第十四夜:お嬢様と護衛者の百合
『いずれは、共に生きなさい』
お嬢様に促され、私は食事の席に着く。長いテーブルの末席に座り、それから天井に向かってナイフを投げた。うぐ、と短い呻き声がして、尻にナイフを刺した刺客が降ってくる。私は椅子を降りてから床を強く蹴って跳び、机の上空で暗殺者をキャッチした。着地と同時に四肢の関節を外し、窓から木の上に放り投げる。
その間お嬢様は微動だにせず、優雅に茶碗蒸しを食べていた。
「ご苦労、護衛者。でもね、いま不埒者を受け止めた木は庭師の手入れした大切な一本よ。不埒者を放り投げたいならば、きちんと場所を選びなさい」
そう注意されてしまったので、私は窓の外に刺客を投げ捨てる用の防護ネットを張る。私が刺客を始末して窓から投げるたび、お嬢様は嬉しそうだ。
「ねえ護衛者。屋敷は広いから一人で歩くのは危険でしょう。共に歩きなさい」
「ねえ護衛者。お風呂に不埒者が潜んでいるかもしれないわ。共に入りなさい」
「ねえ護衛者。寝込みを襲われたらどうするの。私のベッドで共に眠りなさい」
お嬢様の命令に従い、私はお嬢様と共に居る。美しいお嬢様の傍に仕えるのは光栄だけど、本人は少し迷惑かもしれない。刺客が来なくなれば解雇される契約だし。
「毎日毎日、不埒者ばかり。ふふ、本当にうんざりね」
お嬢様は楽しそうに笑う。ところで刺客は誰が雇っているのだろう。見当もつかない。
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