必殺仕●人パラレル殺人事件

楠本恵士

【第一の殺人殺し節】

 とある、金持ちの屋敷の中庭──男の悲痛な哀願の声が聞こえていた。

「あんたのせいだ! オレの娘はあんたの配下のサラ金融に騙されて、首を括らされたんだ! 娘を返せ!」

 数人の男たちを連れた、屋敷の主は蔑んだ目で、足にしがみついてくる初老男性を蹴っ飛ばす。

 蹴られて倒された初老男性を嘲笑いながら足蹴りする、部下の男たち。

 葉巻をふかしながら、頬に傷がある悪徳商人の男が言った。

「おまえの娘は、自分の意思でサラ金から大金を借りて、払えなくて首を吊ったんだ……言いがかりはやめてもらおうか」

 蹴られて頭から血を流している、初老の男が悪徳商人を睨みながら言った。

「警察におまえたちがやっているコトを、洗いざらい伝えてやる!」

「はははっ、やれるもんならやってみろ……警察は動きはしねぇ、その前におまえはここで腹いせに毒を飲んで死ぬんだからな」

 初老男性の口が、男たちの手で無理矢理こじあけられて、劇薬が入ったカプセルが初老男性の口に押し込まれる。

 男たちはヘラヘラ笑いながら、嫌がる初老男性の口にペットボトルの水を流し込んだ。

 首を振って抵抗する初老男性。

「ふぐぅぅぅ!?」

 葉巻の煙を空に向かって吐きながら、悪徳商人が蔑んだ口調で言った。

「自殺した娘に逆恨みした父親が、勝手に毒を飲んで死ぬ。世間ではよくある話しだ、あの世で死んだ娘と再会しな」

 カプセルを飲まされた初老男性が胸を掻きむしって、地面をのたうち回る。

「あがぁぁ! ぐぁぁぁ! ごあぁぁ!」

 口と鼻から血を流して死んだ初老男性を、眺めて笑う男たち。

「ジジィ、死にましたぜどうしますか?」

「屋敷の使われていない古井戸にでも、放り込んでおけ」

「わかりました」

 数人の男たちが、初老男性の遺体を屋敷裏の古井戸まで運び、井戸の中に放り込まれた。

 悪徳商人が一人だけになったのを見計らって、それまで物陰に隠れて一部始終を見ていた。

 年配の家政婦女性が、うつむき加減で悪徳商人に近づいてきて言った。


「旦那さま、何か落ちましたよ」

「んっ?」

 足元を見る悪徳商人。

「何も落ちていないぞ」

「いいえ、これから落とすんですよ」

 顔を上げた家政婦の手には、短刀が握られていた。

 淡々とした口調で家政婦が言った。

「命をさ」

 悪徳商人の体に短刀の刃をねじ込む家政婦。

「ぐあぁぁぁ!」

 表情を変えずに、おばさんの家政婦は短刀を一回転させて、刺した傷口を広げる体内に大量出血させる。

「がはぁぁぁ!」

「地獄で閻魔さまが待っているよ」

 短刀が引き抜かれ、絶命する悪徳商人。


 少し離れた屋敷の庭では、初老男性の死体を井戸に放り込んだ男たちの一人が、怪力の大女に殴り殺され。

 残りの二人の男も、跳躍の身体能力が異様に高い。

 超常現象研究家の男に二人まとめて、尖った棒で串刺しにされていた。

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