第十五夜:半分こする双子百合
『ハーフ・アンド』
私の双子の妹は、半分こが好きだった。たとえば、おやつに同じ味のドーナツが二つ用意されたとしよう。普通なら一個ずつ食べれば平等だ。けれど妹はドーナツをそれぞれ二つに割って、それを半分ずつ分ける。半分を二個ずつ食べるのだからこれも平等ではあるけれど、不要な工程がひとつ増えただけではないだろうか? けれども両手の半ドーナツを頬張る妹は幸せそうで、文句を言う気にはとてもなれない。
嬉しいことが半分こなら、辛いことだって半分こだった。私に何か嫌なことがあった日を、妹は敏感に察知する。そして二つ並びのベッドの上で話を聞いて、私が泣いたら一緒に泣いてくれる。だから私も妹に従う。ちょっとした表情の変化や食欲の差異を見つけ出し、異変があったら話を聞いてやる。とはいえ二人とも、自分から率先して悩みを打ち明けることはしなかった。半分ことは、与える側がリードするものだから。
そんなある日、妹は大いなる力に目覚めて世界を支配する。魔王城と化した元自宅のあるマンションに出向いて、私は妹を止めにかかった。私は勇者じゃないから、伝説の剣も盾も持っていない。丸腰の私を迎え入れて妹は笑う。
「世界の半分、お姉ちゃんにあげるね」
私は妹を抱きしめる。その半分を貰うことで半分を与える。あなたが犯した罪半分、せめて私が一緒に背負おう。
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