第38話 ロゼ王国再び 後編

『グレイ』に到着してから20日程経った。

 悠貴達一行は様々な街を経由して、漸くロゼ王国の首都である『ロゼ』へと辿り着き、グレイへ入った時と同じ様に、門にいる警備兵に通行料を支払い、堂々と中へ入った。



「漸くロゼに着いたぜ…」

「色々な街で情報収集してたから仕方ない」

「リーダー、ロゼここでも情報収集するのか?」

「もちろんやるに決まっている。ただ、集める情報は今までと違うけどな」

「へぇ~、何の情報を集めるんだ?」

ロゼここでは主に強者についての情報を集めてもらう。冒険者でも兵士でも何でもいい。とにかく人間側の強いヤツについての情報を集めろ。どんな些細な事でもいいからな。それと、ガルラ帝国の事についても引き続き情報を集めろ」

「「「了解」」」


 本当なら、もっとロゼ王国やダリル王国についての情報を集めたかったが、少しばかり時間が無い。ガルラ帝国の動向を何も掴めていないこの状況では、後手に回るのを避ける必要があるからな…


「あたし達はどうするの?」

「お前等は基本俺の行動に付き合え。特にミレス、お前は絶対に1人で行動することは許さん。もしもお前に何かあったら魔王アイツに合わせる顔が無いからな」

「それブーメランですよオメガさん…」


 因みにミレスってのはレイリスの偽名だ。万が一の事を考えてレイリスにも名前を変えてもらった。恐らく問題無いだろうと思っているが…

 あと、メガロとスパーダも偽名を使わせている。メガロはグラウ、スパーダはレオとなった。


 何故、急遽レイリス達の名前を変えることになったかと言うと、シュリが勇者である不知火嘉音と近々会うという情報が入ったからだ。順調に零条達に取り入っているのは良いことだが、懸念していることが一点。それは、もしもシュリが不知火嘉音と会って、惚れた場合、俺らを裏切る可能性がある。この一点だな。


 俺には全く理解できないが、小説やアニメとかだと恋が原因でこれまで親しかった人間達が仲違いするとか、味方だったヤツがいきなり敵に寝返るとかなんとかがあるからな。現実でもあるかどうかは判らんが、不知火嘉音ヤツの能力は主人公。ご都合主義が起こるものであるならば、用心するべきだ。


「で、オメガ。今日の予定は?」

「今日の予定はロゼここでの拠点探しだ。時間が余れば買い出しをする」

「宿を取るんじゃないの?」

「今までは数日滞在するだけだったが、ここでやる事は多いからな。先ずは、出来る限り目立たない隠れ家のような拠点を探す為に、冒険者ギルドに行くぞ」

「了解です!」





 約20分後、俺達は冒険者ギルドに着いた。首都にあるだけあって、かなりでかい。


「流石首都にある冒険者ギルド、めっちゃでかいな」

「こりゃ、色んなヤツが居そうだな」

「さっさと中へ入るぞ」


 中へ入ると、ルータの町の時みたく、一斉にこちらを見てくるのかと思ったがそんなことは無かった。

 取り合えず、受付に行き、色々訊いてみるとしよう。


「冒険者ギルドへようこそ!ってあら?もしかして初めましての方々かしら?私はこのギルドで受付をしているテレスです」

「俺はオメガだ。今日この都市まちに着いたところだ」


「そうなのですね。で、本日はどんなご用件でしょうか?」

「暫くロゼに滞在する予定なんだが、良い物件は無いか?借家でも問題無い」

「なるほど。オメガさん達は大所帯ですもんね。物件に何か条件はありますか?」

「そうだな…少し中心街から外れた場所にある、だな」

「かしこまりました。準備をしてきますので、少々お待ちください」

「了解だ」


 5分程受付の近くで待っていると、羊皮紙を5枚程持ったテレスが戻って来た。


「お待たせしました。では、行きましょう」

「あぁ…」



「先ずはこの物件ですね」

「この家か」


 冒険者ギルドを出発して約20分程。受付嬢テレスの案内で、二階建ての大きな木造の家を訪れた悠貴一行。早速中へ入り、見て回る。


「おっ!中々いいんじゃねぇか?」

「ボクもそう思う」

「寝室も大きいし、あたしも良いと思うわ」

「お嬢の観点はそこなのですか…」

「あったりまえでしょ!」


「台所も中々使い勝手が良さそうだな」

「ん、お兄の料理がもっと美味しくなりそう」

「それは楽しみですね!」



 一通り家の中を見て回った悠貴は、テレスに家の価格を訊く。


「えっとですね…この家はっと…白金貨15枚ですね」


 白金貨15枚。物件の価格を聞いた悠貴は考え込む。

 1分程考えると、こう答えた。


「テレス、次の物件に案内してくれ」

「分かりました。付いて来てくださいね」




 それから、5件程物件を見て回ったが、最初の物件と比べて良い家は無かった。


「オメガさん、どうします?」

「最初に行った物件にさせてもらう。今すぐに買いたいが問題無いか?」

「はい、特に問題ありません」


 財布から白金貨15枚を取り出し、テレスの前に置く。


「………はい。白金貨15枚丁度頂きました。これで契約成立ですね。明日、契約書をお渡ししますので、取りに来て下さい。後、家は今日から使っていただいて大丈夫ですよ」

「了解だ」

「他にはありますか?」

ロゼここに来る道中で、様々な魔物を討伐したから買い取って欲しい。ジーク、シーラ」

「「はっ!」」


 アルゴジークファニスシーラを呼び、異空間収納ボックスを唱えさせ(詠唱込みで)、異空間からオークやゴブリン等、ロゼに行くまでの道中で狩った、魔物の牙や角といった部位を取り出す。


「…と、これで全部だ」

「ありがとうございます。では鑑定させていただくので、少々お待ちください」

「あぁ…」


 テレスが素材を鑑定し始めたため少し、その場を離れるか…

 アルゴとファニスを伴って、シエスルネ達のところへ戻る。。


「鑑定待ちか?」

「そのようだぜ」

「お兄、今日の晩御飯は何にするの?」

「そうだな……お前等、何かリクエストはあるか?」

「リクエストか!なら俺は…」

「僕はてんどん?ってやつがいいです」

「ちょ、グラウ被せんなs」

「はいはーい!私は、かれーがいいでーす!」

「お前もか!?」

「俺はリーダーの作る飯なら何でもいいぜ、美味いからな」

「ん、わたしも同じく」

「あたしはそうねぇ…いつものアレがいいなぁ」


 見事にバラバラになったな。で、アルゴのリクエストは訊かなくていいだろ。どうせ、俺の作った料理なら何でも喜んで食うだろうし。


「オメガさーん。素材の鑑定が終わりましたよー」

「今行く」


「お待たせしました。これら全部で大金貨2枚と金貨3枚に銀貨が20枚ですね」

「ありがとう。明日また来る」

「はい、お待ちしていますね」


 テレスから金を貰い、冒険者ギルドを後にした。

 外へ出る間際に、他の冒険者から不快そうな感じで見られたが、今は気にする必要は無いだろう。

 まぁ、何か起きたらその時考えるとしよう。


「お兄、結局今日の晩御飯は何にするの?」

「リクエストのやつ全部だ。ここ最近は節約の為に干し肉とか簡単なものばっか食ってもらってたからな。だから今日くらいは奮発して好きなもん食わせてやる」

「「おぉ!!」」

「やった!」

「流石だぜオメガ!けど、まだ俺リクエスト言ってn」

「オメガさん!お買い物ならお付き合いしますよ!!」

「って、また俺の台詞遮ってんじゃねーよ!?」

「ハハハハハ!やっぱリーダー達はおもしれえな」

「だね。一緒に居て退屈しないや」


 そうして俺達は、食材は買いながら家へと戻った。


 家へ着いた後は、晩飯の準備をメガロに手伝ってもらいつつ進めていき、途中で現れた邪神ズワルトと雑談しながら過ごしていった。




 時は過ぎ、皆が寝静まった真夜中にて………

 とある一軒家の玄関にて、蒼色の長髪で、脇差のように小刀を腰に差し、全身真っ黒の服で身を包んだ男が、今まさに何処かへ出発しようとしていた。


「やぁ、悠貴。やっぱり1人で行くんだね」

「この仕事はアイツ等には危険だからな。それと、ここではオメガと呼べと言っているだろうズワルト」

「ゴメンゴメン、ついつい悠貴って呼びたくなっちゃうんだよ。でも安心して。今の僕の声はオメガにしか聞こえないようになっているから」

「ならいい………で、今夜も見送りか?」

「まぁね。君が無事帰ってこられるように…ね」

「おい、いらんフラグを建てようとするな。だがまぁ、俺は死ぬつもりは無いから安心しとけ」

「そのが怖いんだけどね………」

「そんじゃ、行ってくる」


 そう言って、蒼髪の男、矢神悠貴は家から出て行った。


「まっ、万が一君が死んでも生き返らせてあげるよ。楽しみが減るのは嫌だからね…」


 邪神ズワルトは、一言そう呟くと、その場から消え去った。


------


大変お待たせ致しました。

申し訳ございません。仕事が忙しすぎてモチベーションが全く上がらなかったためです。

カクヨムで本作を読んでいただいている方には関係無いのですが、少しばかりお知らせがございますので、近況ノートを一読していただければと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る