第3話 カツアゲ
「それで、ソルバード。あなたは朝早くからどちらに行ってたのですか?」
俺は帰って早々、シスターに見つかり正座をさせられ、説教中。
「黙っていては分かりませんよ、ソルバード。こんなに朝早くに出て行くのではなく帰って来ると言うことはあなた、深夜に抜け出したのですね」
よし、どうにか誤魔化そう。
「月が綺麗だから木の上で眺めてたらいつの間にか寝てしまったんだ。それでさっき起きて寝直そうと思ったんだ。ごめんなさい、シスター」
「はぁ〜、夜空を観るのが好きだからって寝ないようにしなさい。風邪引いたらどうするのですか?」
このパターンは、説教もそこそこだな。しめたぞ!!
「おはようございます、シスター。どうしたんですか?こんな朝早くに」
悪魔が現れた。あかん、バレる。
孤児院の手伝いに来た悪魔もとい、リコがシスターに聞いた。
「リコレット、おはようございます。ソルバードが夜空を観ているうちに寝てしまってこっそり部屋に戻るところを見つけたのです」
「へぇ〜、そうなんですね」
リコと目が合い、ジト目で観察される。背中が冷や汗で濡れてくる。
「ソル、立ってそこでジャンプしなさい」
「ん?わかったよ」
言われたことがイマイチよくわからず言われた通りにする。
ジャンプした瞬間、嫌でも理解してしまった。
「ソル、ズボンのポケットに入っている物を出しなさい」
「別にいいだろ。石くらい集めるのは男のロマンだ」
「何、バカなこと言ってんの?出さないなら脱がしてでも取り上げるよ」
リコ姉の目がマジだ。これ、出さなかったら本気で脱がしてでも取り上げるやつやん。
古典的なカツアゲの手法に引っ掛かる俺も俺だけど。
リコは、右手を差し出して催促する。
俺は、渋々ポケットの中の石を渡す。
「はぁ〜〜〜、あんた何、危ないことしてんの!!これ、魔石じゃないの」
石を受け取ったリコさんから拳骨を貰った。
「祝福の儀を受けた日に単独で魔物の討伐をするとか前代未聞よ!?しかもこの数、無事だったからいいものの一歩間違えたら死んじゃうんだよ?わかってるの!?」
リコさんは、涙を流しながら俺を抱き締める。
「あなたは、私の唯一の血縁者で家族なのよ?無茶しないで。お願いだから。大切な人が居なくなるのはもうごめんなの」
シスターがそっとリコさんの肩に手を置く。
「リコレット、今日はお休みで結構です。そんな顔してると子どもたちが心配しますよ?ソルバード、あなたは罰として魔石の換金して講習を受けた後、当分外出を禁止します。孤児院の庭の畑が収穫出来るまで野菜のお世話をしなさい」
内容は、不服だけど頷く。
「シスター、リコさん、ごめん」
「今後もこんなことがあったら許さないからね。野菜が収穫出来るまで許してあげない」
「あらあら、でもリコレットの言うことも一理ありますね。心を入れ替えるのなら私は、許します」
しんみりした空気に若干気まずい。
パンッとシスターが手を打つ。
「さぁ、みんなを起こして朝ご飯にしましょう。ソルバードは、ご飯を食べたらリコレットと一緒に冒険者ギルドへ行ってきなさい」
「はぁ〜い」
朝食を取った後、リコさんと何故かライムと一緒に冒険者ギルドへ向かった。
「なんでライムもついてくるわけ?」
「ソル君だけリコお姉ちゃんとギルドに行くのはズルい!!」
「まぁ〜別に良いけど」
ギルドに着き中に入ると
「よぉ〜、リコ!今日は依頼受けないんじゃなかったのか?」
ガタイの良いおっさんが話しかけてきた。
「レックスさん、こんにちは。今日は、魔石の換金をしに来たのよ。紹介するわね、ソルバードとライム、私の自慢の弟と妹よ」
本当は従兄弟だけどね、まぁ〜弟みたいなものか。
「噂のチビたちか!俺はレックスってんだ。ときどき、リコと一緒に依頼を受けてんだ。よろしくな」
そう言ってレックスはニヤリと笑った。
うん、ちょっと怖い笑顔だなぁ。
「それじゃ〜私たちはこれで」
「ちょい待ち。坊主、せっかくだ。俺と手合わせしねえか?」
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