第39話 悠貴一行の愉快なひと狩り
首都ロゼに到着して3日。俺達は今までと同じく、冒険者稼業と情報収集を行っている。
今は朝飯を食いつつ、今日の予定を話している。
「今日は俺達も冒険者稼業をするぞ。情報収集は休みだ」
「おぉ!今日はオメガ達も一緒にか!」
「久々にリーダーの戦いが見れるんだな!」
「楽しみだね!」
お前ら、俺の戦闘なんぞ見ても、何も得るものなんぞ無いと思うのだが…
「とりあえず冒険者ギルドに行くぞお前等」
「これはオメガさん。本日は、オメガさん達も一緒なんですね」
冒険者ギルドには10分程で着いた。中へ入り、受付へと足を運ぶ際、テレスのところが丁度空いていた為、テレスの元へ行った。
「ちょっとした息抜きにな。で、良さげな依頼はあるか?」
「そうですね、オメガさん達ならこれなんかどうでしょう?」
「見せてくれ」
テレスが用意してくれた羊皮紙を確認する。
トレントとオークの討伐、各10体ずつ。それに耐麻痺草を20個…報酬は金貨10枚に銀貨5枚。しかも、状態が良ければ更に報酬を上乗せ。
たしかに、今の俺達に合っている依頼かもな。依頼内容は簡単であるし、報酬も良いからこれにするか…
「ミレスとジーク、この依頼を受けようと思うが、お前等はどうだ?」
「どれどれ………あたしはこれで構わないわよ」
「俺も問題無いと思うぜ。トレントとオークなら俺達全員倒せるしな」
「ならこれにするか。テレス、この依頼を受けたいと思う」
「はい、分かりました。では、お帰りをお待ちしてますね」
テレスの元を離れ、全員を連れて冒険者ギルドを後にし、拠点である家へと移動した。
「さて、依頼内容を改めて確認する」
全員をリビングにある2つのソファへ座らせ、真ん中に置いてあるローテーブルに羊皮紙を置いて、今回の依頼の確認と作戦会議を始める。
「今回の依頼はトレントとオークを10体ずつ討伐、耐麻痺草を20個納品するという内容だ。報酬は金貨10枚に銀貨5枚。状態が良ければ更に報酬が増額されるというものだ」
「へぇ~、依頼内容にしちゃ報酬が良いじゃねぇか」
「それは私も同感です」
「オーク10体だけだと良くて金貨2枚だからね」
「ねぇ、トレントって強いの?」
「いや、戦闘能力自体はそんなに高くないんだぜ、ルネ」
「そうなんだ」
トレント……よく異世界モノのゲームやアニメ、小説なんかでよく出てくる木の魔物だ。
弱点は木であるため、勿論火に弱い。但し、火の魔法を使ってしまうと、炭になってしまう且つ、周りの木々に燃え移ってしまい大変な事になる。その為、風や水の魔法もしくは、剣等で根本部分をスパッと切断するのが主流だそうだ。
「で、耐麻痺草はコイツだ」
「最後にオークだが…オークについては言わなくても良いな?」
「特に問題無いぜリーダー」
「言葉を話すオークは倒さないんだよね?」
「あぁ、そうだ」
言葉を話すオークを殺さないのには理由がある。
何故殺さないのかと言うと、言葉を話せる程知能があるなら、味方にして今後の為の戦力にすべきだと考えたからだ。
この話は魔王とバルバに既に伝えている。2人共、俺の意見に賛成だった。
「以上で依頼内容の確認を終わる。何か意見のある奴はいるか?」
俺がそう訊くが、手を挙げる奴はいなかった。
「じゃ、行くか」
「「「おー!!」」」
「ルネ、ジーク、グラウは索敵。残りは3人を守れ」
「了解だぜ」
「分かりました」
現在、俺達はトレントが多く目撃されている森へと来ており、シエス、アルゴ、メガロの3人を索敵に集中させ、見つけ次第トレントを狩る作戦を開始した。
耐麻痺草については、森への道中で依頼の3倍程摘み取っておいた。依頼報酬を多く貰う為でもあるが、自分達用にも少しばかり必要だったからな。
「オメガ、早速見つけたぜ。確かに、この辺りにはトレントが結構いるみたいだな」
「ほう…それは幸先が良いな」
「ん、わたしも見つけた。あの木がトレント」
「んじゃ、とっとと狩ろうぜ。『
「よっしゃ、いっちょ上がり!」
「さて、一応念のために確認しとくか」
「ちょっ、オメガさん!一人で前に出ないで下さいよー!」
スパーダが切り倒した木の元へ歩き、確認する。
「………当たりだな」
「ですね」
トレントとただの木の違いはシンプルだ。木目があるかどうか、ただそれだけだ。
今切ったのは木目が無かった。つまり、トレントで間違いない。
「コイツはトレントで間違いなかったぞお前等」
「やっぱりな」
「この調子でどんどん狩っちゃいましょ」
「おー!」
それから俺達はトレントを見つけ次第、次々に狩っていった。途中、スパーダが複数のトレントに絡みつかれるというアクシデントがあったが、特に問題無かったな。
「ふぅ~、ちょっとばかしヤバかったな。ハッハッハ!」
「あの状況はちょっとどころじゃないでしょ、ホントに………」
「しっかし、男の触手プレイなんて需要無いだろ」
「それには同意」
「触手プレイって何?」
「…お前にはどうでもいい言葉だ。忘れろ」
「ん、分かった」
「コラ!ジークにグラウ!ルネに変な言葉を教えないでよね!!」
「「す、すみません!!」」
「さて、トレントも依頼分は確保した。次に行くぞと言いたいところだが、一旦休憩を挟むとする」
「そうね。久々に動き回ったから、少し疲れちゃった」
「じゃ、俺とグラウで辺りの索敵をしてくるぜ。飯の準備よろしくなオメガ」
「あぁ、任せた」
アルゴと
「ルネ、アレの準備だ」
「了解」
5分程で、準備を済ませると、丁度アルゴとメガロが戻ってきた。
「この辺りは大丈夫そうだぜ」
「索敵ご苦労。ほら飯だ、食え」
「ははー!ありがたき幸せ!」
「下らん事言ってないでさっさと食え」
「ほーい」
「今日のお昼ご飯はおにぎりなんだね」
「今日は狩りだからな。お手軽に食える且つ、腹持ちの良いのを選んだ結果だ」
「そうなんだ」
「このコメってやつはこんなに旨かったんだな!建国祭の時、シュテンのオーガ達がこいつを使った料理ばっかり出しているのを見てきたが…食ってみるべきだったな」
ほう…やはりアイツ等は米料理を色々編み出しているのか。これは帰ったらエルドラ達のところに行って、教えてもらわないとな。
「オッキー、帰ったらシュテンに行くの?」
「よく判ったな」
「これでも奥さんだからね。この程度なら簡単に判っちゃうよ」
「私も解っちゃいました。というか、オメガさんとよく一緒に居る人なら判ると思いますよ。オメガさんって、食事と魔法の研究に関しては妥協しないですもんね」
「あぁ~、たしかにそれは言えてるわね~」
「ん。わたしも同意」
そうか?俺はそんなつもりは無いんだがな…
おにぎりを食いながら、3人娘の雑談を聞いていると、アルゴとメガロと一緒に休んでいたスパーダが俺のとこへ来た。
「リーダー。次はオークだが、どの方向に進んで行くんだ?」
「少し待て」
熱源感知による索敵を開始する。魔王領に行くまでは半径100メートルほどまでしか出来なかったが、アルフによる指導で半径1キロまで拡大出来た。但し、その分消費魔力も多くなった為、普段は索敵範囲を絞って使っている。
まぁ、今回はシエスやアルゴもいるから索敵範囲を最大にしてやるけどな。
で、2分程索敵してみたが………ここから北東の方に多くいるようだ。
「ここから北東に向かう。飯食って、少し休憩したら出発するぞ。ジークとグラウにもそう伝えておいてくれ」
「了解だリーダー」
飯休憩を終えた後、俺達は北東へ進んだ。
「この辺り、そこそこ居るね」
「一番近いのは?」
「あっち」
再び森の中を進んでいる俺達。シエスがオークらしき反応を見つけたため、シエスが指差した方向へ進む。
そのまま5分程進むと、オークが4匹何処かに移動しているのを見つけた。
「オメガ、どういう作戦で行くんだ?」
「色々確認するために真正面から行く。ルネとミレスは待機。シーラも2人の護衛として待機。残りは俺に付いて来い」
「「「了解」」」
「えぇ~、あたし達はお留守番なの?」
「そうですよ。それとも、私達がオークなんかに負けるなんて思っていないですよね?」
「思っていないから安心しろ。で、なんでお前等を待機させるのかだが、今回は戦力集めも兼ねているからな。交渉するのにあんまり大人数で行くのもどうかと思うだろ?」
「なら納得です」
納得した様子の3人をその場に置き、俺達、男連中はオークの目の前に飛び出した。
突然現れた俺達に酷く驚いたようで、その場に突っ立ったまま動かない。
いきなり襲い掛かってこないなら先に要件を済ますとするか…
「おいオーク共。言葉話せるか?若しくは俺が言っていること理解できるか?」
俺がそう訊くと、オーク共のリーダーっぽいヤツが「スコシ、ワカル」と言ってきた。
「ほう……なら2つ訊きたい事がある、良いか?」
「イイゾ…ニンゲン」
「お前達に家族というものはあるか?それと、人間に襲われにくい場所があるが…興味はあるか?」
「オレタチ、カゾクイル。ニンゲンニ…オソワレニクイバショ…ホントウカ?」
「本当だ。魔王領にハイオークとホブゴブリンの村がある。そこに移住すると良い。魔王軍に知り合いがいるから、そいつに頼んでお前達を
「………スコシマテ」
そう言ったオークは仲間と5分程話し合った。
話し合いが終わると俺に向かって…
「オマエノハナシ、ウケイレル。ツイテキテクレ」
「了解だ。後3人仲間がいるが、そいつらも一緒でも良いか?」
「イイゾ」
レイリス達をこちらへ呼び、オーク達の後を付いて行った。
オーク達の後を付いて行くこと約20分程か?オーク達が住んでいる村の様な場所に着いた。
森の中の開けた場所に、竪穴住居っぽい建物が6つあるだけだ。
「ココガ、オレタチノムラダ」
「ここか…」
「へぇ~、オークの村って、こんな感じなんだな」
「ブイの村とかなり違うわね」
「ブイの村の連中はシュテンのオーガ達と同じく、バベルによく行き来してるらしいからですよお嬢」
「そ…そうなのね…」
レイリス達が雑談しているのを聞きつつ、俺は通信用の魔道具を取り出し、バルバへ連絡を取る。
『オメガ殿か?こちらバルバ。何かあったか?』
「もしかしたら戦力になるかもしれないオークを6匹、その家族合わせて35匹をブイの村に住まわせたいのだが良いか?本人達からは許可を貰っている」
『了解した。ブイの村へ移動させるのは我が行おう。何時頃そちらへ行けばいい?』
「少し待て」
一旦通信を切り、リーダー格のオークに何時頃移動させていいか尋ねた。
するとオークは「イマカラデモ、カマワナイ」と答えた。
この返答の後、再びバルバへ連絡し、今からで構わないと伝えた。シエスとアルゴに索敵させ、周囲に何も反応が無いことを確認後、バルバを呼び寄せた。
「貴殿等がオメガ殿の言っていたオーク達であるな?」
「ソウダ。トコロデ、オメガトハ、コノオトコノコトカ?」
「そうだ。では早速貴殿等を送るとする。暫し待て」
バルバは地面に魔法陣を書き始め、魔法陣が完成すると、詠唱を開始した。詠唱が終わると、魔法陣が赤く光り始めた。
「お待たせした。今から貴殿等を送る。我に付いて来てくれ」
「ワカッタ。オメガ」
「どうした?」
「アリガトウ」
「俺の都合でやっただけだ。礼なんか要らないぞ」
「…ソウカ」
子供や女のオーク達を見送ると魔法陣から光が収まった。と、同時に通信用の魔道具に魔力が帯びるのを感じた。
「こちらオメガ、バルバか?」
『その通りだ。オーク達の移動は完了した。ブイの村長であるアウル殿も快く移住を許可してくれたぞ』
「そうか…手間を掛けさせて悪かったな」
『問題無いぞ。元々このような話は魔王城で我と魔王様に話していたではないか』
「そう言えばそうだったな。これからも戦力になりそうな奴はそちらに送ることがあるだろうから、その時はまた連絡する」
『了解だ』
それから約4時間程経過した。何匹か話せるオークと会ったが、下品な顔をしながらレイリス達を見て、襲い掛かってきたヤツであったり、俺の提案を拒否するやつだけだった。提案を拒否したやつらはそのまま放っておいたが、襲い掛かってきたやつはレイリス達が瞬殺していた。
「そろそろ帰るぞお前等」
「う~ん!!!終わったーー!!」
「今回はただ狩るだけじゃなかったから意外と疲れたぜ」
「そうだねー」
「お兄、帰ろ?」
オークも必要数狩り終わり、帰る準備を始める。と言っても、荷物はほぼ無いため、すぐに終わった。
シエスとレイリスが俺の手を取りロゼの方向へ俺を引っ張って行った。
「やれやれ、ホントにルネとお嬢はオメガが好きだな」
「私も混ぜて下さいよ~!!」
「さて、僕等は彼等の護衛の開始だね」
「つっても、リーダー達なら余程の事が無い限り負け無さそうだけどな」
「ハハハ、確かにそうだな。実際俺らの中じゃ一番強いからな」
そして俺達はロゼへと帰った。
ーーーーーーーーーー
大変お待たせ致しました。投稿主のユキモンでございます。
この度は更新に2ケ月も掛かってしまい申し訳ございません。
こんなにも遅れた理由は単にモチベーションの低下です。まぁ、仕事が忙しかったというのもありますが…
多分次回はそれなりに早く投稿出来るよう努めますので、これからもよろしくお願いします。
で、話は変わりますが、来年から公開される予定のデート・ア・ライブ4期、超楽しみです。
追記
失礼、デート4期が延期しているの忘れていました。
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