【第三の殺人殺し節】
富士山を望む、宿場町の一つに、極悪な若者の集団がいた。
特攻服に身を包んだ、その若者グループは我が物顔で人々の生活を脅かし若者グループに怨みを抱く者も多かった──そんな町に、ある日ふらっと奇妙な連中が現れた。
夜の河原で一斗缶の火を車座になって、ひっくり返した採集コンテナを椅子がわりにして座り囲み、酒を飲んでいる特攻服の極悪な若者グループ
の一人が言った。
「あのカップル、ドラム缶の中で抱き合って。流し込んだ生コンの中から首出して最後はヒーヒー泣きわめいていたな……笑える」
ピンクの特攻服を着た女が缶ビールを飲みながら言った。
「つまんねぇ女だったな、今ごろは元カレにドラム缶の中で抱かれて海の底か……あはははっ」
ネット上で目をつけた男女のカップルを巧妙な策略で別れさせ、握った弱みで恫喝して追い詰め、最終的に会社の金にまで手をつけさせて奪った若者グループ。
男女が警察に自首をすると言ったので……コンクリート詰めにして海中に沈め殺した極悪非道な連中だった。
ピンク特攻服の女が立ち上がって言った。
「近くの酒屋の自販機で、酒のツマミでも買ってくる……あはははっ」
酔っぱらった女は、ふらつく足取りで川原から、少し離れた場所にある自販機に向かう。
時半の自販機の明かりと街灯だけが照らす暗い道、ツマミのさきイカを買ってもどろうとしていた女の背後に、暗闇から現れた若い男の手が女の口をふさぐ。
「ふぐぅぅ!?」
女は酒屋のガラス戸に、背後に立つ黒い衣服を着た男の姿を見た。
女の口を押さえた男が耳元で囁く。
「どうだい、自分の死に顔を見る気分は」
男は小型の花火のような爆弾を着火させると、女の頬を左右から押さえて口を開かせ。
口の中に火がついた花火爆弾を放り込んで女の口を手で押さえる。
ゴクッという音が聞こえ、女は爆弾を呑み込む。
腹の皮は破けずに腹が爆発で光り、女の内臓が爆弾でグヂャグヂャになる。
男が女の口から、手をどけると女は口から。
「ぶふっ」という声と一緒に白い煙を出して倒れ……爆発で内臓が破裂した女は死んだ。
ツマミを買いに行った、ピンク特攻服の女の帰りが遅いコトに、残っている三人の男のうち一人が立ち上がる。
「あいつ、どこまでツマミを買いに行ったんだ?」
「ションベンでも、しているんじゃねぇか」
「やばっ、オレもションベンしたくなってきた」
三人のうち尿意をもよおした一人の男が、河原の
女は、放尿をしている男に気づかれないようにビンに入った液体を口に含む。
女が口に含んだ液体は飲み物では無かった。
特攻服の男が放尿を済ませ、振り返った瞬間。
女は着火したライターの炎に向かって、口に含んだ液体を吹きかけた。
女の口から出た炎が男の体を包む。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!」
人間火炎放射器に焼かれた男は、火ダルマになって死んだ。
最後に残っていた二人の男が耳を澄ます。
「今、悲鳴みたいなの聞こえなかったか?」
二人の前に、咄家のような風貌の男が、さきイカが入ったパッケージ袋を持って現れた。
にこやかな笑みを浮かべる中年男が、訝る特攻服の男二人に向かって言った。
「お今晩は、さっきそこでピンク色の特攻服を着ていたお嬢さんに頼まれまして、用事ができて先に行くところができたので……この、さきイカを代わりに渡してくれと」
「先に行くところ? あいつ、どこに行ったんだ」
「あの世だよ」
「なにっ!?」
咄家風な男の唇が声を出さずに動く、悪党が反応する『催眠術』
男二人の手から、ビールが入った缶が地面に落ちる。
催眠状態に落とされた特攻服男たちには、暗闇の中に浮かぶ咄家風な男の真っ赤な唇だけが見えていて、男の言葉だけが聞こえていた。
「おまえたちは、今からニワトリだ……トリだから空も飛べる」
立ち上がった男たちは、ニワトリような動きをして歩き回った。
「コッコッコッココ」
「コッコッコッ」
仕事人の催眠話術男が、河原に河川工事で置かれている高いクレーン重機を指差して言った。
「あの高い、クレーンの先から飛び降りれば、きっと飛べるよ……さあ、登って、あそこから飛び降りるんだよ」
催眠術にかかった、特攻服の男二人は「コッコッコッ」言いながらクレーンをよじ登る。
「さあ、飛べ! 一番高いところから」
「コッコッコッ……コッコッ」
建物の三階以上の高さがあるクレーンの先端まで登った男二人は、そのまま地面に頭から飛び降りて……死んだ。
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