第24話 魔王領探索 後編
『クレシェ』を発ち、オファニの情報通り『クレシェ』から北へ数キロ進んだ。
「オファニが言ってたのはこの辺りだな」
「でも数日前に見かけたんだよね?」
「そうよね………少し辺りを捜索しましょ」
「ならば、我とアルフ殿、アルゴとファニス、レイリス様とユキ殿とシエス殿の3チームに分かれて捜索しよう」
「了解です隊長」
「儂はバルバとじゃな」
「集合時間と場所はどうするんだ?」
「そうだな……とりあえず1時間後、此処に集合でいいだろう。もし何かを見つけた場合、すぐに連絡してくれ。我達はここから西、アルゴ達は東、ユキ殿達は北方面を頼む」
「了解だ」
バルバとアルフは西へ、アルゴとファニスは東へ捜索を始めた。
「俺達も行くぞシエス、レイリス」
「わたし達は何をすればいい?」
「シエスは熱源感知で探索、レイリスと俺はシエスの護衛」
「分かったわ」
「ん、了解。ユキ、おんぶお願い」
「あぁ………」
「あっ、シエスってばずるい!!」
「先手必勝」
「時間を無駄にするな、さっさと始めるぞ」
「ユッキー待ってよ!」
憤慨しているレイリスを放置し、シエスを背負って出発した。
「シエス、何か引っかかったか?」
「まだ何も見つからない」
「数日前だったもんね、やっぱりいないのかしら………」
「さぁな」
捜索を始めて約30分くらいか?
結構な領域を調べたが何も反応を掴めていない。バルバ達からの連絡もないことを考えると、既に他の場所に移動したと考えて良いかもな。
「ユキそろそろ戻る?」
「いや、あと10分程捜索する。それでも何も反応が無かったら戻るぞ」
「バルバ達からの連絡も未だ無いもんね…」
「そうだな」
「むぅ~…絶対に見つけ出して血祭りに挙げたかったのに…」
「なんでそんなに残念そうなんだ?」
「だって、ユキを殺そうとした人間なんだよ。そんな人間を殺せないんだから残念なのは当たり前よ」
「ふん……」
レイリスと少し話しているとシエスがあっと声を上げた。
「どうしたシエス?」
「………………ユキ、何か見つけた」
「何処だ?」
「ここから北東に大体200メートルくらいのところ」
「了解だ。とりあえずバルバ達へ連絡しないとな」
「ならあたしがアルゴ達に連絡するわ。ユッキーはバルバ達にお願い」
「あぁ………【バルバ、聞こえるか?俺だ】」
通信用の魔道具を取り出してバルバに連絡する。
「【ユキ殿…連絡をしてきたという事は何か見つけたのか?】」
「【あぁ、シエスが何か見つけたらしくてな。今からそこへ向かうところだ。アルゴとファニスにはレイリスが伝えている】」
「【了解だ。場所はユキ殿の魔力を辿ればよいのだな?】」
「【そうしてくれ】」
「【アルフ殿にも伝えておく。後程会うとしようぞ】」
通信を切り、先程シエスから聞いた場所へ移動する。
「ここがさっき言った場所」
「ここか…」
着いた場所はゲームとかでよくある朽ちた遺跡みたいな場所だ。
「この近くにいるのね…」
「シエス正確な位置を教えてくれ」
「ん………反応は下。多分どこかに地下への入り口がある」
「では探そうではないか」
「ん?バルバか」
「待たせたなユキ殿」
「儂もいるぞ」
「ちょっと急に出てこないでよバルバ!」
「これはこれはすみませんレイリス様」
「はぁ…はぁ…俺達も着いたぜ…」
「…お待たせしました」
「お疲れじゃな」
「疲れているところ悪いが先を急ぐぞ。とりあえずコレを飲んどけ」
アルゴとファニスにディアナがいる湖の水が入ったビンを投げ渡す。
「サンキュー」
「ありがとうございますユキさん」
遺跡の地下へ通じる階段を探し出し、中へ入る。
「………この遺跡は特に何も無いか?」
「そう決めつけるのはまだ早計かもしんが、壁画とかも無いからそうかもしれんのう…」
「何かあったらあったで、魔王様に報告しておこう」
「ユキ、この先100メートルほどに誰かいるみたい」
「全員臨戦態勢に入っとけ」
「了解だぜ」
「分かったわ」
そのまま真っ直ぐ進むと、少し広い空間に出た。そして黒髪の人間の男2人が俺達を出迎えた。片方は大きな剣を背中に担いでおり、もう片方は杖を持っている。
「スゲー!ホントに来たな!」
「なんだよ俺の能力疑ってたのかよ…」
「見るのが初めてだったんだからしょうがないだろ」
「まぁいいか。で、やっぱり魔王領に居たんだな…祟り神」
「魔王を討伐のついでにお前もやっつけてやるぜ祟り神!」
祟り神…………やはりクラスメイトの連中だったか…。まぁ、こいつらの名前は忘れたが。
で、俺の同郷の人間と判ったのか、レイリスとシエスが据わった目でこいつらを見てるな…
「にしても、祟り神のくせに美少女エルフを連れ歩いてるとか…ふざけんなよ!」
「そうだそうだ!お前をやっつけて俺達のものにしてやるぜ!」
「小童共にユキは殺させないし、シエスちゃんも渡さぬ」
「大体、お前らの方が数的に不利なのを判ってるのか?」
「はん、そんなの俺達にはチートがあるから問題無いんだぜ」
「チート?なんだそれは?」
「誰が教えるかと言いたいところだけど、特別に教えてやるぜ!耳をかっぽじってよ~く聞いとけよ。俺の能力は…」
こいつら自分の力を過信してるのか、こっちに来るときに貰った能力について語り始めている。
聞いていても時間の無駄だからさっさと戦闘不能にして尋問でもするとしよう。通信用の魔道具を見られないように出して、バルバへ指示を出す。
「【バルバ、俺が今から
「【了解だユキ殿】」
「…ってのが俺の能力だ凄いだろ!」
「次は俺の番だな俺の能力は、少し先の未来をっ!?」
「あっ!ユッキーあたしが殺るつもりだったのに!」
「いや、まだ殺していないんだが…」
「尋問でもするのか?」
「大して重要な情報を持ってい無さそうだが念の為にな。レイリス、尋問した後なら何をしても良いぞ」
「ホントに!?」
「レイリス様、私も付き合いますよ」
「わたしも付き合う。ユキに酷い仕打ちをしたことを後悔させる」
「…………(シエスちゃん達、おっかないのう…)」
「隊長、ファニスってあんなに怖い奴でしたっけ?」
「……ノーコメントだ」
地上へ戻り、クラスメイト2人の持ち物を全て奪い、手足を紐で縛った後、バルバが魔王城の地下牢へ
「ユキさん、あの人間共の尋問は何時行いますか?」
「明日の朝にやる。始める時は連絡するから安心しろ」
「了解です」
「アルゴよ、この後まだ回らなければいけない村はあるのかのう?」
「いや、今回はこれで見回りは終了だぜ。予定ではもう2つ回るつもりだったけど、シュテンで足止めをくらって時間が無いからな。まぁ、7日後にまた見回りをやるから、その時に回るから問題無いぜ」
「なるほどのう」
「なら、この辺りを少し探索した後バベルへ戻るか」
日が暮れるまで近くを探索してみたが、珍しい食べ物も住むのに良さそうな場所も特に見つからなかった。そしてそのまま『バベル』に戻り、アルフは自分の店へ、バルバ達は魔王城へと帰った。
家に帰るとレイリスとシエスがソファへ並んで倒れこんだ。
「ふあぁ~……疲れたわね」
「疲れた………」
「レイリス、シエス風呂に入って疲れを取ってこい」
「分かったわ…シエスも一緒に入ろ?」
「ん。ユキはどうするの?一緒に入る?」
「あたしは大歓迎よ」
「湯舟の広さ的に無理があるだろ。俺は晩飯の準備をしておくからさっさと入ってこい」
「残念…」
シエスとレイリスを風呂へと追いやり、晩飯を作り始める。さて、今晩のメニューはどうしたものか………
◇
ユッキーにお風呂に入るよう促されて、現在入浴中のあたし達。
今の内にシエスに昨日の朝思い付いた作戦の決行を伝えておきましょ。
「シエス、例の作戦今晩やるわよ」
「例の作戦?」
あら?昨日移動中にこっそり教えてたのに忘れちゃったのかしら?
「昨日教えたじゃない。夜中ユッキーに
「…思い出した。後処理の準備は出来てるの?」
「もちろん出来てるわよ(元々、最終手段として考えていたからね)」
「なら、もっと綺麗にしておかないと…レイリス背中洗って」
「いいわよ。後であたしの背中を洗ってよね」
「分かった」
ふふ、これも今まで誘惑してきたのに一度足りともあたし達に手を出してこなかったユッキーが悪いんだからね!
◇
シエスとレイリスが風呂から上がった後は、俺も風呂に入り、晩飯を食べ、後処理をパパっと済ませた後すぐに寝室へと移動した。
晩飯を食っている最中、シエスとレイリスの視線がいつもより向けられていたのが少しばかり謎だったが、特に気にしなくてもいいだろう。
明日、どんな尋問をして情報を引き出してやろうか………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます