第41話 決起会(敵側)後編
「ではこれより今回の作戦内容を伝える。今回の作戦は奇襲作戦だ。シュリ殿から魔王軍へ嘘の侵攻情報を流してもらい、その情報に食いついた魔王軍を我が国の騎士団と魔法師団で足止め兼殲滅を行う。その間に勇者殿達と冒険者諸君、近衛騎士達は魔王軍の幹部を含む魔人族達の撃破及び、魔王内に人類の拠点を作るための侵攻を行ってもらう。以上が今回の作戦内容だ。それで先ず魔王軍の幹部についてだ。シュリ殿からの情報によると、魔王軍にはグリオスと呼ばれる7つの部隊があり、その部隊長と最近参謀になった人間が幹部だそうだ」
「ゼム殿、人間が幹部というのはどういう事なのですか?」
「なんでも魔王直々に任命されたからだそうだ」
「ゼム様の説明に付け加えると、その人間は勇者様であるカノン様達と一緒に召喚された人間です。魔王領までの道中と魔王ベルゼからの任務の成果が想像以上だったからという理由で人間、ユキ・ヤガミは魔王軍の参謀になりました」
「な、なるほど…」
「アハハハ!!それマジなの?」
「元魔王軍である彼女が言っているんだから本当なのでしょうね」
「あの指名手配されている人間か…」
「やっぱ、あの祟り神はあの時殺しとけば良かったな」
「禿同」
「あの祟り神を殺すのは私の役目ですからね」
ゼムとかいうやつから作戦が語られ始めた。やはりと言うべきか、魔王軍の内情はシュリを通して筒抜けになっているようだな。
冒険者や兵士は人間の俺が魔王軍の参謀になった事について、驚いてるやつ、嘲笑してるやつ半分ずつってところか?元クラスメイト共は殺意全開と……まぁ、どうせ殺す殺す言っていても、実際に殺すのは兵士か冒険者に頼むのだろうけどな。
それで、こいつらの考える作戦は予想通り奇襲作戦か。まぁ、こういう場合はそれが妥当だな。
「…続けても良いか?」
「申し訳ございません。続けて下さい」
「分かった。それで、今回討つ魔王軍の幹部は件の参謀の人間とシュリ殿が所属していた部隊の隊長であるリース・ルクリナ。それと、グリオス隊隊長をもう1人である。もし可能であれば魔王軍最強とも呼ばれている、バルバ・アヴァリティアも討てればと考えている」
「あのバルバ・アヴァリティアか………」
「最近の我々の進軍を悉く防いでいる魔王軍幹部ですね」
「ヤツは勇者様と二つ名持ちの冒険者達全員で相手しなければ勝てないであろうな」
バルバ1人で、不知火と冒険者を抑えられる。これは良いことを聞いたな。だとすると、バルバにフォールとデモンの2人を加えれば恐らく、完全に抑えられるはずだな。まぁ、万が一に備えて、ルーチとベルフを待機させておくか…
「そして、拠点侵攻は我が国の近衛騎士とシュリ殿を中心に行ってもらう」
「はっ!了解いたしました!」
「ウチに任せといて」
「より詳細な情報は後日伝える。各々、作戦に向けて準備を怠らないようにしておくのだ。最後に、決行日を国王様よりお伝えする!」
「うむ、ゼムよ説明ご苦労であった。では、本作戦の決行日を伝えよう」
いよいよ決行日か……
「決行日は本日より5日後である!」
「「「おおおおーーーー!!!!」」」
5日後……この場を脱出したらバルバ達に報告だな。
「以上で決起会は終わりだ。近衛騎士隊隊長デュナス以外は退室してくれ」
ゼムの解散宣言後、次々と冒険者や近衛兵、貴族達が次々と退室していく。
「【そろそろ俺達も脱出するぞ】」
「【分かったわ。国王達の会話は聞かなくていいの?】」
「【聞いていくが、直ぐに脱出できる状態で聞く】」
「【そういう事ね】」
レイリスを下へ先に降ろし、続いて俺が頭上に石畳を持ちながら下へ降りようとしたその時、不知火が突然こちらを向いた。そしてそのまま俺の方へ走ってきた。
ちっ、バレたか……
レイリスへ、その場を離れるようにジェスチャーで促し、出来る限り音を出さずに石畳を降ろして、そのまま梯子を飛び降りた。
「【ちょっと、いきなりどうしたのよ!?】」
「【レイリス今すぐ脱出だ。多分バレた】」
「【えっ?なんでいきなりバレたのよ!?おかしいでしょ!?】」
「【多分、勇者の能力だ。走りながらあの
「【分かったわ】」
レイリスに
通信用魔道具と思念伝達用の魔道具を取り出し、同時起動する。
「【アルゴ、メガロ、スパーダ、周りに人間が居ないことを確認次第、返事をしろ】」
「【俺は大丈夫だぜ。ファニスとシエスちゃんも一緒だぜ】」
「【メガロです。僕の方も大丈夫です】」
「【こちらスパーダ。オレも問題無しだ。何かあったのかリーダー?】」
「【勇者に侵入者の存在がバレた。お前らは拠点にある私物を回収し、合流した後、アルゴに渡してあるあの
「【了解だぜ、ユキも脱出するのか?】」
「【レイリスに渡してあるやつを使うから問題無い】」
「【了解しました。リーダーもお気を付けて!】」
「【分かった】」
通信を切ったところで、レイリスが
「【レイリスそいつを貸せ】」
レイリスから
すると、レイリスの足元だけ魔方陣が浮かび上がった。
「【ちょっと!?あたしだけしか魔方陣が浮かび上がらないんだけど!?】」
「【悪い、言って無かったな。この
「【そんな大事な事なんでもっとさk】」
レイリスの足元の魔法陣が一瞬光ると、レイリスの姿は掻き消えた。
これでレイリスは大丈夫だな。後はシエス達の脱出が終わるまで逃げ切るだけだな。
5分程、地下通路内を走っていると、通信用魔道具に反応があった。
「【ユキさん、ファニスです。メガロとスパーダの2人との合流が完了し、家にある私物の回収も終わりました。後は脱出するだけです】」
「【了解だ。俺はもうレイリスと共に脱出している。お前達も急ぎ脱出してくれ】」
「【了解しました!後程、合流しましょう】」
そして通信を切った。
「ズワルト、あいつ等は脱出出来たか?」
「うん、問題無く脱出出来たよ」
何も無い空間にそう呟くと、ズワルトが真後ろに現れ、そう返事をした。
「それで、これからどうするんだい?もちろん遮音と幻惑の結界魔法を使ってるから大丈夫だよ」
「バルバと魔王に連絡後、何処かに身を潜めながら5日後に行われる奇襲作戦への対抗策を決める予定だ。まだ確証が無いから何とも言えんが、恐らく侵入者が魔人族サイドの者とまでは気付かれていないだろうからな」
「ふ~ん、じゃあ連絡ついでに確認しに行くんだ」
「あぁ、その為に俺以外のメンバーを魔王領へ転移させた。この先、万が一が起きても、犠牲になるのは俺1人で十分だ」
「僕としては君が死んでしまうのが一番嫌なんだけどね……まぁ、こんな事言っても君は僕の言う事を聴いてくれないだろうけど……」
俺は俺のやりたいようにするだけだからな。俺に利があるなら話は別だが、基本ズワルトの意見なんぞ聴かん。
さて、そろそろバルバに連絡するとしよう。
連絡するために隠れる場所は……あそこでいいか。
視界の右端に隠れられそうな窪みを発見したので、そこに身を潜め通信用の魔道具でバルバへ連絡を取る。
「【バルバ聞こえるか?俺だ】」
「【聞こえているぞユキ殿。何かあったのか?】」
「【先程、勇者に侵入者の存在がバレた。だが、一応ロゼ王国側の魔王領侵攻作戦の内容の情報を奪取出来た】」
「【な、成程……レイリス様やシエス殿達はまだ一緒なのか?】」
「【いや、レイリス達はお前に頼んでおいた、
「【という事は、貴殿はまだ
「【勇者の能力があったとは言え、ロゼ王国の連中に侵入者の存在がバレてしまったのは俺のミスだ。だからこそ、俺がそのミスの責任を取らなくてはいけない。取り敢えず、バルバは魔王とレイリスを呼んできてくれ。作戦会議をしたい】」
「【魔王様は解るが、何故レイリス様も?】」
「【レイリスは俺と一緒に侵攻作戦の概要を聞いていたからな。レイリスの意見も参考にしてくれ。俺はその間に、勇者達の様子を見に行く】」
「【わ、分かった。くれぐれも無茶しないでくれ……頼むから…】」
「【善処しよう】」
バルバとの通信を切るとズワルトが声を掛けてきた。
「やぁ、通信は終わったみたいだね」
「あぁ…バルバ達の準備が終わるまでに、勇者達が本当に俺達に気付いたかどうか確かめに行く。付いて来たいなら付いて来い」
「もちろん付いて行くよ。悠貴のやる事は全て見ておきたいからね」
俺はズワルトを連れ、再び城の中へ潜入するために地下通路を再び進み始めた。
◇
一方、悠貴から連絡を受けたバルバは魔王ベルゼの元へ赴いていた。
「魔王様、ユキ殿から連絡がありました」
「もしや、ロゼ王国の軍事に関してか?」
「はい。本日より5日後、我が魔王領に侵攻作戦を行うようです」
「ほう……それはまた急な話であるな。まぁ良い。急ぎ作戦会議の準備をしよう。他に誰か呼ぶか?」
「レイリス様を呼ぶようにとユキ殿は言ってましたよ。なんでも、先程ユキ殿以外
「ゑ?という事は現在ロゼ王国に居るのはユキだけなのか!?」
「恐らくそうでしょう…」
「……至急レイリスを呼んで作戦会議を始めるぞ!!バルバよ、レイリスを今すぐ連れてくるのだ!」
「はっ!了解致しました!」
バルバはレイリスがいるであろう、悠貴のバベルにある拠点へ
「必ず生きて帰って来てくださいユキ。貴方はもう、私達の家族なのですから……」
魔王ベルゼはそう小さく呟いた。
ーーーーー
お待たせしました、41話です。
2話で1万字いくかと思ったら、そんな事は無かったですね(笑)
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