第6話 ふざけるな
目が覚めたら暗くて冷たくて硬い場所に横たわってた。
ここはどこだ?
状況が理解出来ない。
手を縛られて首にヒヤリとした感触。
身体を起こして周りを見る。
鉄の柵があり、どうやらここは牢屋のようだ。
同じように手を縛られて首に首輪をした多くの子どもと女。
みんな見たことのあるいや、見慣れた目をしてる。人生に絶望してもうどうでもいいと思っている死んだ目を。
前世で鏡に映るたびに目を合わせていた俺と同じ目。
視界に見慣れた少女と綺麗な服装の青い瞳の銀髪美少女が映る。
「ライム・・・ここは?」
「ひくっ・・・ソル君!目が・・・ひくっ・・・覚めたんだね。うわぁぁぁん」
ライムは、我慢してたものが決壊したのか泣き始めた。
「私が説明する。私は、ステラ。ここは盗賊のアジトで私たちは捕らえられたの。そして何処かに売られるらしい。発育のいいお姉さんたちは盗賊の相手をさせられたりしてるらしい」
淡々と説明するステラ。
「ははっ、訳がわかんねえわ。じゃ〜あのお姉さんたちは、盗賊に犯されたって言うのかよ?」
「ええ、そうよ。そしてさっき、あなたたちが入れられるときにまた1人連れて行かれたわ」
ラノベとかでよくある盗賊テンプレか。
ここであの変態やイケメンが助けに来るってわけか。どうも主人公ぽさが満載なあのイケメンなら助けに来るだろうな。だけど、いつ来る?今日か?明日か?それともヒーローは、遅れて登場ってか?
ふざけるな
そんなの待ってられるかよ。
今も犯されてる人が、死にたいと思う人がいる。
きっと飽きれば殺されるんだろうな。
そんなの我慢ならねえ。
俺がどんなに死にたいと思っても死なないのに簡単に手の届く範囲で死なれるのは、胸糞悪い。
かと言って、こんなクズに殺されるのも我慢ならねえ。
「おい、お前。ロープ解けるか?腕だけでも自由になりたい。出来ないなら別の方法を考える」
「今は、隷属の首輪のせいで魔法もスキルも使えない」
そうなると何とかするしかないか。
俺は、立ち上がってステラに近付く。
「ひゃ!何するの!?」
「お前の縛ってるロープを噛み切る。くすぐったいだろうが少し我慢しろ」
ステラの手首のロープに噛み付く。
中々、硬くて切るのに時間がかかりそうだ。
ソルがギルドを出た後、リコはどうするか悩んでいた。
「あなたの弟は、中々頑固なところがあるみたいね」
「師匠・・・あの子は、ずっとあんな感じで人生を諦めた目をしてます。笑っていてもどこか寂しそうで叔母さん、あの子の母親が死んだとき、私が見つけるのが遅かったらあの子は餓死して死ぬところでした。でもそのときの目がどうしても忘れられないんです。死にそうになればなるほどあの子の目は、ギラギラして目の奥に鋭い眼光があって正直、怖いです。あの子に何かあったらあの子があの子じゃなくなるようなそんな感じがするんです」
リコは、胸の内を師匠に吐露する。
アレンがリコの肩に手を置く。
「リコ姉さん、彼は大丈夫ですよ。彼は、逆境になればなるほど力を発揮するタイプです。それにさっきの模擬戦、彼は本気でしてましたが全力ではなかったです。天才の僕が保証しますよ!彼は、こちら側の人間だ。僕と同種で目の前の理不尽ですら見逃しません」
リコは、先程の模擬戦を思い出す。
目の前の弟弟子をここまで追い詰めたのは、過去に1人もいなかった。むしろ、一合で終わらなかったことに驚いている。
身内で話しているうちに1人の血塗れの騎士が駆け込んでくる。不吉な報告が上がるのであった。
「アレン様、申し訳ありません。お嬢様が拐われました。護衛の騎士は私を除き、亡くなりました。本当に申し訳ありません」
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