第27話 作戦会議前編
今日は朝早くから魔王城へ来ている。理由は今度行う作戦会議の為だ。
シエスとレイリスは居ない。まぁ、参加する必要性が全く無いからな。ファニスも家に居たから、とりあえず今後の為に交流を深めておけと言っておいたが、どうなることやらな…
魔王城内で俺に与えられている部屋で待っていると、バルバが俺を呼びに来た。
「ユキ殿おはようだ」
「おはようバルバ。他の奴らはもう集まっているのか?」
「魔王様以外は集まっているぞ」
「そうか… で、集まるメンバーは誰だ?」
「我等グリオスの隊長達と魔王様、後はラグエル様だな」
「ラグエルも参加するのか」
「魔王様のご意向でな。魔王を目指す為の勉強として参加させるとのことだ」
「勉強と言っても、今回の会議に勉強できる要素ってあるのか?」
「そこは魔王様に訊いてみないと判らないな… さて、そろそろ我等も行こうぞ」
「そうだな」
バルバに付いて行くこと約5分程、俺達は目的の部屋に着いた。
中へ入ると、アルファベットのCの様な形をした大きな円卓が1個、椅子が10個(1つだけ背が高い)並べてあり、それぞれの椅子にバルバ以外のグリオスの隊長達が座っているのが目に入った。
「ようバルバ、遅かったな」
「ルーチか。ユキ殿の案内をしていたからな、少し遅れた」
「と言っても、集合時間には間に合っているけどな」
「それに魔王様がまだ来てないのよね」
「魔王様の事だから時間ピッタリに来られるのではないか?」
「その可能性は高いな」
「なら魔王様が来るまでの間、時間つぶしも兼ねて、改めて俺っち達の自己紹介でもしとくか?」
「そうだな。バルバ以外はあの時会った後1、2回程しか会っていないもんな」
そういやそうだったな。正直バルバだけと親交があれば十分だから必要ないと思うが、まぁいいか。
憶えておいて損はないか……
「オレサマからやるぜ。オレサマはルーチ・スパラビア。グリオス、ホーネス隊隊長だ!ヨロシクな!」
「ワシはデモン・アイラ。グリオス、アンガー隊隊長じゃ」
「次はアタシね。アタシはリース・ルクリラ。グリオスのラス隊隊長よ。良かったら今夜アタシの部屋に来ない?色々と教えてあげるわよ」
「私はベルフ・エイスディア。グリオス、ライジ隊隊長だ」
「俺っちがグリオスの隊長達の中で一番強いヴァイ・インヴィアだぜ!所属隊はジェラだぜ」
「最後は当方か。当方はフォール・ラルバと申す。所属はゲヘナ隊である。」
「ユキ殿、一応我もしておいた方がいいか?」
「お前はやらなくてもいいぞバルバ」
「そうか」
「おいヴァイ、グリオスの隊長の中で一番強いのが自分ってどういう事だ?オレサマだろ」
「いいや、俺っちだ!」
「何言ってるのよアナタ達…一番強いのはバルバじゃない」
「そうじゃぞルーチにヴァイ。ついこの間行われた腕試しで、お前さんらバルバに負けてたじゃろうが…」
「う、うっせーぞ!あの時は調子が悪かっただけだ!」
「そ、そうだぜ!」
「見苦しい…」
「ベルフに同意である」
ルーチ達の言い争いを眺めていると、突如部屋の扉が開いた。
「え?何この状況…」
「こ、これは魔王様!お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ございません!お前達!早く席に着け!」
「お、おう…」
「わ、分かったわ」
「す、すんません魔王様」
「あ、あぁ……」
「魔王様はあの椅子で、ラグエル様は右隣にお座り下さい」
「了解だ」
バルバがいち早く行動し、場を収めた。流石だな…
「バルバ、俺はどの椅子に座ればいいんだ?」
「そうだな、ユキ殿は我の隣の椅子に座ってくれ」
「分かった」
全員が席に着き、落ち着くのを待った後、会議が始まった。
「ではこれより、参謀ユキが提案した作戦の会議を始める!皆の者、件の作戦内容はあらかた頭に入っているな?」
「もちろんですとも魔王様」
「アタシも問題無いわ」
「「問題ない」」
「オレサマもだぜ」
「す、すんません俺っちは少し…」
「…よかろう。ユキ、改めて作戦内容を説明してくれ」
「分かった」
零条美紗だったか?あの女を使って、ロゼ王国と
作戦は簡単に説明すると偽の情報をロゼ王国に流し、それに釣られたロゼ王国の連中と勇者達をボコるといった内容だ。
方法は、零条美紗をロゼ王国へのスパイとして潜り込ませ、こちら側の情報を流しつつ、ロゼ王国内の軍事情報、勇者達の行動をこちらへ流してもらうというのが表向きの方法。これはスパイである零条美紗にも話すものだ。本当の方法は、俺と数人の魔人族がロゼ王国内に入り込み、スパイ活動を行う。まぁ、俺は司令官ポジションなため、指示を出す兼報告を聴くために行くだけだがな。
で、零条美紗をスパイとして使うのが表向きなのかというと、今回の作戦は零条美紗を寝替えさせる前提だからだ。
必要な情報が集まった後は、軍を編成しロゼ王国を攻撃する。その際に零条美紗が本物のスパイであったかのように振舞い、ロゼ王国の連中とクラスメイト共を騙しておく。これが成功すれば、物理的にも、精神的にも傷を負わすことが出来る為、どうにか成功させたいところだ。
「……といったところだ。何か質問はあるか?」
そう、俺が問うと、リースとバルバが手を挙げた。
「もし失敗した場合はどうなるのかしら」
「失敗した場合は、一緒にロゼ王国に入る魔人族を逃がした後、自爆魔法でロゼ王国諸共吹き飛ばす」
自爆の魔法は、万が一に備えズワルトから教えてもらっていたのだ。シエスとレイリス、アルフに知られた場合面倒な事になりかねんがな…
「なっ!?」
「てめぇ!何考えてんだ!」
「それは許容できぬ話であるな」
「そうであるぞユキ!お前はもう我輩達の同胞であり、我輩の家族でもあるのだぞ!そんな事は決してさせぬ!」
「ユキ殿、我も魔王様と同意見だ!」
なんでこいつらは、俺が死ぬことにこんなにも反対しているんだ?たかが、人間1人ロゼ王国を道づれに死ぬだけだろうに……
とりあえず、話が進まないから最終手段として使うとでも言っておくか。
「言葉足らずだったな。さっき言ったのは最終手段として行う。失敗した場合は臨機応変に立ち回るという答えにしておく」
「ユキ殿、その言葉本当であるな」
「本当だ」
俺の言葉に渋々納得したというような面々をする魔王達。本当になんでそんな表情をするのか、全く理解できないな…
「バルバ、お前の質問はなんだ?」
「作戦の期間はどのくらいかかるのだ?」
「期間か………最低2ヶ月程、最大で12ヶ月程。一応3、4ヶ月以内に決着させようとは考えている」
「結構なげぇなあ~」
「仕方ないぞヴァイ。こういった作戦は地道にやるものじゃからな」
「オレサマなら、途中で飽きて突貫してるぜ」
「アンタの性格ならそうでしょうね…」
「他に質問のあるやつはいるか?」
手を挙げるやつはいなかったため、話を続ける。
「ここからは細かい部分の話をしていく。先ず、偽のスパイである勇者一味の女に持たせる、偽の情報だ」
「偽の情報ってことはテキトーに作るのか?」
「アホかお前は………」
「なんだと!?」
「デモンの言う通りであるぞ。きちんとしたモノを作らねば相手側に直ぐに偽の情報とバレてしまう可能性が高いからな」
「な、なるほどだぜ…」
「つまり、偽の情報と判らないようになにかしらの工夫をするんだな?」
「そういう事だ。その工夫とは真実を所々に盛り込み、完全な偽の情報としない事だ」
「たしかに、それならば信憑性も上がり、簡単には見破られる心配はないな」
バルバの言う通り、こういった偽の情報を相手に与える際、真実を所々に混ぜた方が見破られにくくなる。偽の情報だけだった場合、1つでも情報の綻びが見つかると、それだけで全てが台無しになってしまう可能性が有る。
しかし、真実を混ぜている場合は少なくとも一気に全てが台無しになってしまうという事態は避けられる。ただし、矛盾が無いように混ぜ込むのは少しばかり難しい事だけどな。
「そんじゃ、始めるぞ。情報戦争の第一段階をな」
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