秘密
茉莉花(じゃすみん)
序章 出会い
「あなたからは、なんだか温かい匂いがするわね」
「えっ……?」
昼下がりの寒空の下、公園のベンチであたたかいおしるこをふーふーしながら飲んでいると。
明るいショートカットの髪を揺らし、快活に笑う見知らぬ女性が目の前に立っていた。
(温かい匂いって何……?)
キョトンとしている顔が目に入ったのか、その女性はクスリと笑う。
「ごめんごめん。初めましてなのにこんなことを言って。よく言われるのよね、お前は脈絡なく変なことを言う、ってね」
「はぁ……」
「あたしは佐藤 麻衣(まい)。あなたは加藤累(かさね)ちゃんよね?」
心臓が一瞬、止まってしまうかと思った。
「どうしてあなたは、私の名前を知ってるんですか?」
知らない人に名前を知られていたから、思わず身構えてしまう。
強ばった顔に気が付いたのか、麻衣さんは真面目な顔をして私に話しかける。
「あたしはね、あなたに会いに来たのよ、累ちゃん」
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
ーー出会った瞬間に、終わりが始まっていたのだと。
それ知った時には、もう手遅れだった。
秘密 茉莉花(じゃすみん) @maturikaJ
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