第2話夢を覚えているということは…

スヌーズ音がけたたましく鳴っている。

うるせいな、うるせいな。

目を開けると黒色の天井。なのに頭上から小さな光を感じ、光の方向を見るとスマートフォンの画面が光っていた。スマートフォンを手にとると時間はAM7:07。タイマー設定はしていないはずだったのが……。


 シャーーー。             


 光が飛び込んできた。眩しい。こんな時間に浴びると体が起きたような気がするし、テレビでも自然光は体のタイマーを正常にするには有効だと自称専門家が言っていた。だから早起きすることはいいのだが、自然と起きるのは夢を覚えているときだけだ。男に指示された赤いタワーに足を進める夢。そして夢の最後では……。

 今回ショーに出てきた人間は大統領と名乗る男と1人の女。彼女はいくつかのゲームに参加していて、そしてその女の顔には見覚えがあった。              

 俺は覚えている夢が間違いであってくれと無茶なことを思いながら自分の部屋を出た。      

「じいちゃんおはよう。そう?」どうやら寝癖がひどいようで、朝食を作っていたおじいちゃんからしたらまずは洗面所に行くべきらしい。じいちゃんはほとんどもう頭にないから。一瞬そんな言葉が出そうになったが、実際に鏡の前に立つと言い返すのは間違っていることがわかった。ワックスでお洒落に決め込んだとも捉えかねられない程の髪型だ。ワックスを覚えたての中学生。髪を濡らして席に着くと家族分の料理は出来ていた。2つの目玉焼き。2杯の味噌汁。

 「いただきます」

「学校にそろそろいかないのか」「行かないよ」「そうか」「夏休みあけてもね」「そうか」

 俺とじいちゃんは対面で座りながらテレビを見る。専門家とか芸能人とか名乗る人達が画面上で語っている。どうやら政治家が法律に違反するであろう事件を起こしたらしい。悪いのは政治家のはずなのに、テレビ画面に映る彼らの意見は正しいことを言っているようでどこかふわふわしている。じいちゃんが言った「どうせ秘書が罪を被って終わりだよ」という言葉の方がわかりやすいものだ。やっぱり政治家も人間なのか。心にストッンと納得がいく。責任を取るのはできるだけ避けたいのだろう。

                     ピンポーン!

朝早い時間に家のチャイムを鳴らす非常識はあいつしかいない。そして目的は分かっている。

「来たならご飯作ろうか?」

「いいよ。すぐ帰すし」 

急いで廊下を抜け、ガチャガチャと揺らされる扉を開けると彼女がいた。30分程前に見たショーに出ていた女、ゆうかだった。

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