第26話 女子会

 ユキと同じ世界から来た人間の男2人を殺してから十日程経った。

 今日は朝からユキがいない。魔王とバルバ達の会議に出席しないといけなくて、夜遅くまで帰らないって言ってた。



「むぅ………ユキがいないとつまらない……」

「気持ち解るわ~」

「ほらほらレイリス様、シエス、そんなつまらないオーラ出さないで、色々とお喋りしましょうよ。ユキさんも偶には女同士での交流をしておけと言ってたじゃないですか」

「それもそうね。というか、ファニスは会議に参加してなくて良かったの?」

「今回の会議は件の作戦に関することで、隊長格の人達と魔王様だけの重要な会議ですからね。レイリス様こそ今回の会議に参加しなくて良かったのですか?」

「いいのいいの、面倒な事は全部ラグエルに押し付けるから」

「ラグエル様……頑張って下さい」




 同時刻、魔王城にて

 悠貴を中心に悠貴が立てた策の計画の会議をしていた。


「クシュン!」

「どうしたラグエル、風邪でも引いたか?」

「い、いえ風邪ではないと思います父上」

「アレじゃないっすか、誰かがラグエル様の事を噂してるんっすよ」

「ラグエル様イケメンだからね」

「お前達、今は大事な会議中であるぞ!私語は慎め!」

「少しくらいいいだろ。ったく、お前はいつも堅すぎるんだよ」

「なんだと!?」

「ヴァイ、フォール。喧嘩をするなら後にしろ」

「分かったよ」

「すまない」

「…会議を続けるぞ」



「で、折角女子だけ集まってることだし、女子会とやらをやってみましょ」

「女子会!良いですね!でもお菓子はどうするんですか?」

「ふっふっふ、その事は心配要らないわ。こんな事もあろうかと、ユッキーがケーキとクッキーを作っておいてくれたのよ」

「おぉ、流石ユキさん!でもケーキとクッキーの組み合わせって少しヤバくありません? 私は訓練で身体を動かすので心配要らないですが」

「あ、あたしだってユッキー達との特訓で身体を動かすから平気よ!」

「ホントですか~レイリス様?」


 レイリスに挑発するかの如く訊くファニス。それにしてもなんでレイリスとファニスは容姿の事を気にするんだろ?


「レイリス、ファニス。なんで容姿を気にするの?」

「あぁ……シエスはユキ以外興味無いから容姿に無頓着なのね…」

「シエス、それはもちろん好きな人には好印象を持たれたいからですよ」


 なるほど、それは少し納得。


「って、ファニス。今聞き捨てられない言葉を言わなかった!?」

「それはもしや“好きな人”ですか?」

「そう、それよ!」

「ファニス、好きな人いるの?」

「はい、いますよ」

「それはまさか、ユッキーの事じゃないでしょうね……」

「もちろんユキさんですよレイリス様」

「やっぱり!」

「レイリス知らなかったの?」

「薄々は感じてたけどね。でも、アルゴやバルバは対象に入らなかったの?」

「隊長にはオファニさんがいるじゃないですか。アルゴは……長年同じ部隊に居たせいか異性よりも戦友として見ちゃってるので、異性として好きにはなれないですね」

「でも、アルゴはそう思ってないかもしれないわよ」

「それはそうかもしれませんけど、恐らくアルゴも同じ気持ちかと思いますよ」

「むぅ………」


 そういえば、ユキが作ってくれたケーキとクッキーまだ持ってきてなかった。

 その場から立ち上がり、キッチンに行って、先ずクッキーを探す。


「これかな」


 クッキーは近くに置いてある籠の中にあった。その籠を異空間収納ボックスにしまい、ケーキを探す。

 ケーキはユキが作った冷蔵庫とかいう大きい箱の中に3つ置いてあった。ケーキも異空間収納ボックスにしまって、レイリスとファニスの所へ戻る。



「シエス、何処行ってたの?」

「キッチン。ケーキとクッキー持ってきた」


 異空間収納ボックスからケーキとクッキーが入った籠を取り出す。


「そういえば、話に夢中になり過ぎて完全に忘れてましたね」

「そうね…ありがとシエス」

「問題ない」

「で、何の話をしていたんでしたっけ?」

「ファニスが何でユッキーを好きになったか?って話」

「そうでしたっけ?では、お話しします。私がユキさんを何で好きになったかはですね、理由が2つあります。1つ目は、ユキさんが作ってくれた料理が美味し過ぎたこと。2つ目は身内にとても優しいところです。私は基本戦闘しか出来ない女ですので、家庭的な男性に魅力を感じるのですよ」

「ユッキーが家庭的?」

「ん?」

「あれ?2人してなんですかそのリアクション……」


 たしかに、ユキの料理はとても美味しいし、とっても優しいけど…ユキは別に家庭的じゃないと思う。


「いや、だってユッキーは別に家庭的な男性じゃないと思ったからよ」

「レイリスに同意」

「う~ん、私はそう思うんですけどね………」

「ファニスは少しずれてるからね~」

「え~!レイリス様酷いですよ~ とまぁ、私の話はここまでにして…シエス、貴女に訊きたい事があるんですよ」

「何を訊きたいの?」

「それはシエスとユキさんの馴れ初めですよ!」

「馴れ初め?」

「それ、あたしも改めて訊きたい」


 ユキとの馴れ初め。前、レイリスに話したようにここに来るまでの道中でいいのかな。

 正直何を話せばいいのか分からないけど…


「分かった」


「わたしとユキが出会ったのはロゼ王国の地下牢」

「え?地下牢?どういう事ですかそれ?」

「わたしは約4ヶ月前に国へ両親によって売られた。ユキはこの間殺した人間達によって処刑される事になったから地下牢へ投獄されたの」

「両親によって国へ売られた…もしかしてお金のためとかですか?」

「そう」

「ホントヒドイ話よねそれ!こんなに可愛い女の子を売ってお金にするなんて」

「ですね!」

「でもそのおかげでユキと出会えた」

「そう考えると売ってくれてありがとう、ですね」

「それで、ユキと自己紹介をした後「一緒に来るか?」って誘われたから付いて行くことにしたの。後は城の脱出手段を考えて、一緒に脱出した」


 あの時ユキが誘ってくれなかったら、わたしはあそこでどんな目に遭っていたのだろう…


「うんうん、シエスの判断は大正解だったね」

「そうですね。もしシエスと同じ立場だった場合、私も同じ判断をしますね。多分、残った場合は人間共の奴隷か何かにされるでしょうし」

「多分そうなってたかも」


「城から脱出した後は身を隠しながら旅を始めた。今の生活も気に入ってるけど、旅していた時の生活も良かった」

「いいなぁ…あたしもユッキーと旅してみたい!」

「戦争が終わったら全員で旅に行きましょう!」

「ナイスアイデアだわファニス」


 多分、バルバや魔王、アルゴとかも一緒に来そうな気がする…


「旅の中で1番嬉しかったのは、途中で立ち寄った町で買い物をした後に「これから先、お前を見捨てる気も売り飛ばす気も一切無いから安心しろ」って言われた事」

「うわ~、あたしも言われてみたいわね」

「今度、頼んでみます?」

「頼めば言ってくれると思うけど、もっと良い場面で言われたいからね」

「たしかに、それもそうですね」


 それから、盗賊のアジトを襲った事や、旅の途中でユキが作ってくれた料理、ユキと同じ世界から来た人間に襲われた事など、色々と話した。


 わたしが話した後は、レイリスがラグエルや魔王の失敗談を話したり、ファニスが自身が所属しているグリオスの隊長、バルバ達の恋愛事情を話してくれた。

 正直、今日の女子会?はつまらないだろうと思っていたけど、意外と楽しかったと感じる。


 でも、ユキと一緒にいるのが1番楽しい。だからわたしは、たとえ地獄だろうが付いて行くからねユキ。

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