第3話夢の話②
ゆうかが目の前に座っている。朝早いにも関わらず、フリルまみれのピンク色の服を着て肩まで伸びる髪もウェーブがかかり気合い十分の格好だ。
「こもりがこんな時間に起きているってことは夢みたんだね」
核心を疲れて思わず下を向いてしまう。
「それでどんな内容だったの?」
ゆうかはいつも通りの屈託のない笑顔を俺に向ける。
俺は自分が体験した夢の話をした。これまで通り気づいたら向こうの世界にいて見渡す限りのビルに囲まれていて、ビルの隙間から現れた墨田のおじさんの屋台でタダメシを食べたこと。
「それで今回はどんなショーが行われたの?」
暑い。人々がすし詰め状態で立っているからだろう。パーソナルスペースなんてお構いなしのゼロ距離だ。そんな人々が直径何十メートルの円状になって柵に手をかけたりして、下を嬉しそうに眺めている。と思うと、隣の青年のように若そうに見える人間は『見たくない見たくない』と言っている者もいる。この階には百人など優に超えるであろう数の人がおり、この部屋に入るときに開けた重いドアには『ここは3F』と書かれた金属製と思われるプレートが貼られていたから、1階や2階にもこんなお洒落な人々がウジャウジャといるのだろう。みんなやけにお洒落な格好の服装だ。俺の白Tシャツが目立ってしまう。しかし下の階にいるであろうお洒落軍団の姿は柵から頭を出しても見えない。柵や手すりすら見えない。しかし声らしきものは聞こえるのだから存在するのは間違いない。
ピンポンパンポーン‼
ざわついた3階に軽いチャイム音が聞こえる。するとまわりの人間達は急に黙って直立不動状態になる。
ばーん!と上の方から破裂音がすると軍隊のように一斉に皆が下を見る。2階や1階でもなく更に下にあるホールを見ている。そこにゆっくりと1人の人間が歩いてきた。あらゆる方向からスポットライトが当てられたホールのど真ん中に立っている。柵に手をかけ顔をよく見ようと前のめりになると顔がよくわかった。こっちの世界に来てパネルに自分の顔を大きく映し、我が物顔だった男、大統領だ。
「では皆さん始めましょう」
大統領の言葉が発せられると拍手でタワーが揺れた。大統領は胸に手をあてて大きくお辞儀をする。
「今日のショー参加者はこの方です!!ご覧ください」
大統領が勢いよく左手をかかげるとホールにあてられていたスポットライトは大統領の頭上にスライドする。
ゆうかは檻の中にいた。
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