第十六夜:なんか宇宙人の彼女できる百合

『未知との配偶』




 流れ星に「彼女欲しい」とお願いしたら、宇宙人が現れて草。いや笑ってる場合じゃない。通学路の曲がり角でぶつかった私の彼女予定生物は、ゲル状だったので派手に爆発四散した。そのタイミングで一筋の流れ星が空を横切って、私は願いが叶ったことを悟ったのだ。彼女は私が助けるまでもなく再生し、十七本ある触手のうち五本を私の左手の指それぞれにくっつける。なるほどそれが友好の証か。


 そりゃ星に願ったらスペースワイドな彼女がくるよなーと、自分を無理に納得させる。とんだ出会い系サービスだ。私はとりあえず彼女を自分の部屋に匿って共に暮らす。


 最初はうまくいく気がしなかったけれど、案外すぐに慣れてしまった。彼女は月光から養分を摂っているらしく、夜中に二人で散歩に出ることが増えた。私に辛い事があって泣いていると、彼女は涙を触手で吸い取って緑の霧に変えてくれる。それから容姿には多少融通がきくようで、だんだんと人間チックな形を取るようになった。ニュースに出てくる3D人間みたいだ。その気遣いがなんかすごく嬉しい。


 だけど、言葉だけがわからない。二人して色々話しかけているけれど、使っている言語がまるで違うのだ。私たちは通じ合っている気になっているだけかもしれない。


 けれどもたまに、知らない音の羅列の中に「あいしてる」を見つける瞬間がある。私がそれに「私も」と答えると、彼女は頭の上から小さな泡をぽこぽこ昇らせる。

 




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