【第二の殺人殺し節】

 とある、東海道の宿場町には、単身赴任している会社員をぼったくりバーに誘い込み、さらに非合法なギャンブルや 美人局つつもたせの女を使って単身赴任者の家庭まで崩壊させる悪党がいた。


 悪党に抗議しようとしていた単身赴任の男性が、家族へ贈るプレゼントを買って深夜の人通りが少ない道を歩いている時に暴走してきた自動車に跳ねられ死亡して。

 轢き逃げした犯人も、悪党の策略でハメられた借金を苦にして自殺してから数週間後──宿場町に、ふらっと奇妙な連中が現れた。


〔殺しの道具は現地調達〕

 暴力団の組事務所に忍び込む、ひょうひょうとした風貌の目が細い中肉中背の関西弁の男がいた。

 男は、慣れた手つきで組事務所の金庫を開けると、中にあった 拳銃チャカを手にする。

「ええ、チャカや……ちょっと貸してもらいまっせ、後でちゃんと返しますからに」

 関西弁の男は、そのまま拳銃を持って。悪党がいる対立している組事務所に向かって……ターゲットの悪党を射殺してから、なに食わぬ顔で拳銃を元の組事務所金庫にもどした。


〔殺人道具は……ポリバケツ?〕

 関西弁の男が、組事務所から出てきた男を射殺した直後──事務所にいた、悪党の兄貴分の男と子分の男が、椅子から立ち上がった。

 兄貴分の男が言った。

「今、拳銃の音が聞こえたぞ! ちょっと見てこい!」

 子分の男が階段を降りたところを、物陰で待ち構えていた男が子分の頭に青いポリバケツを被せた。

「うわぁ!? な、なんだ?」

 ポリバケツを被せた男は、すかさずポリバケツから伸びたワイヤーを引く。

 特殊な素材で編まれ、形状記憶合金が入れられているポリバケツが……グシャと横や縦に縮み、男の頭蓋骨を粉砕した。

「ぐぇぇ」

 元の状態にもどったポリバケツを外すと、なぜか頭の形を保ったまま、縮んだポリバケツの蛇腹線を顔に残した男は……絶命していた。


〔殺しの道具は、ひと抱えの自然石?〕

 様子を見に行かせた子分がなかなか、もどってこないのに業を煮やした兄貴分の男が、部屋から出てくると廊下に奇妙な男がいた。

 壁に置いたひと抱えほどの自然石を撫でている男に、兄貴分の悪党の男は凄む。

「なにしてやがる、そこで? どこから入ってきた!」

 石を撫でている男は、兄貴分の男の質問を無視して話す。

「いい自然石でしょう、あなたの墓石にピッタリですね」

「なにっ!?」

「もっと近くで見てみますか……ほれっ、受け取ってください」

 奇妙な男は、常人離れした力で軽々と自然石を抱え上げると悪党に向かって放り投げた。

 軽々と投げられた石を思わず抱え受けてしまった、男の体が石の重さに耐えきれず後方の窓ガラスを突き破って転落する。

「うわぁぁぁ! ぐふっ!」

 悪党の男は自然石を抱えた格好のまま、路上に落ちて死んだ。

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