□空き容器などのゴミの山

──弁当箱の空き容器やペットボトルなど、ゴミが不自然に集められて山になっていた。

 まるで中に何かを隠しているかのような──人為的に作られたゴミ溜まりがあった。


 私は躊躇したものだが、何かあるかもしれないと手を伸ばすことにした。

 暗闇の中では──気付かなかっただけかもしれないが──なかったものである。

 その後に、誰かが設置したものなのだろう。


 罠が仕掛けられている可能性もあったが、私は慎重にゴミの山の中に手を入れて探った。


「……痛っ!?」


 何かがチクリと指先に刺さったので、咄嗟に私はそこから腕を引き抜いた。

 痛みを感じた部分を見ると──人差し指から血が出ていた。

「なんか刺さったみたい……」

 針でも隠されていたのだろうか。

 結構深く刺さってしまったみたいで、指先から血がポタポタと流れて止まらない。


 さすがに止血しなければ──。

 私は指先を口に運んだ。指先を舐めて、血を止めることにしたのだ。


──チュウ……チュウ、チュウ……。

 果たして、これで本当に止まるだろうか。

 それは分からないが、流血しているよりかはマシであろう。


──チュウ……チュウ、チュウ……。

「……ウッ!」


 すると、なにやら胃の奥底から込み上げてきた。

──オエッ!

 私が吐き出したのは──血反吐だ。


──なんだ、これ──?

 胸が苦しくなって、呼吸もまともに出来なくなった。私は自分の身に起きていることが理解できなかった。それまでは健康体であったのに、突如、病に犯されてしまった。

 頭がクラクラしてきて、体を起こしていることが出来なくなった。床に倒れると、体が勝手に痙攣をし始めた。


──毒?

 頭に浮かんだのはそのワードであった。

 毒針でも触ってしまったのだろうか。


──大丈夫だ。

 少し安静にしていれば──体が働いて中和してくれるはずだ。

 そう楽観的に考えていた私の頭の中も、何時しか真っ白になってしまう。苦しさから何も考えることが出来なくなった。


 そして、私の穴という穴──鼻や耳、涙腺などから血が流れ、その時になってはもう止めることすら出来なくなっていた。

 私の周りに血の池が出来る。

 ところが、顔が血に浸っても私は目を閉じることすら出来なくなっていた。


 何故なら、私は既に絶命していたからである。

 血溜まりの中──私はそのまま息を引き取った。

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