第37話 ロゼ王国再び 前編
バベルを出発して約2週間程、俺達はロゼ王国の最西にある街、『グレイ』に着いた。
今回は金があるから、通行料を払い堂々と街の中へ入った。もちろん、変装はしている。
「やっと着いたな!」
「思ったより時間がかかりましたね」
「慎重に歩いて来たからな、仕方ないだろ…」
「万が一の事が起きればあの方々に申し訳が立たないからな…」
「ねぇオッキー、この街では何するの?」
「情報収集と資金集めだ。滞在期間は5日だけどな」
「ここを拠点にしないの?」
「拠点は首都ロゼにする」
「なんでなの?」
「それはだな…」
リスクを考えると、魔王領に近いこの街の方が良いかもしれないが、効率を考えると首都ロゼの方が良い。特に軍や王宮の状況、名高い冒険者情報を集める為にはな。それに、今回は邪神のサポートがあるからちょっとやそっとじゃ身バレをする事も無いだろ。
「…という訳で、2つにチームを分けるぞ。情報収集のチームは俺、シーラ、ルネ、レイリスの4人だ。資金集めのチームはジーク、メガロ、スパーダだ。意義のある奴はいるか?」
「俺達は特に無いぜ。なぁ、メガロにスパーダ?」
「「もちろんだ」」
「私達も無いですよオメガさん」
「了解」
今更だが、俺、シエス、ファニス、そしてアルゴは容姿もそうだが、名前も変えている。レイリス、メガロ、スパーダに関しては、相手側に何も知られていないため名前はそのままだ。オメガが俺、ルネがシエス、シーラがファニスで、ジークがアルゴだ。
「で、リーダー。資金集めをするのはいいが、どうやって集めるんだ?」
「冒険者ギルドがこの街にもあるはずだから、冒険者稼業で稼いでもらう」
「冒険者か………それは中々面白そうだ」
「途中でズワルトも参加するだろうから、相手は頼んだぞ」
「あ、あぁ……」
「オッキー、情報集めはどんな情報を集めるの?」
「そっちは主にダリル王国とロゼ王国の歴史や現在の地理、ガルラ帝国の軍についての情報。後は大精霊の居場所についてだな」
「大精霊の居場所?何故そのようなものの情報を集める必要があるのだ?」
「俺達の役に立つ物があるかもしれないからだ。特に戦いで役に立つ物があるなら是非とも入手しておきたい。来る日に備えてな」
「なるほど、そういう考えでか…了解したリーダー殿」
「他に質問のあるやつはいるか?」
俺が尋ねるとアルゴが手を上げた。
「ダリル王国の歴史と地理、ガルラ帝国の軍についての情報を集めるのはなんでだ?今回の目的は
「それはただ単に、今後の為に少しでも多く情報を集めておきたいからだ。情報は武器だからな。いくらあっても困らない」
「なるほどだぜ」
他に質問のある奴はいないようだ。さて、今晩から泊まる宿探しといこうか。
道中、1晩銀貨5枚で借りられる宿を見つけ、4人部屋を2つ借りた。
その宿の店主に冒険者ギルドの場所を訊き、アルゴ達をその場所へ行かせた。残った俺達は、図書館を探し出し、ロゼ王国とダリル王国に関する書物を片っ端から読んでいった。
そして現在。俺達は前もって作っておいた晩飯を食い終わった後、それぞれ報告を行っていた。
「………俺からの報告は以上だ。アルゴ、お前達の方はどうだった?」
「今日の成果は金貨5枚と銀貨20枚だ。冒険者になったばかりだからと言われて、危険性の低い依頼しかやらせてくれなかったからな」
「討伐の依頼は大半がゴブリンかオークでした」
「後は採取系の依頼をこなしていったぞ。ただ、オレ達3人共薬草とかの知識があまり無かったから、探すのに苦労したけどな」
「だったら、3人の内の誰か俺のチームに来るか?その場合、シーラがお前らのチームに入るが…」
俺がそう言った瞬間、俺達のいる空間だけ温度が下がったように感じた。
「(どどどどどうするメガロ!?)」
「(こここここは、僕達全員参謀殿に付いて行く案で、どどどうだ?)」
「(そ、それでいこう。ってかユキ!ファニスの機嫌が悪くなっているのに気付けバッキャロー!!)」
そして、アルゴとメガロが挙動不審な様子で小声で会話しつつ、俺に何かを訴えるように俺を見てくる。
どうしたお前ら?
「特に反対がなければ交代する奴を決めるがいいか?」
「ちょっと待ってくれユじゃなかった、オメガ」
「明日は僕達全員リーダー殿に付いて行き、色々と学ぼうと思うのだが良いだろうか?」
「どうした?別にシーラがオレ達のとこに入っても問題なムゥ!?」
「変な事言うんじゃねぇよスパーダ!」
「ムグゥ!?」
アルゴが必死にスパーダの口を塞いでいる。塞ぐのはいいが、長い事塞いでいると窒息するから気を付けとけよ。
で、メガロがさっき言った提案だが…中々良い案だな。今回の作戦の間は冒険者として色々してもらうわけだから、多くの知識があった方が効率良く依頼をこなせていけるだろう。
「お前達が良いなら俺から特に反対しない。レイリス、お前はどうだ?」
「あたしも問題無いわよ。今後のためにもしっかりと勉強してもらわなくちゃね」
「ありがとうございますリーダー殿、レイリスお嬢様」
「私も賛成です!というかヒドイじゃないですかオメガさん!私だけ除け者にしようとしてー」
「悪かったな。だが、メンバーを入れ替えるとしたらお前しかいなかったんだよ。レイリスは問答無用で駄目だし、ルネは基本俺の言う事しか聴かないからな」
「それはそうですけど………というかルネってオメガさんの言う事しか聴かないんですか?」
「1人で何かさせる場合はな。俺と一緒なら基本誰からでも言う事は聴くが」
「わたしはオメガと一心同体だから」
「という事らしい」
「な、なるほど……」
ちらっとアルゴの方へ視線を向けると青い顔をしたスパーダが映った。
「おいジーク、手」
「あっ!?悪いスパーダ!!」
「ゲホッ!ゲホッ!俺を殺す気かジーク!!」
「いやいや、そんなつもりはこれっぽっちもなかったって」
「っち!まぁいい。で、明日は俺達全員リーダーに付いて行くって事でいいのか?」
「明日は全員で情報収集だ」
「了解だ。んじゃ、俺は一足先に休ませてもらうぜ」
「あぁ、ゆっくり休んでくれ」
「なら僕達も休むか」
「だな」
スパーダが部屋へと戻ると、それに続くようにアルゴとメガロも部屋へ戻っていった。
「俺達はどうする?俺は部屋に戻るが」
「もうちょっと雑談しときたいわ」
「私もお喋りしたいでーす」
「わたしは部屋に戻る」
「分かった。あんまり遅くまで雑談するなよ」
「はーい」
レイリスとファニスと残し、部屋へ戻った俺はシエスに膝枕をしつつ通信用魔道具でシュリと通信を開始する。
「シュリ、俺だ。聞こえるか?」
「【もちろん聞こえるっすよ。どうしました?】」
「現在の居場所と零条の様子について報告してくれ」
「【了解っす。現在あっし達がいるのはドルガっす。それであの人間の様子ですが、特にこれといった変化等は無いですね。ここから馬車に乗って行くので、首都ロゼに着くのはおよそ4日ってところっすね】」
「そうか。勇者達の情報は無いか?」
「【まだ何1つ無いっす】」
「了解だ。引き続き監視を頼む」
「【お任せあれっす】」
シュリとの通信を切った後、バルバと魔王に日報を報告した。
「約4日で首都ロゼに着くか…」
つまり、俺達が
それとここからどの経路でロゼまで行くかだが……出来る限り大きい街を通るルートにするか。資金を集めるのもそうだが、一番重要な情報収集を効率良く進めるには大きい街へ行かざるを得ないしな。
但し、不知火嘉音達が居た場合は即座にその場を離れ、違う街へ移動する。ドルガにいた際、俺とシエスの正体が何故かバレたからな。万が一の事を考えるとロゼに着くまでは出来る限り奴等を避けていくべきであろう。
「ただいまー」
これからの事を考えているとレイリスとファニスが戻ってきた。
「もう雑談はいいのか?」
「えぇ、もういいわ」
「なら、明日に備えてもう寝ろお前等」
「「はーい」」
さて、俺ももう寝るとしよう。
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