第十二夜:遊び人と過ごす終末百合
『世界の終わりに君と居る言い訳』
遊び人は言い訳を作るのが上手かった。初めてホテルに連れ込まれた時からずっとそうだった。「遊び人が酔っていたから」介抱しようとした私は「女同士だから」大して抵抗なくホテルへと入り「酒の勢いでうっかり」関係を持った。本当は全部理性的で、あの夜与えられた熱量のすべてを覚えてる。けど、遊び人は私のための言い訳をきっちり用意している。全部自分が悪いことにして、それでも遊び人は楽しそうだ。
単純なセフレという訳ではなかったと思う。私がなんとなく大学をサボりたかった日は、「失恋した友人を励ますために」と頼まれて一緒に海まで出掛けた。遊び人は基本ワンナイトをバラ売りにしてるから、特定の誰かと恋仲になることはない。あの失恋は嘘なのだ。けど嬉しくて指摘できなかった。結局その夜は別の女のとこに行かれたけど、浜辺で渡された白い貝殻は捨てられないままでいる。
そんな遊び人だからこそ、私にチェーンソーを捨てさせたのだろう。人類があらかたゾンビになった世界で、遊び人は私をホテルに連れ込む。思い出の一室に手頃な武器は無く、ベッドで作ったバリケードを破られたらおしまいだ。「まだ分からへんやろ?」遊び人は笑う。「噛み痕いっぱい付けとったら、感染済みやと思ってくれるかもしらん」
なるほど、悪くない言い訳だった。けれど、白い貝殻のブローチをずらして落とされたキスは、蕩かすように優しくて困る。
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