第十一夜:友人がドラゴンかもしれない百合

『せめて一緒に空が飛べたら』



 最近街に現れる破壊のドラゴンが、友人かもしれない。最初はこれといった根拠はなかった。なんとなく顔つきが似てるなー程度だ。目元のすっきりした感じとか、色白なところとか。とはいえドラゴンはブレスひとつで家を吹き飛ばす邪悪存在で、温厚な友人とは似ても似つかない。


 ドラゴンは頑強な鱗を持っているから、通常兵器が効きづらかった。けれどすぐに対応がなされ、ついに竜鱗を貫通する大砲が開発される。空に帰るドラゴンの後ろ足に砲弾が直撃した次の日、友人は膝に青アザを作って登校してきた。嘘だろ。


 アザの由来を尋ねると、「ぶつけちゃった」と笑われた。そうそう、君はドジっ子だった。ファミレスで勉強しようって集まって結局駄弁るだけで終わって、クレーンゲームでムキになってバイト代スりながらぬいぐるみ二つ取って。そんな友人とドラゴンは結びつかない。そう思いたいのに、ある日クラスの男子の家が吹き飛ぶ。私の悪口を言ってたやつの家だ。けどドラゴンは友人じゃない。友人じゃないよ。


 そして今日、ついにドラゴンは討伐された。全国ネットのニュースの中で、ある奇妙な情報が流れる。ドラゴンはその牙のひとつに、水色のクマのぬいぐるみのタグを引っ掛けていたらしいのだ。私はピンクのクマを潰れるほどに抱きしめながら着信音を鳴らし続ける。友人はまだ電話に出ない。

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