第18話 魔王ベルゼ後編
レイリスからの求婚に承諾の返事をしてから約30分くらいか?漸く、魔王や他の連中も落ち着いたようなので話を進めていこう。
「魔王、取引について話を進めていきたいんだがいいか?」
「ワ、ワタシは、娘と貴様の結婚を認めませーん!!」
「そんなことより、取引について話を進めたいんだが……」
「レイリス!何故この人間に求婚したんです!?」
「えっと…………カッコイイし、ユッキーの目がとっても良いからよ」
「目?」
魔王が俺の顔をいや、目を真っ直ぐ見据える。すると、何かに驚いた表情をした。
「こ、これは!?…………レイリス」
「どうしたの?」
「お前とこの人間の結婚を許します」
「ホント!?」
「本当です」
「ヤッター!!」
「父上、さっきまであんなに反対してたのにどうしたんです?」
「ラグエル、
「目を?」
魔王の言葉に促され息子のラグエルも俺の目を見据えた。
「父上、俺、あんな目をした人を見たことがありません。この世の全てに絶望したような、闇のように淀んでいる目を……」
「そうでしょう…全く、こんな人間が存在するとは…」
「ちょっと、お父様!いつまでユッキーの事を無視してるのよ」
「む、無視はしていないですよ!?うおっほん!?人間、取引についてでしたね」
「あぁ、そうだ。……口調戻さなくてもいいのか?」
「ゑ?あっ……フハハハハハ!
「魔王の口調戻った」
「そうだな」
ひと悶着あったが、やっと話を進められるな。
魔王の方へ向き直った時魔王の上の空間が歪んでいるのが目に入った。他の連中も急に現れた歪みにビックリしてるな。なんだあれは…………
「魔王、上を見てみろ」
「上?」
「魔王様!魔王様の上に空間の歪みが発生しております!」
「うおっ!?本当に歪みが発生していた!?」
歪みをそのまま観察していると、そこから背中に黒い羽根が生えているイケメンが現れた。
「やぁ魔王ベルゼ、それに矢神悠貴、久しぶりだね」
誰だコイツは?何故俺の名前を知っている?
「これはこれは邪神様お久しぶりでございます」
「うん久しぶり魔王ベルゼ。子供達や隊長達も」
「「「「はい!お久しぶりでございます邪神様」」」」
「久しぶり邪神様」
「お久しぶりです」
邪神…………神か……
そして俺の名前を知っている…まさかコイツ…
「邪神とやら、まさかお前が俺達をこの世界へ連れて来た神か?」
「おや?この姿を見せていないのに、よく僕があのヒトガタだと気づいたね」
「お前が邪神と知れば、普通に判るだろ」
「(普通は気付かないんだけどね…)それにしても、やっぱり君が1番早くここへ辿り着いたね」
「やっぱり?それはどういうことだ?」
「特に理由は無いから気にしなくていいよ。ってごめんね、君達の話を進めていいよ。僕は空気と化しているから」
「あっはい、邪神様。では改めて、
「メリットは人間達の情報があれば戦争で有利に立てること、戦争による魔人族の被害を抑えられることだな」
「なるほどな。だが、情報を得るだけなら部下をスパイとして潜らせれば出来ないことは無い。だから貴様の取引に応じる必要は無いぞ」
「そう、そこだ魔王。万が一、スパイがバレ、殺されるとなった場合俺達は同族でないため、お前達が傷つくことは無い。それに加え、
「たしかにそうであるな…」
ここで、連れて来たあの道具を使うか…
「魔王、俺が勇者の一味を捕まえてきたのは知っているな?」
「勿論だ。だが、その人間は本当に勇者の一味か?」
「そいつは邪神に判断してもらえ」
「邪神様に?」
「こいつは勇者共をこの世界に連れて来た張本人だからな」
「判断するだけならいいよ~」
「…で、そいつを使って、勇者共とロゼ王国に痛手を負わせられる策があるんだが…取引に応じてくれたら教えてやる」
「………本当だな?」
「あぁ、本当だ」
「しばし待て」
魔王は隊長達を呼び、相談し始めた。てっきり、自身の判断だけで答えを言うのかと思ったが違ったようだな。
バルバが魔王を慕う理由が少し解ったような気がするな…
◇
魔王ベルゼと部下の魔人族達は悠貴に聞こえない程度の声量で話し合っていた。
「先ず、お前達に問う。
頷いたのはバルバを含んだ3人。
「反対の者は何故そう思う?」
「あの人間が信用出来ないからです魔王様」
「ワシも同意見だ」
「同じく」
「俺っちはレイリス様と結婚することになったアイツが気に食わねえだけだぜ」
「おい、これは重要案件だぞ。そんなくだらない私情で判断するな」
「す、すいやせん…………」
「なるほど、信用できないからだな。では、こうするのはどうだ?」
魔王は思いついた事を部下へ話す。
「流石は魔王様です。それでいきましょう」
「フハハハハハ、そうであろう?」
答えが決まり、魔王は集まりを解散した。
◇
「待たせたな
「で、答えは?」
「答えは…保留だ!」
「保留だと?それは何故だ?」
「それはだな、貴様が確実に信用出来ないからだ。だから、この取引は一旦保留にさせてもらった」
「なるほど…どうしたら信用してもらえる?」
「後日、我輩から仕事を与える。その仕事を達成できたら、今回の取引に応じよう」
「分かった。その言葉、忘れないからな」
「フハハハハハ、魔王は一度した約束は絶対に守るから安心せよ!」
「お父様、絶対よ?」
「も、もちろんだとも我が娘よ…」
とりあえず、取引にはほぼ成功したと言っていいだろう。魔王からの仕事がどのようなものか判らないが、シエスがいればどうにかなるだろう。
「では、これにて解散!各自、持ち場へ戻れ!」
解散後、俺は邪神に訊きたいことがあったため、1人玉座の間に残っていた。
「矢神悠貴、僕に訊きたい事があるんだってね。それはなんだい?」
「それは、俺達をこの世界に連れて来た理由だ」
「この世界に連れて来た理由?」
「そうだ。何か理由があるんだろう?」
「そうだねぇ…………君はどんな理由だと思う?」
「何か自分の目的のため…か?」
「なるほど。死にかけているところを救うため、とか言わないあたり流石だね。で、肝心の理由は君の予想で大体合ってるよ」
神というのは大体ロクでなしで、自分の事しか考えてないらしいから、そう思ったが、やはりか…
「大体か…」
「うん、大体。でも、合ってたから教えるね。僕が君達をこの世界に連れて来た理由は」
「戦争経験の無い子供達が戦争をしたら、どんな面白い事が起こるか見たいからだよ」
邪神は笑顔でそう言い切った。
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