第29話 建国祭
悠貴によるロゼ王国潜入作戦の会議から28日が経った。
レイリスが悠貴とシエスを建国祭に参加させようと、朝から騒いでいた。
「ユッキー!建国祭行こうよ!!」
「建国祭に行くメリットが無い。家で修行しておく方がいい」
「んもう!ユッキーってば相変わらず損得勘定で決めるんだから……シエスは行く?」
「ユキが行くなら行く。行かないなら行かない」
「うん……判ってたわ…」
悠貴がレイリスを適当にあしらいながら瞑想をしていると、玄関からノックをする音がした。
「はーい、今出るわ! バルバ達じゃない、どうしたの?」
「おはようございますレイリス様」
「今日はユキさん達を建国祭に誘いに来たんですけど…」
「その様子だと、やっぱりユキは行きたくないって言ってるんだな」
「そうなのよ~、建国祭に行くより修行しときたいんですって!」
「ハハハハ、ユキ殿らしいですな」
「バルバ、ユッキーを説得してくれないかしら?あたしじゃ無理そうだからね~」
「我にお任せあれ」
膝の上にシエスを乗せながら瞑想をしている悠貴へ、バルバが声を掛ける。
「ユキ殿、シエス殿おはようだ」
「ん、おはようバルバ」
「やはりバルバか…」
「ユキ殿、本当に建国祭へ行かぬのか?」
「レイリスにも言ったが、行くメリットが無いからな」
「ふむ、メリットであるか……(ユキ殿の興味がありそうな事と言えば…アレであるな)ユキ殿、今回の建国祭では珍しい食材を使った料理を出す出店が多数あるという情報があるのだが……」
「珍しい食材だと?」
「そうだ(やはり、この手の話題に興味があるようだな)」
バルバの一言に反応した悠貴は暫し考え込む。
「バルバ、今言った事は本当だろうな?」
「あぁ、本当だとも」
「なら行く」
「じゃあわたしも」
「ナイスです隊長!!」
「よっしゃ!こいつは楽しくなりそうだぜ!」
「説得ありがとバルバ」
「有難きお言葉」
「もう、今はプライベートなんだからそんな畏まらないの!」
「す、すみません…」
「おい、お前ら早く行くぞ」
「待ってよユッキー!」
「お、置いていかないで下さ~い!」
バルバ達が話している間に準備を済ませた悠貴はレイリス達を置いて、建国祭へ繰り出した。
◇
「色んなお店があるね」
「そうだな」
「ユッキー、次はあそこに行こうよ!」
「分かったから落ち着け…」
建国祭、一体どんなものかと思っていたが、俺の元居た世界の祭りにそっくりだな。
で、バルバの言ってた珍しい食材を使っている出店は何処だ?
「バルバ、例の出店は何処だ?」
「その件なのだが、我も聞いただけであって、何処にあるかは知らぬのだ。すまぬ……」
「謝るな。知らないのなら仕方ない。地道に探していくか…」
「でしたら私と一緒に行きましょうユキさん!建国祭は何度も参加してますので、何処にどんな出店があるかある程度把握してますから!」
「分かった、案内を頼む」
「はい!私にお任せ下さい!」
ファニスが満面の笑みを浮かべながら俺の手を取り、そのまま引っ張る。
いきなり引っ張るな、こけるだろうが…
「あっ、ユキ待って」
「ちょっ!抜け駆けさせないわよ!」
「隊長…俺達、どうしましょうか……」
「どうしましょうと言われてもだな……(正直今のファニスを邪魔したら何されるか分からないから、ユキ殿に丸投げしておきたいのだがな…)」
「とりあえず、ユキのために目的の出店を探しておきましょうか」
「そうであるな…」
ファニスに引っ張られて数分後。俺達は中央区、トルーガ組合の近くへ移動した。
「この辺りですね」
「色んなお店がいっぱいあるね」
視界に入る出店の物を探っていると、気になる料理を出している出店を見つけた。
遠く離れているため判りづらいが…もしや丼物か?
「ユキ、何処行くの?」
「あの出店だ。少し気になる料理を出してるようだからな」
「どんな料理?……むむむ、たしかに気になるわね…」
「行ってみましょう」
「いらっしゃい!って……ユキ様にレイリス様!?」
「げっ!?」
出店に寄ってみると、そこに居たのはシュテンで出会ったオーガだった。
「あの…私達もいるのですが……」
「これは大変失礼致しました!ファニス様、シエス様!それはそうと、もしやユキ様達…ここの料理を食べに来て下さったのですか?」
「あぁ、その通りだ」
「………………イヤッホウウウウウウウ!!!!お前達、最高のデスタを作るぞおおお!!」
「「「イエッサーー!!!!」」」
「金は払わなくてもいいのか?」
「お支払いしていただく必要はございません!!完成次第お持ちしますので、お近くの席にお座りください」
「ありがとね」
「………あ、有難きお言葉!!」
言われた通り、近くの席へ移動し待つとしよう。
「ま、まさかシュテンのオーガ達にまた会うなんて……」
「そういえば、前に行った見回りでシュテンに立ち寄った際、トラウマになってますもんね」
「アルフお爺ちゃんもトラウマになったとか言ってたね」
「そういや、バルバとアルゴは何処行った?」
「さぁ……まぁ、あの2人がいなくても支障は無いですし、このまま回りましょうよユキさん」
「………それもそうだな」
話ながら待ち続けること数分後、オーガが人数分のデスタを運んできた。
「お待たせ致しました!デスタでございます!」
「ほう…これがデスタ……(まさかこんなところで見つけるとはな)」
デスタは簡単に言えば天丼だ。ただし、乗ってる天ぷらっぽいやつは見たこともないがな。
とりあえず、米を見つけたのはかなりデカい。後であいつ等に訊かないとな…
シュテンのオーガだから確実に教えてくれるだろう。もしかしたら物自体くれるかもしれんがな。
「うわ~!美味しそうですね!」
「これはどんな料理なの?」
「これはですね、シュテンの近くで採れる山菜を揚げたものをクルと呼ばれる穀物の上に乗せ、タレをかけた料理でございます」
「そうなんだ」
「では、ごゆるりとご賞味下さい」
「では食うとしよう」
「そういえばユッキーってこの料理の事知ってたの?」
「どうしてそう思った?」
「う~ん……なんとなく?」
「前に居た世界で、同じような料理があったからな」
「ほえ~」
「ユキさんユキさん、前居た世界の事もっと教えて下さいよ」
「あぁ、いいぞ」
全員食い終わったため食器を返す。
「ごちそうさん、美味かったぞ」
「そう言っていただきありがとうございます!!」
「後で、クルについて訊きたいのだが、時間はあるか?」
「は、はい!問題無いであります!!」
「すまんな、そんじゃ後で」
「い、いってらっしゃいませ!」
「はぁ~、美味しかったわね」
「はい!」
「でも、ユキの料理の方がもっと美味しい」
「それには同意せざるを得ないわね」
「次は何処へ行く?」
「そうですね~」
「次は北区へ行かないかユキ殿」
次行く場所を相談していると、バルバとアルゴが
しかし、北区か…あそこは魔王軍の屯所があるくらいじゃなかったか?
「何故北区なんだ?」
「先程ヴァイから連絡があったのだが、今から1時間後に魔王領の強者による武闘大会が開催されるそうだ。折角だからユキ殿、参加してみないか?」
「俺と隊長も参加するぜ」
武闘大会か……現在の実力を見るのに丁度良さそうだな。
「分かった、いいぞ」
「では私達は応援に回りますね」
「頑張ってねユッキー!」
「怪我しないでねユキ」
「あぁ……」
この武闘大会で、ちょっとした事件が起きるのをこの時の俺は知らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます