第5話 ホモホモしい

何故こうなった?


俺は木刀を持ち、爽やかな笑みで俺を見る変態の弟子と相対する。


負ければ男しか愛せなくなる身体に魔改造されるに違いない。

それは社会的、精神的に死を意味するであろう。

ぜってぇ、負けられない戦いが今始まる。


「この模擬戦、本気で行かせてもらうからな。俺の貞操と精神衛生がかかってるし」

「ん〜、僕としては君の本気が見れて嬉しいかな。君にすごく興味があるからね」

「ひぃ!止めろ、ホモホモしい」


このイケメン、爽やかな笑みで何さらっと危ないこと言っちゃってんの!?

やっぱ、あの変態の弟子の男はホモホモしくなるの!?


「ホモホモしいって・・・ははっ。俄然、君と語り合いたくなって来たよ」

「コロス。その爽やかな顔をボコボコにしてやんよ!!」


アレンは、木刀を中段に構える。

俺は、木刀を下にさげ自然体に構える。

変態が近付いてきた。


「それじゃ〜始めるわよ〜〜ん。戦闘・・・・・・始め!」



「死にさらせぇぇぇ、イケメン!」


俺は開始早々、駆け出し下から斬りかかる。

速度も角度も申し分なく、木刀で防ぎに来ても弾く自信があった。

だが、アレンは後退しかわす。

俺は、空振った勢いのまま回転し連続で斬りかかる。

6度空振り、7度目でやっとせつばり合いになる。


「中々の斬撃だね。素人かと思ったけどそうでもないかな?」

「うるせえ。今にその顔にあざつくってやんよ」


そして、何度も応戦を繰り返す。


「正直、荒いけどここまで持つとは思わなかったよ。次の一撃で君を沈める」

「はぁ・・・はぁ・・・クソッタレが!沈むのはテメェだよ!」


アレンは、木刀を上段に構える。

俺は、左手で持った木刀を弓を引くように耳の横に持って来て木刀の剣先に右手を添える。


アレンは、一瞬目を見開き笑った。


「ははっ。楽しいな。いくぞぉぉぉ!」

「死にさらせぇぇぇ」


互いに駆け出し、アレンは上段切り、俺は突きを放つ。

俺は、アレンの木刀を右手でいなす。

突きはアレンの頬をかする。


すれ違い、俺は膝をついた。右腕に痛みが走る。

アレンは、ビックリした顔でこっちを向く。その頬から一筋の血が流れる。


「ははっ、どうやら引き分けのようだね。正直、木刀だけでここまで追い詰められるとは思わなかったよ」


俺は、その言葉を聞いてその場で大の字で寝転ぶ。


「クッソォ〜ぶちのめすつもりが頬に傷付けるだけかよ。お前、一体何もんだよ?」

「ん?天才かな。それを言ったら君もだろ?君は野生的で最後の突きはヤバかった」


クソ、何だよ。このイケメンチート野郎は。

コイツに勝ちてえ。


パチパチパチパチと変態が拍手する。


「も〜う〜胸が熱くなる試合だったわ。お姉さん、感動しちゃったわ。でも坊や。引き分けだから現状維持だけど私の指導、真面目に受けてみる気はない?アレンに勝ちたくない?」

「2、3日時間をくれ。強くなる為にあんたをするかどうか考えてえ」


俺は、真剣に考える。人を信じる気はないけどこの世界で楽しく生きる為にはやはり強さは必要だ。前世で喧嘩以外で武器の扱いは素人も同然。スキルがあるにしても理解を深めないことには意味がない気がする。

それに、負けっぱなしは趣味じゃねぇ。


「いいわ。3日後に孤児院を訪ねるわね。でも今日は来てよかったわ。なんせ才能の原石がも見つかるんだもの。ライムちゃんは、明日から指導開始するわね。アレンの妹が今晩こっちに着くから明日から一緒にやるわよ」

「はい!よろしくお願いします!」

「師匠、私も一から鍛え直して貰えないですか?」

「そうね、リコもアレンと考えた特訓でまだまだ伸ばせそうね。あなたも明日からでいいかしら?」

「是非、お願いします!」

「それじゃ〜、坊や。3日後に会いましょ。チュ♡」


その投げキッスが余計なんだよ、変態!!


「楽しみに待ってるよ。弟弟子」


そう言って拳を掲げるアレン。

俺は、その拳を払い除ける。


「うるせえ。次はぶっ潰す」

「あ、ちょっとソル!どこ行くのよ!?魔石は?」

「やっといて。金は適当にお菓子買って孤児院のチビたちに配っといて」


ぶっきらぼうに言い放って俺は、ギルドを後にする。いくあてもなく森に向かう。


「待ってよ、ソル君!」

「ついてくんなよ、ノロマ」

「一緒に修行しようよ!きっとあのお姉さんに教えてもらったら魔法、上手になるよ!」

「うるせえ、黙ってろ!考えるつってんだろうが!」


ライムの手を振り払って顔を見る。

怒った顔をして俺を見つめてくる。


ライムがはっとした顔をした。


ゴンッ


そこで俺は意識を失った。

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