女たちは、声を上げる。


「記憶を消し去ることが出来るのにしないのですか!?こんな忌々しい記憶なんていらない!」

「記憶は消さない。理由は万が一何かの拍子で記憶が戻ったり、男と行為をする際に身体が拒否反応を起こしてしまったりと矛盾が生じるとあなたたちの心が本当に壊れてしまうからだ。だから、消さない。代わりに薄れさせて乗り越える手助けをすることしかしない。あとはあなたたち次第だ」


女たちは下を俯き、何かを決意した強い目をして立ち上がる。


「私たちの為を思ってくれてありがとう。死んだも同然だと思ってたけどまだ前に進める気がするわ。だからお願いします」


そういうと頭を下げ、また1人また1人と頭を下げていく。


「あなたたちは、ここまで良く耐えた。どれだけ苦痛だったかまでは俺には予想でしか理解出来ない。そのことにすごく申し訳なく思ってしまう。だから精一杯、やらせてもらいます。来い、【魔刀:いのり】」


【閻魔】の時とは違い、優しい光が集まり小太刀へと姿を変える。

その柄を掴み真横に振るう。

記憶を思い出し難く薄れさせるように。

決して矛盾が起こらぬように。


女たちの身体を優しい光が包み込み、消えていく。俺は、【閻魔】と【いのり】を昇華させる。そして、指を鳴らし魔法を解除する。目が元の藍色に束ねていた髪が解ける。


「俺が出来るのはここまでだわ。魔法を解除したから後は外で待ってるリコさんやアレンに任せるとしよう。疲れたから少し眠るわ」


そのまま前のめりに倒れる。

ライムとステラと少女に支えられ意識を手放した。





ソルが倒れる少し前、外では、、、


「どうやってこの中入るんだよ!?」

「知らねえよ!!触れるなよ!死にたくないならならな!」

「おい、そこの見張り!中はどうなってんだよ!?答えろよッ!」

「し、知らねえ!何も知らねえんだ!気付いたらいきなりから電撃が立ち上がって出られなくなっちまった。俺は中の状況は、わからねえが悲鳴と歌が聞こえて来て怖くて動けねえんだ。信じてくれよ!!」


いかずちの鳥籠により、出入りが出来ず討伐部隊は立ち往生していた。


「ねえ!あなた、今日ここに運ばれて来た子どもは何人なの!?答えなさいッ!!」


リコは、鬼気迫る勢いで見張りに問いかける。


「よ、4人だ。小僧が1人と娘が3人。身なりからして2人は貴族の令嬢だろう」

「へぇ〜、それはいいこと聞いた。君たち生きてることを後悔するレベルで潰させてもらうよ」


リコの後ろから禍々しい魔力を纏ったアレンが声をかける。優しい雰囲気を一切醸し出さず、ソルの怒ったときと同じ感覚にリコは陥った。


「ア、アレン?何をするつもりなの?」

「リコ姉さん、この結界を破壊します。ステラが直ぐそこにいるのが分かっているのに待ってるなんて性に合いません」


そういうとアレンは、腰にある剣に手を伸ばす。剣を鞘から抜こうとした瞬間、結界が消えた。アレンの眉が一瞬、動いたが次の瞬間には見張りの男の顎に一撃入れて沈めた。


「ふぅ〜〜。リコ姉さん、先生行きましょう」

「そうね、何があったか分からないから十分に気を付けて行きましょ。アレン、リコ、この先あなたたちは必ず2人で行動しなさい」

「わかりました。師匠」


3人を先頭に洞窟へと突入するのであった。

中に入った面々は、無残な地獄絵図を見て吐き気を覚えた。


「盗賊、全員のお尻から刺されて股間や心臓なんかを貫いてる。この魔法を使用した人間は異常な魔力操作を持ってる。僕以上かもしれない」

「それだけじゃないわ。この血、今吹き出したみたいに温かいわよ。全員、死んでるけど死後5分以内みたいだわ」

「うんうん、リコもアレンもいい線いってるわね。微かに聖属性の魔力を感じるわ。きっと土属性に聖属性の回復を付与したか混合魔法で殺さないようにしてたみたいね。鳥籠を消したときにこの回復系統も消したのね」


師匠は、弟子の考察を聞いて満足そうに返したが実際、この魔術師がでも4属性を有してると考えていた。そして、その者と対峙することがどれだけ危険かどう対峙するのが正解なのかと。


「リコ、アレン、ここから分かれ道は二手に分かれましょう。ワタシは右に行くからあなたたちは囚われた人たちを迎えに左に行きなさい。入り口でまた合流しましょ」

「「わかりました」」


そういうと師匠はウィンクをして去って行った。

アレンとリコは、魔力察知で多くの人がいる部屋までかけた。

部屋の前に着き、罠がないか確認したリコは勢いよく扉を開けて・・・・・・


「ソル!ライム!助けに・・・・・・何やってんの?」


ツッコむのであった。

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