第28話 作戦会議後編
「それでは先ず、真実の情報をどうするかについて話し合うとする。意見のある奴はいるか?」
そう俺が訊くと、ラグエルとヴァイ、ルーチ以外の全員が手を挙げた。
「魔王から順に左回りで答えてくれ」
「分かった。我輩は我輩とユキの情報をくれてやるのが良いと思うぞ」
「ま、魔王様!?そ、それは………」
「バルバよ、何か問題でもあるのか?」
「さ、流石に魔王様の情報を与えてしまうのはどうかと……」
「そうであるか?」
「バルバの言う通りですよ魔王様」
「俺っちもバルバと同意見だぜ。というか、ここに居る全員魔王様の情報を与えることに反対だと思いますぜ魔王様」
「むぅ……そうか。ユキはどう思う?」
「そうだな……」
俺も魔王の意見と同じだ。理由は敵の大将の情報ってのは、相手からしたら喉から手が出る程欲しいものだ。それに加え、重要な情報が真であれば、他の情報も真と受け取ってくれる可能性がある。そうなれば、より一層作戦を進めやすくなるからな。
「俺は賛成だ」
「て、てめぇ!!」
「き、貴様!!」
「アンタってやつは!!」
「待て皆の者!ユキ殿、何故そう思うのだ?」
バルバを除く隊長達が俺の一言に激昂しかけたが、バルバがそれを制し、理由を尋ねてきた。
やはりバルバは他の隊長とは格が違うようだな。
「簡単な話だ。敵にとって重要性の高い情報を餌として与える方が、作戦の成功率が上がる可能性が高くなるからな」
「な、なるほど……」
「我輩もそう思ったから、我輩とユキの情報を与えるべきだと言ったのだ」
魔王がドヤ顔をしながらそう言った。こんなことでドヤらないでいただきたいのだが……
「で、次はデモンだな」
「う~ん、今の理由を聞いたら魔王様の意見が最も良い意見じゃと思ってしまうのだがのう……」
「アタシもデモンと同じ意見よ」
「私も同じく」
「当方もである」
こいつら、話し合いの意味を解っているのか?1つでも多くの意見を出し合って、それらを基に一番良い答えを導き出すことが話し合いというものなのだが……
「バルバはどうだ?」
「我は、我等グリオス隊の情報を与えるのが良いと考えている。ユキ殿が先程答えてくれた理由を聞いて、魔王様の意見は理に適っていると思ったが、やはりリスクを避けるべきだと思ったのでな。魔王様は当然であるが、ユキ殿も我等魔人族にとって重要な人物であるからな」
「なるほどな」
俺はバルバが思っている程重要性は無いと思うのだが…
まぁいい。これ以上他に意見は出ないだろうし、まとめにでも入るか。
「ユキ殿の意見はどうなのだ?」
「俺は、魔王の意見と同じだ。だがまぁ、付け加えるならグリオスについての情報も少し与えてやるのも悪くはないと思っている」
「それじゃあ、決を採るぞ」
決を採る案は3つ。
1つ目は魔王が出した、魔王と俺の情報。
2つ目はバルバが出した、グリオスの情報。
3つ目は俺が出した、魔王のやつにプラスαの情報。
結果は1つ目、魔王が出した、魔王と俺の情報が真の情報となった。
「ここから先の情報の作成は俺とバルバ、魔王とで進めていく。ある程度まとまったら連絡する」
「あら、アタシ達は情報作成に不必要ってことかしら?」
「正直に言えばそうだな」
「オレサマはそういうの苦手だから別にいいぜ」
「俺っちも同じくだぜ」
「仕方ないのである」
「参謀よ、次の議題はなんだ?」
「次はロゼ王国に潜入するメンバー決めだ。まぁ、俺を含め、ある程度のメンバーは決まっているけどな」
「要するに参謀と一緒に行くメンバーを決めるってことであろう?」
「そういうことだな」
潜入するのが確定しているのは俺とシエスだな。レイリスも一緒に行きたいと駄々をこねるだろうが、万が一があった場合魔王に顔向け出来なくなってしまうからな。シエスは、どんなに離そうとしても付いてくるだろうから最初から連れて行くことにしている。
「それで魔王、前に頼んでおいた育成の方はどうなっているんだ?」
「それなら問題ない。リースとバルバ、デモンの下でかなり鍛えたからな。戦闘能力やスパイにおける技術等、申し分ない程度には育ったぞ」
「そうね、一応及第点ってところまではいけたわ」
「じゃが、後1、2ヵ月あるからどうにか育てきれそうではあるがのう」
「我としてはまだまだであると思うのだがな」
「相変わらずバルバは厳しいわね」
「そこがバルバの良い部分であろう」
「メンバーは現在育成中の奴らと、参謀になるのか?」
「あれだったら、オレサマが護衛として付いて行ってやってもいいぜ」
ルーチの申し出は断るが、護衛か………念の為に連れて行く方が良いかもな。
「悪いがその申し出は断らせてもらう。護衛ならある程度信頼出来るやつの方が良いからな」
「なんだよ、オレサマじゃ信用ならないってのか?」
「当方達はバルバと比べて、参謀殿と交流をしていないから仕方ないことであろう」
「そう言われたら納得するしかねぇな」
「であれば、アルゴとファニスを連れて行くのはどうか?」
「いいのか?」
「勿論だとも。(特にファニスは脅してでも護衛の座を手に入れようとする可能性があるからな…)」
これで、メンバー決めも終了か。正直、議題とする必要は無かったのだがな。
それから数時間、作戦に必要な事について話し合った。
とりあえず、今回はここまでにするとしようか…
「今回の会議はこれにて終わりとする」
「では残りの時間は報告会にするとしようではないか。誰か報告のある者はいるか?」
魔王がそう訊くと、ベルフとデモンが手を挙げた。
「ベルフ、先に言ってよいぞ」
「では私から報告させてもらう。数日前、ガルラ帝国を偵察している部隊から、見たこともない乗り物が帝国に搬入されているとの報告が入った。何でも、馬を使わずに動いていたとのことだ」
「ふ~ん、馬を使わずに動いていたねぇ…」
「その乗り物、是非とも調査してみたい」
馬を使わずに動く乗り物……恐らく地球から来た異世界の人間がもたらした物だろう。
「次はワシじゃな。つい昨日、魔王軍の兵数が10万を突破した。この調子で増えれば、来る日には2、30万辺りまでいくじゃろう」
「それも魔王様の人徳のおかげであるな」
「フハハハハ!そうであろう!デモン、全員を鍛えるのは大変であろうが、任せるぞ」
「はっ!ワシにお任せあれ」
「他に、報告のある者はいないな。ではこれにて解散する!バルバとユキ以外は持ち場に戻るがよい」
「そんじゃ、また後日会おうぜ」
「また会いましょう」
ルーチ達が出て行ったことを確認後、魔王に俺とバルバを理由を尋ねた。
「で、魔王。俺とバルバを残したのはなんでだ?」
「それはだな、レイリスとユキの結婚の儀について話しておこうと思ったのでな」
「ということは、いつ執り行うか決まったのですね?」
「うむ。執り行うのは31日後。バベルで行われる建国祭の最終日である」
「建国祭?」
「ユキ殿は初めてであったな。建国祭は文字通り、魔王領建国を祝う祭りだ。祭りは3日間行われ、魔王領の至る所から領民が集まる盛大な祭りになる」
「簡単に言えば、3日間どんちゃん騒ぎし続けるだけの祭りである」
「その最終日に結婚の儀をやって大いに祭りを盛り上げようとする算段か」
「その通りである!」
ということはシュテンの連中も来るわけか……
アルフがまたげんなりしそうだな。
「してラグエルよ、今回の会議はどうだった?」
「有意義な時間を過ごせたと思います父上。特に兄貴の容赦なく敵を潰していこうとする姿勢がカッコよかったです」
「そうであるか」
「魔王、これ以上話すことは無いか?」
「うむ、もう無いぞ」
「そんじゃ、俺も退室する。しばらく書斎に籠らせてもらうから何かあった場合、書斎に来てくれ」
「分かった」
「相変わらず知識欲が深い奴であるな」
「そうですね魔王様」
◇
書斎へ移動し、目的の本を手に取った悠貴は、読みながら1人呟いていた。
「今回の作戦、少しばかり急ぐ必要がありそうだな……」
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