第4話 ヤバいやつ
ギルドにある訓練施設。
新人冒険者やギルドでの揉め事の際に決闘などで使われる場所。
そこで俺はレックスさんと向き合っていた。
「ルールは、お前さんはなんでもありで俺はこの刃を潰した大剣のみ使う。戦闘不能もしくは降参のみで勝敗が決まるでいいな?」
「わかった。怪我しても知らないからね」
「ガハハハ、いい威勢だ。怪我しないようにすることだな、坊主。このコインが落ちたら始めな」
キィーン、心地良い音をさせてコインが宙を舞う。
落ちた瞬間、スタートダッシュを決める。
レックスさんの懐に入り顔面に拳を叩き込む。
・・・が、逆に叩き込まれ大の字で倒れる。
天井高いなぁ〜なんて思った。
「中々呆気なかったな。坊主、強くなれよ。ガハハハ」
高笑いを上げながらレックスさんは去っていった。
レックスは、ギルド内の通路を歩き奥の部屋まで歩いて来た。
部屋をノックしようとするが力尽きてドアにぶつかる。
そして、咳き込むと口から赤い物を吐き出した。
ドアが開き女性が顔を出す。
「ちょっとレックス!!どうしたのよ!?」
「すまん、上級以上のポーションくれ。折れたあばらが肺に刺さってるっぽい」
「すぐに持ってくるわ」
女性は部屋から特級ポーションを持って来てゆっくりレックスに飲ませた。
「かはぁ〜〜〜、助かったわ。後でポーション代払うわ」
「いいけど、あんたがそんなになったのなんで?」
「それがよぉ〜、リコが自慢してた弟を連れて来たから手合わせしたんだが、殴られそうになったから殴ったらピンポイントでいい1発貰っちまってよ。見事な捨身特攻だわ。ありゃ、怖いもの知らずだわ」
「あぁ〜、噂の彼ね。強いって言ってたけど本当なのね」
「ある程度技量がねえと、見抜けないレベルだな。俺もダメージ受けるまで拳がメインだと思ったが蹴りを身体で味わなかったら気付けてなかったかもな」
そう、あの一瞬。殴る直前にあばらに衝撃が来た。でなけりゃ、気付かないレベルの。
「あいつが模擬戦観てたからきっと声をかけるだろう。あいつ好みの原石だったしな」
「あぁ〜、あの変態ね。でも今は、公爵家の嫡男にご執着じゃなかったかしら」
「その跡取り様も来てたんだよ」
「師弟揃って才能の原石には目がない変態だものね」
ギルマスは苦笑いを浮かべて外を見る。
何事もなければいいけど。
ツンツン、ツンツン。
「ソル君そろそろ起きて〜」
ライムがどこからか持って来た木の棒で俺を突く。完璧なやられモブを演じてる俺に良いアクセントだ。後でお菓子を買ってやろう。
「ソル、そろそろ起きて行くわよ。あなたに会わせたい人もいるんだから」
「会わせたい人?」
誰だ?あれか!リコさんの冒険者仲間か!
まだ知らぬ美女との出会いか!
「ちょっといいかしら?坊や」
背後から声をかけられて振り向く。
なっ!?姿を見て絶句してしまう。
芳しいポージングを決め、モヒカン頭にレオタードのような服装。乳首には花のシールのような物を貼り付けた正真正銘のヤバい変態がいた。
「お姉さんの話、聞いてくれるかしら♡」
「ひぃ!ひ、人違いです」
その場から逃げようとしたがリコさんに腕を掴まれで逃げれなくなった。
「師匠!後で挨拶に伺おうと思ってたんです。それにその格好いい加減辞めてください。一緒にいる弟子たちが恥ずかしいんですからね?」
ギョッとした顔でリコさんを見つめる。
今、師匠って言った?この変態がリコさんの師匠!?
「リコさん、今までお世話になりました。本当の姉のように思っていました。俺は旅に出ます。シスターにもよろしく。じゃあ!」
俺は、片手を上げその場から逃げようともがくがリコさんとライムにガッチリホールドされた。
「は〜な〜せ〜。この手の人種はダメだ。俺のお尻の貞操が危ない」
「何バカなこと言ってんのよ。見かけだけ変態だけど指導は優秀なのよ」
「嘘だ!絶対嘘だ!!」
「あらあら、坊や。お姉ちゃんの言うことは聞かないと。それにしても見れば見るほどすごいわ。磨きがいのある原石ね。じゅるり」
「ひぃぃ!」
変態が舌舐めずりをする光景に思わず悲鳴をあげる。鳥肌も半端ない。
俺、従姉妹に売られてしまうのだろうか。
「クッ、殺せ!!俺は、そんな貶めに屈しないぞ!」
「そう、じゃあ〜遠慮なく。アレン!あなたの出番よ!」
「はい、先生」
アレンと呼ばれた少年が歩いてこちらに向かってくる。帽子を被り、端から綺麗な金髪。スカイブルーの瞳。完全にイケメンだ。
「これからこのアレンと木刀のみの模擬戦をしてもらうわね。アレンが勝てば大人しくあなたは私の弟子になってもらうわ。あなたが勝てば今まで通り自由よ」
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