第6話作戦会議と理由
俺とゆうかはどうすべきなのか迷った。命を狙っている者を特定することが必要であると考え、大統領が言った『こもりさんの様な人間』とはどのような人間を指すのかを特定又は推測することにした。まず最初に俺という人間を定義することで『こもりさんの様な人間』を推測することが可能だと考えたが、俺の定義が難しかった。
夢野こもりの要素は以下のようである。
1.ひきこもりであること
2.正夢をみる能力を持っていること
3.祖父と二人暮らしであること
この3点を書き出した紙をゆうかに目の前に提示されたのだが、これを見ると俺は薄っぺらい人間だと言われているような気がする。
「もっとあるだろう」
「……ない」
ここで言い返すことが出来たらいいのだが言い返すことが難しく、男であるとか高校生であるぐらいしか思いつかない。
「これじゃあわからないね」
「……まあ」
俺がこれまでの借りを返すよ、なんて強く言ったのになんとも情けない。
「じゃあさ、もしかしたら2番が関係あるんじゃないのかな?」
ゆうかが言う通り、俺の最大の特徴と言えば正夢をみることだろう。といっても大統領が告げた人の死が現実化するのだから、予知能力ともいえる。これまで76人の死を俺は予知してきた。子供の頃に通った駄菓子屋のばあちゃん、見たことも会ったこともない成金のお兄さんなど予知のターゲットはバラバラで、彼らの死に様も様々だった。持病が悪化してベッドの上でたくさんの人間に囲まれて幸せそうに死んでいく者や車に轢かれて本人が意識をせず急に死んでしまう者など最期の迎え方も76通りであった。もちろんそれらの予知を受けて死を阻もうと何度もしたが未来は変わらなかった。事故死する未来がみえた男の進行妨害を何度もして予定とは違う道にいかせるようにしても、結局は車と車の衝突事故が起きてしまった。防ごうと幾重に工夫しても『死』を超えることはできなかったのだ。そして俺はいつの間にか未来に抗うことをやめた。絶望するぐらいなら希望を最初から持たない方がいい。だから人と関わらないようにしていつの間にかクラスの人間と喋らなくなり、そして学校も行かなくなった。さらに人と関わりを持つことを防ぐため家から、自分の部屋から極力出ないようになった。そう思っていた。
「じゃあ私の命を狙う人は何か能力を持っている人と考えたらいいんじゃないかな?」
ゆうかはもう吹っ切れたようで当たり前といわんばかりに俺に言った。
「そうか……」俺の中で糸がプッツンと切れた音がした。俺は多くの人間の死を見てきていつか来るかもしれないゆうかの死亡宣告が怖くて、逃げていただけなんだ。
「じゃあその線でさらに詳しく考えよう」
俺は逃げない。
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