第2話 雪に埋める
埋める、埋める、何を埋めるのか。
雪の上にあるものを埋めるのか。雪の中にあったものを埋め戻すのか。
それを認識することすら危険なそれは果たして認識災害、と呼ばれるものなのか、俺は知らない。そもそもこのまわりのことを知ろうとするのはひどく危うく、誰も雪には関わりたがらない。
誰も、って誰が?
俺以外に誰かがいるのか、っていないようでいるようで、それは「世間」と呼ばれるものなのか、それとも俺の想像の中の何かにすぎないのか、それすらわからない、わかってはいけないのか。
こんなことをいつまで続けるのか、雪を掘って、見つけて、処理して、凍結するか埋め戻すか、それをずっとやっている。
たまに忘れてぼーっとしているけれども正気に戻るとやっている、正気に戻らずともやっている。
誰に頼まれたわけでもない。ひょっとすると頼まれた可能性もあるが、それすら凍結されてしまって雪の下だ。
危うい、何が危ういのか、もうそれだって認識することが困難になって、雪はどんどん降り積もり、俺の何かを埋めてゆく。
雪は障害物、雪は災害、概念の雪もその性質を手放すことはなく。
美しいな、と眺めることすら危険なそれは毎日毎日たくさん積もる。
それでも天井が崩れないのはどこかで融けているからなのだろうか。認識の外。
とにもかくにも掘っている。毎日毎晩掘っている。果てしない作業は延々続き、冬は明けない、春は来ない。
今日も明日もそうして、そうして、「 」は雪の中。
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