第3話 外側をなぞる

 外側をなぞる。

 そういう風にしないと危険なので、そうしている。

 雪から掘り出した物は最初は雪まみれ、外側に雪が貼り付いて凍結している。

 処理するかしないかを選択しなければならないのだが、雪を取り除き視認した時点で侵食が始まるので注意しなければならない。

 侵食は瞬時に行われ、負けると乗っ取られてしまう。

 経験上は乗っ取られても抗っていればどうにかなったりするのだが、初めて乗っ取られたときはもう駄目かと思った。慣れれば対処もそこそこ楽になるとはいえ、何度も味わいたくなる感覚ではない。

 外側をなぞる。ふわふわとなぞる。そうしていると再び雪が貼り付いて、雪の中に戻っていこうとする。

 誤って掘り出してしまった危険物を埋めるにはそうやって外側をなぞりながら意識を逸らしていけばいい。まあだいたいが危険物なのでそうすることになる。

 最近はわざわざ処理するのも億劫になってきて、機械が勝手に掘り出す物を埋めてばかりいる。

 一度作ってしまった機械を壊すわけにもいかないし、困ったなあどうしようかなあなんて思いつつもまあいいかと諦めている。

 機械も自分で作ったというよりは雪の中のものが作用して勝手に作り上げられたと言った方が正しいのか、ふらふらとしていたらいつの間にかできてしまっていたのだった。

 処理作業に邁進していた時期もあったが俺は不真面目になってしまったようだ。

 かといって掘り出されてくる物を放置するわけにもいかない。適切な手段を取って埋め戻さなければ勝手に解凍されてしまう。

 これ以上掘り出されてこないようにいっそ雪を全て融かしてしまおうかなんて思ったこともあるが、そんなことをしたら地上が危険物で溢れてしまうから駄目だ。

 しかしこんな作業をいつまでもするということもそれなりに不毛だと思うしで、どうすればいいのかよくわからない。

 わからないことだらけのこの世界でわからないことが一つや二つ増えてもどうということはないとは思うが、自分がこれからどうなるか、どうするかということがわからないというのは少々不安でもある。

 別にこのままでいたって困ることはない、億劫ではあるが、困ることはない。のだが、先述の通り、不毛だとは思う。

 認識災害に見舞われたこの地を復興するにはいったいどうすればいいのか。

 なんて考えてもこの世界に俺は一人きりなわけだし、助言なんてものももらえないのだからこのまま続けるしかない。

 外側をなぞって雪に埋もれさせて、みたいな毎日が続く。

 それは明日も。

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